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「U-Tsu-Wa/うつわ ― ルーシー・リィー、ジェニファー・リー、エルンスト・ガンペール」

contents

U-Tsu-Wa/うつわ

シンプルかつ大胆な手法で後の現代陶磁器に大きな影響を与えたルーシー・リィー、静かで抽象的な造形に独自の自然観を投影するジェニファー・リー、倒木や流木からその命を取り出すように制作するエルンスト・ガンペールによるうつわを展示。星座をモチーフにした安藤忠雄の会場構成がうつわの"宇宙"をつくり出した。
会期 2009年2月13日(金)- 5月10日(日)

ディレクターズ・メッセージ

感動のかたち

美しいと感動した経験について話してほしいと言われることがあります。そんな時にまず思い出されるのは、ルーシー・リィーさんの名前としごとです。
今から20数年前に、ロンドンの書店で偶然手にとった陶磁器の本。それを見て心を動かされた私は、さっそくルーシーさんの制作スタジオ兼自宅を訪ねることになりました。彼女の人柄と作品の数々に触れて、その時私は「つくる、とはこういうものだ」と直観して心も身体もリフレッシュし、勇気づけられたことを覚えています。そして、その夢も醒めきらないうちに、日本で「ルゥーシー・リィー展」を企画・実現し(1989年東京と大阪で開催)、大きな反響をよぶことができたのです。
とかく有名作家にのみ注意と関心が偏りがちなこの国で、当時あまり知られていなかったルーシーさんの作品がこれほど話題になるとは、私も正直ちょっと驚きました。それにはもちろんのこと、長方形の巨大水面に全作品を浮かべて人々をアッといわせた安藤忠雄さんの会場構成(草月ギャラリー)、さらに亀倉雄策さんのグラフィックの力、石元泰博さんの見事な写真表現に負うところが大きかったことは、言うまでもありません。
しかし、主役をつとめたルーシーさんの作品の美しいこと、シンプルなこと、気高いこと、自然なこと...。手作業の温かさと懐しさで私たちのハートを包み込んでしまう圧倒的な魅力。口べたな私にはまことに好都合なのですが、ほんものの感動はことばを無力にし、かわりに「触れてみたい欲求」を呼びさまします。とにかく、ものづくりの原点がここにある、と感得させるルーシー・リィーのしごと。東洋でも西洋でもない独自な世界がそこに広がっています。
さて、21_21 DESIGN SIGHTの企画による「U-Tsu-Wa/うつわ」展。ここでは20世紀の伝統の中に未来形の創造の宇宙を発芽させたルーシー・リィーさんを中心に、その水脈を うけ継いで明日の陶磁器づくりに新しい方向性をあたえているジェニファー・リーさん、木から生命を見つけ出すエルンスト・ガンペールさん、という二人の作家を配して、多様なうつわたちの豊潤な造形世界が展開されます。土・石・木、自然素材と向き合い、美しい形を削り出していくしごとは、自身の内面を深く厳しく掘り下げる作業に通じています。そこから、私たちの生活と文化をうるおす清新な創造の伏流水が湧き出してくることでしょう。
うつわの宇宙的な美を、活力漲る写真に昇華させてくれたのは岩崎寬さん。森山明子さんは、つくる人への愛情と敬意に満ち溢れた文章を展覧会関連書籍に書いてくれました。そして会場構成はふたたび安藤忠雄さん、ヴィジュアル・ディレクションは杉浦康平さん、とこれ以上は望めない夢のようなチームが実現しました。ご協力いただいたすべての方に心から感謝しています。

三宅一生

会場構成について

ルーシー・リィー、ジェニファー・リー、エルンスト・ガンペール。三人のアーティストのつくる〈うつわ〉には、生活文化としてのデザインの可能性が、実に豊かに示されている。
とりわけ、ルーシー・リィーの作品は、一つ一つが前世紀の百年を陶芸に賭けて生き抜いた彼女の人生の結晶のようだ。モダニズム造形美の極みともいうべき、優雅に研ぎ澄まされたフォルム。美しさと同時に温かみを感じさせる、微妙でデリケートな陶器の素材感。 あの白に輝く器たちの透明感は一体何なのかと、彼女の作品を目にするたび、不思議な感動を味わう。
展覧会では、彼女らのみずみずしい感性がより直接的に伝わるような空間演出を考えた。展示室内に水盤をつくり、その水の上に作品を浮かべる。流れる水という空白を介して、その静と動の狭間で、美しいうつわと対峙するという展示構成だ。訪れる人が、作品を通じて、それをつくった作家の心を感じられるような、展覧会になればと思う。

安藤忠雄

ビジュアルディレクションについて

──「うつわ」は「空(うつ)輪」とも、「宇宙輪」とも書けますね──。
最初の打ちあわせで一生さんがつぶやいたこの言葉が、今回のヴィジュアルデザインのヒントになった。
器(うつわ)は空(くう)。からっぽなもの。その中に飲みものや食べものを満たすと、 「空」なる器が「実」に変わる。それを飲み・食べると、「空」である人間の体内に「実」なるエネルギーが充ちる。器はそのまろやかな形で、「空」と「実」の対極を、苦もなく巧みに溶けあわせる。
三人三様。土を練り、形をつくり、倒木を削り、ときにひびわれを誘いだす。それぞれに味わい深い差異を見せる三人のうつわ宇宙を、「空」なる紙面のひろがりに招きいれた。ページを繰る指先のリズムとともに、器自身が静かに舞い踊る。
豊かな伝統的技法と現代感覚を結びつけた器たちの多彩な表情を俯瞰し・見上げて、宇宙遊泳に似た動きを誕生させる。岩崎寬さんの感性豊かなカメラアイと、森山明子さんの情感あふれるテキストが、艶やかなうつわ宇宙誕生の支えとなった。

杉浦康平

開催概要

主催
21_21 DESIGN SIGHT、財団法人 三宅一生デザイン文化財団
共催
日本経済新聞社
特別協賛
三井不動産株式会社
後援
ドイツ連邦共和国大使館、ブリティッシュ・カウンシル、渋谷区、港区
協力
ドイツ文化センター、マックスレイ株式会社
展覧会ディレクター
三宅一生
会場構成
安藤忠雄
ヴィジュアル
ディレクション
杉浦康平