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田中一光とデザインの前後左右
伝統を継承しながら未来を洞察し、東西の交流から比類のないデザインを生み出したグラフィックデザイナー、田中一光。彼と仕事をともにした小池一子をディレクターに迎え、琳派、浮世絵、伝統芸能などを視覚表現の主題として現代の創作に活かした田中の発想の広がりと表現の着地点をとりあげた。
会期 2012年9月21日(金) - 2013年1月20日(日)
ディレクターズ・メッセージ
田中一光さんが他界されて今年で10年になります。この間、日本の社会は東日本大震災を筆頭に大きな試練の時代を迎えていますが、このような時に「田中さんだったらどのような示唆や発言をされるか」と考えさせられます。
この展覧会は、デザイナーとして社会、文化、生活の望ましい姿を思い描き創作に向かった「田中一光の仕事」を今こそしっかりと見たいという願望から生まれました。田中さんは、自分の存在を時間軸の経線と東西を示唆する横線の接点に位置すると考え、十字路に立つという意味で「デザインのクロスロード」というタイトルの個展を開かれたことがあります。本展の表題"デザインの前後左右"も、デザインするという行為が社会や歴史のさまざまな局面を巻きこむこと、決して机上の作業や自己表出のみにあるのではないということを示唆した著書に基づいています。
田中さんのアーカイブをひもといた者としては、展示したい作品の多さに圧倒されつつ、細やかな仕事とその背景をもできる限り生かして、素のままにそれらを見ていただきたいと思いました。
またデザインの先を常に見ようとしていた田中さんの展覧会は回顧に陥らず、生まれつつある仕事への視線が望まれます。本展には特別参加として新しい作品にも登場をお願いしました。
本展の開催に至るまで大勢の方にお世話になりました。そのすべての方々の中に"田中さんの力"が生きているように感じます。
小池一子
メッセージ
田中一光のデザインの軌跡は、戦後日本のデザインが隆盛に向かう流れと同期しています。戦後の焼け地で人々が簡素な印刷物の中に海外の画像や豊かな色彩を渇望していた頃、田中はデザインの研究会を結成し、ポスターをつくり、情報を集めて積極的に活動を始めました。これからやってくるデザインの時代を期待して、「毎日が驚きと発見で楽しくて仕方がなかった」と語っています。
奈良で生まれ京都に学び、大阪で仕事を始めた田中はたっぷりと日本の美意識を体内に貯め、日本グラフィックデザインの本流になっていきました。
「生活のすべてがデザインなんだよ」と田中の興味はあらゆる境界を越え、広がっていきました。人が集まり、場が生まれ、コトがはじまり、モノができる。
常にひとりのデザイナーであると同時に企業や社会のことを考え、創り出すことだけではなく、「見立てること」の重要性を説き、意志の強さとブレない選択眼で明解な骨格とダイナミズムを定着させてきました。
この展覧会では、時代を経ても新鮮な魅力を持続する田中一光のデザインを、作品と制作過程での思考や思索のプロセスも合わせて展示します。
廣村正彰
開催概要
- 主催
- 21_21 DESIGN SIGHT、公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団
- 後援
- 文化庁、経済産業省、港区、社団法人 日本グラフィックデザイナー協会、東京アートディレクターズクラブ、東京イラストレーターズ・ソサエティ、NPO法人東京タイプディレクターズクラブ
- 助成
- 公益財団法人 花王芸術・科学財団
- 特別協賛
- 三井不動産株式会社
- 協賛
- 株式会社 良品計画、西武・そごう、特種東海製紙株式会社、株式会社モリサワ
- 特別協力
- 財団法人 DNP文化振興財団、大日本印刷株式会社
- 協力
- 株式会社 竹尾、エルコ ライティング株式会社、キヤノンマーケティングジャパン株式会社、株式会社東京スタデオ、凸版印刷株式会社、FRAMED*、株式会社中川ケミカル、マックスレイ株式会社、株式会社ロフト
- 展覧会ディレクター
- 小池一子
- 会場構成・グラフィックデザイン
- 廣村正彰
- 照明デザイン
- 海藤春樹+武石正宣、深沢明、甲斐淳一
- 設計協力
- ナカムラデザイン事務所
- 企画協力
- 太田徹也
- 特別出展
- Semitransparent Design、三宅一生+Reality Lab.