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建築家 フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"
半世紀以上にわたり建築の常識に挑戦し続けてきたフランク・ゲーリーの「アイデアの力」に着目。自身も建築家の田根剛によって、一見奇抜な建築が人間のためにつくられていること、ゲーリーのアイデアがいかにして生まれ、形になるのかを、発想の源となるコレクションやプロジェクトのたびにつくられる膨大な模型などで明らかにした。
会期 2015年10月16日(金) - 2016年2月7日(日)
マニフェスト
まずアイデアが浮かぶ。ばかげているけど気に入る。模型をつくって嫌いになるまで見続けて、それから違う模型をつくることで、最初のばかげたアイデアを別の見方でみる。するとまた気に入る。でもその気持ちは続かない。部分的に大嫌いになって、再び違う模型をつくってみると、全然違うけど気に入る。眺めているうちに、すぐに嫌いになる。直しているうちに新しいアイデアが浮かんで、そっちの方が気に入るけど、また嫌いになる。でもまんざらでもない。どうするか? そう、また模型をつくって、次から次へとつくる。模型を保管するだけでも膨大な費用がかかる。でもどんどん続ける。次から次へと進めるうちに、ほら見ろ、最高傑作だ。輝かしく、安上がりで、今までに見たことがないものだ。だから誰も気に入らない。
悔しくて死にたくなる。ところが、神様がメッセンジャーを送り込んで皆に催眠術をかけるので、皆気に入る。そしてアイデアを盗もうとする。模型も盗んで行こうとする。頭脳や魂まで持って行こうとする。でも踏ん張って、絶対にくれてやらない。
やりたいのは、新しいアイデアを生むことだけ。たった一人で新しい模型をつくり続けたい。保管するのに膨大な金がかかるので、こんなことをしていると模型の倉庫代で破産する。これは偉大な歴史。伝説でもあり本当のことなんだ。
この続きがどうなるかと言えば、皆が嫉妬し始める。嫉妬が彼らに努力するよう仕向けるならばいいけれど、大半は台なしにするためにがんばる。そこんとこが厄介。
フランク・ゲーリー
ディレクターズ・メッセージ
昨今、デザイン、建築、アートがこれまでにないほど世間で注目を集め、私たちは、さまざまな情報が瞬時に拡散されるグローバルな時代と環境に生きています。それは20世紀という『技術』によって未来がつくられてきた時代から、『アイデア』によって行き詰まった現実を変え、自分たちで未来をつくりたいという時代または環境への切望なのかも知れません。いま私たちは『アイデア』を求めているのです。
「君たち、オレのマニフェストを知っているか?」
2013年12月、はじめての面会でゲーリー氏は最初にそう切り出しました。「まずアイデアが浮かぶ。ばかげているけど気に入る」と真面目な表情で語る本音のマニフェスト。そこにひとりの建築家が闘ってきた道のりを見たような気がしました。
「建築家 フランク・ゲーリー展 " I Have an Idea "」は『アイデア』の展覧会です。ビルバオ・グッゲンハイム美術館、ウォルト・ディズニー・コンサートホール、ルイ・ヴィトン財団、それらの原点ともいえるゲーリー自邸 ......誰も見たことのない、衝撃的で輝かしくも、人間的で緻密な職人技のあるゲーリー建築はどのように生まれたのか。ゲーリーがどのような人物で、何を語り、どこで着想を得るのか。つくっては壊し、壊してはつくり上げる大量の模型、建設業を熟知して考案されたゲーリー・テクノロジーによる最新の設計手法、そして世界各国で同時に進行し続ける斬新なプロジェクトの数々 ......これらの膨大な創造力とエネルギーはどこから生まれてくるのか。
ゲーリーは一夜の思いつきや、ちっぽけな発想、一瞬の閃きによって建築をつくりません。アイデアをつくっては壊し、叩いては、眺め、時にはいじめ、見放す。誰かに嫉妬され、誘惑され、邪魔されそうになりながらも、最後まで生き残る不屈でタフな『アイデア』をゲーリーは信じているのです。「建物(Building)」をつくる設計業務では要望や機能、予算、工期、法規など様々な与件を満たしていかなくてはなりません。しかし「建築(Architecture)」をつくることは、要望や機能を超えて、もっと自由に、もっと豊かに、ひとに「驚き」や「好奇心」や「夢」を抱かせるような『アイデア』が必要なのです。
『アイデア』はポジティブな意志がなくては生み出せません。
どんなに困難な状況であろうと、現実を直視し、努力と信念、葛藤と重責のなかで『アイデア』を実現するために勇気をもって闘い続ける建築家 フランク・ゲーリーの「アイデアの力」を信じてもらえれば最高です。
田根 剛
開催概要
- 主催
- 21_21 DESIGN SIGHT、公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団
- 後援
- 文化庁、経済産業省、港区教育委員会、カナダ大使館
- 助成
- 在日アメリカ合衆国大使館、一般財団法人安藤忠雄文化財団
- 特別協賛
- 三井不動産株式会社
- 協賛
- 株式会社新建築社、YKK AP株式会社 窓研究所、株式会社ユニオン、Suzanne Blaug、William Erb
- 協力
- Vitra株式会社、キヤノン株式会社、キヤノンマーケティングジャパン株式会社、ゲッティイメージズジャパン株式会社
- 展覧会ディレクター
- 田根 剛(DGT.)
- 特別協力
- Gehry Partners, LLP
- 企画協力
- 瀧口範子
- 会場構成
- DGT.(DORELL.GHOTMEH.TANE / ARCHITECTS)
- 技術監修
- 遠藤 豊(LUFTZUG)
- 展覧会グラフィック
- AXIS
- 照明デザイン
- 海藤春樹
- 学術協力
- 伊藤公文