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「water」

contents

water

文化人類学者、竹村真一をコンセプト・スーパーバイザーに迎えた「デザインによって水を示す」展覧会。一杯の牛丼をつくるのに2000リットルの水が必要なことや雨水の利用などを可視化、また超撥水性の素材で水と遊べる展示や水の美しい表情をとらえた写真などで、無形の水のさまざまな側面を提示した。
会期 2007年10月5日(金)- 2008年1月14日(日)

ディレクターズ・メッセージ

何故いまデザインで水なのか

21_21 DESIGN SIGHT は、世の中のあらゆる事象をデザインの視点で見る場である。
そのような意味で水はあまりにも日常的なもので、デザインとしてのテーマ設定が可能なのかと思われるほど一見無形で頼りない。しかし、あえてこのどこにでもある水をテーマにしてみると、それはとてつもなく広く深く、頼りないどころか我々生命そのものであるということ。そして自然界を支える構造体ですらあるということが分かってくる。つまり水というテーマを設定するということは、この物質と関わりのないものはこの世にはなく、必然的に「水で世界を見てみる」ということになる。ここで水というものをデザインのメタファー(隠喩)として置き換えてみると、水はまさに人々のコミュニケーションそのものであり、化石燃料に頼った、力でねじ伏せる20世紀的デザインから脱却するための21世紀デザインのヒントが確実にそこにあると思えてくる。そして自然と折り合いを付けながら暮らしてきた日本本来のデザインが浮かび上がってくるのである。
日本は水が豊かな国である。それは今や嘘である。食料自給率4割で海外に依存する水利用の現実を知ってしまうと、もうそのような絵空事は言っていられない。水に耳を傾けて、水に聴く。どうもこれから水が多くのことを教えてくれそうである。

佐藤 卓

メッセージ

何故いま水にデザインなのか

「枯木に花咲くに驚くより、生木に花咲くに驚け」(三浦梅園)
――おそらくデザインとは、このようにありふれた世界を新たな眼で発見する感性の「窓」をひらく営みだ。この世はこんなに驚きに満ちているのに、それに一度も気づかずに生きていくとしたら、それほどもったいないことはない。世界をみる「解像度」を高めていく回路を、学校も社会も提供してくれないなら、デザインという手段でそれをやるしかない。
水という最もありふれた、しかし最も「有難い」物質にあらためて驚いてゆくプラットフォームを用意することで、私たちが忘れている本来のライフスタイル(=生命の スタイル)を再発見してみたい。また私たちが日常的に触れる水――ここに降る雨、蛇口の水、そして食べ物のバーチャルウォーター――の「来し方、行く末」を可視化することで、私たちの感性や想像力をもっとブロードバンド化しうるはずだ。今回の企画はその意味で、館内に閉じた作品展示ではなく、社会の、世界の、そして私たち自身の内なる水のリアルに触れてゆくデザイン実験を数多く盛り込んでいる。水の魔法にようやく気づいた人類が、「水の世紀」を水争いの世紀としてしか生きられないとしたら、これまたもったいない話ではないか。それを水惑星に生きる祝福の世紀とするために、デザインというプラットフォームを供与してゆく試みをここから始めたい。

竹村真一

開催概要

主催
21_21 DESIGN SIGHT、財団法人 三宅一生デザイン文化財団
後援
文化庁、経済産業省、環境省
特別協力
株式会社 佐藤卓デザイン事務所
展覧会ディレクター
佐藤 卓
コンセプト・スーパーバイザー
竹村真一
クリエイティブチーム
天野和俊、アラカワケンスケ、井出祐昭、海藤春樹、takram、藤井 保、佐藤 卓、竹村真一
特別参加
石元泰博、沖 大幹、川崎義博、原 研哉、三浦 望、村瀬 誠、METAPHOR
企画
三宅一生、佐藤卓、深澤直人
企画協力
川上典李子
制作協力
石井一十三(佐藤卓デザイン事務所)、佐藤卓デザイン事務所
グラフィックデザイン監修
佐藤 卓
グラフィックデザイン制作
石井一十三、後藤圭介(佐藤卓デザイン事務所)