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企画展「ユーモアてん。/SENSE OF HUMOR」
開催概要

contents

ディレクター

暮れも正月もない。2019年3月15日から6月30日まで21_21 DESIGN SIGHTで開催される大展覧会「ユーモアてん。/SENSE OF HUMOR」の準備だ。

最初は、五大陸の笑いを探して歩く旅をしようと深圳、香港、ニュージーランド、メキシコと探し回ったが意外とむずかしい。30年はかかってしまうなあと氣が付いた。

今、僕の机の上には2017年秋に三宅一生さんと訪ねた、八ヶ岳の茅野、そこで出会った縄文時代の仮面の女神の等身大の置物がある。三角の仮面をつけた表現だが、毎日見ていても笑える。一万年も前のことを考えると氣が遠くなってしまうが、笑いは現在までずーっと続いている。

時間軸や空間軸を超えて、会場は必ずゴチャゴチャにしたい。こんなモノやあんなモノが交差し交換する。メキシコの旅から帰ってきて、すぐにノーベル賞作家のミゲル・アンヘル・アストゥリアスの『マヤの三つの太陽』(岸本静江訳 新潮社 1979年)を取り寄せた。読んでみると...
あたり一面が骨肉の争いを演じていた。椅子は椅子に突き当たった。ナイフはナイフに、フォークはフォークに、スプーンはスプーンに、ソース入れはソース入れに、皿は皿に、盃は盃に、コップはコップに、ナプキンはナプキンに、爪楊枝は爪楊枝に、灰皿は灰皿に、静止画の果物は天然の果物に、天然の果物は蝋細工の果物に、小ぶりのナイフと小ぶりのフォークをのせた魚料理用の食器一式は魚料理用の大振りの食器一式に、壜は壜に、食卓用水差しは食卓用水差しに、音もなく...それがみんな音もなく、音もなく、音もなく...死にものぐるいの戦いだ......
このシュルレアリスムの文体が最後まで続く。21_21 DESIGN SIGHTの会場はこんな風になるのでは...。と想像した。

晴海埠頭の作品倉庫から漆塗りの世界地図が出てきた。世界は、この国々で回っているのだ。浅葉克己が地球僻地探検家として、今までに地球を歩き回って見てきたモノ、集めてきたモノたちと、身の回りのモノを並べてみることにした。

広告を教えてくれた恩人・土屋耕一さんの回文を書でかいてみる。「ナジャ・アイララ」(※)文明からは金子國義さんの油絵。そして、90歳にしてさらに活力溢れる久里洋二さんの今日に続くチャレンジングなアニメーション作品、見る者を笑顔にする和田 誠さんの似顔絵、たえず笑いを求めて制作活動をしてきた福田繁雄さんの立体作品。海外からの出品作家には、ディーン・プール(ニュージーランド)、トミー・リー(香港)、スタンリー・ウォン(香港)、ジャンピン・ヘ(中国・ドイツ)、ロン・アラッド(イギリス)......と名だたる面々が並ぶ。浅葉克己の作品からは、年賀状10年分、雑誌『卓球王国』から「浅葉克己のひとりピンポン外交」188回分。50年分のブチューン(ワイドラックス)カメラで撮影したモノなど。さらに、井上嗣也さんのオリジナルポスター。娘・浅葉 春の陶芸作品。日比野克彦さんの巨大な作品......など次々と並べていく。
すると、モノとモノが共鳴し合い(あるいは不協和音を奏で)、時間も場所も言葉も意味も超えた不可解だが愉快な、訳のわからぬ「何か」を発し始めた。

人間の笑いは、どこから来るのか。ユーモアの本質とはどこにあるのだろうか。ひとりで笑うこともあるが(孤独な笑い、ブラックユーモアというのか)、人間は誰かと会って、これ面白いよねと同意して笑うこともある。時代や国や文化によって異なるユーモア感覚もあるが、すべてを超えた笑いも存在するのではないだろうか。

あまねく地球上に存在するすべてのユーモアの源泉を集めてみたい。表現は異なるかもしれないが、小さな笑い、大きな笑い、爆笑、失笑、艶笑、冷笑、微笑、苦笑......。ひとつひとつを拾いだし、一堂に見てみたい。

①ユーモアは心を和ませる。②ユーモアは暗い氣持ちをひきたてる。
ユーモアの中身は複雑であるが、このふたつを頭の隅に置いて見てほしい。

ユーモアは、コミュニケーションの本質だ。

浅葉克己

※「ナジャ(Nadja)」(現在閉店)と「アイララ(AiLARA)」は新宿二丁目の伝説のスナック。常連客には赤塚不二夫やタモリ、荒木経惟、唐十郎、金子國義、四谷シモン等、ジャンルを超えた文化人が名を連ねる。ナジャのコースターデザインを宇野亞喜良が、アイララのロゴは浅葉克己が手がけた。

プロフィール

浅葉克己 Katsumi Asaba

1940年横浜生まれ。桑沢デザイン研究所、佐藤敬之輔タイポグラフィ研究所、ライトパブリシティを経て、1975年浅葉克己デザイン室を設立。日本の広告史に残る数多くの名作ポスター、コマーシャルを制作する。1987年東京タイプディレクターズクラブを設立。代表作に、長野オリンピック公式ポスター、サントリー「夢街道」、西武百貨店「おいしい生活」、武田薬品「アリナミンA」、ミサワホーム「ミサワデザインバウハウス」等。中国に伝わる生きている象形文字「トンパ文字」に造詣が深い。2015年には年間で4度の個展を開催。2015年は「浅葉克己デザイン日記」、2016年は「薔薇刑」にて2年続けてADC原弘賞を受賞した。その他、毎日デザイン賞、日本アカデミー賞、ADCグランプリ2回、ADC原弘賞3回、紫綬褒章、旭日小綬章、亀倉雄策賞など受賞多数。東京ADC委員、東京TDC理事長、JAGDA理事、AGI日本代表、東京造形大学・京都精華大学客員教授、青森大学客員教授、桑沢デザイン研究所10代目所長。卓球六段。