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「アスリート展」

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ディレクター

私にとってアスリートでいるということは、行為を行い極めるということでした。行為は自発的なものもありますが、相手選手に合わせたり、風や地面に合わせたりと、環境に対応することもあります。
普段何気なく踏み出している足や、コップを掴む腕、ぼんやりとブラウザを眺めている目の延長にアスリートはいます。ある行為を極めていくことで、感覚が鋭敏になり、知らなかった自分に出会えるようになります。アスリートがいる世界は全く違う世界ではありませんが、少しだけ細かなことに気がつく世界です。
アスリート性は誰にでもありますが、手に入れるのに時間と労力がかかります。「アスリート展」でそれをのぞいてみませんか。

為末 大

為末 大 Dai Tamesue

1978年広島県生まれ。陸上スプリントトラック種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2016年11月現在)。2001年エドモントン世界選手権および2005年ヘルシンキ世界選手権において、男子400メートルハードルで銅メダル。シドニー、アテネ、北京と3度の五輪に出場。現在は、自身が経営する株式会社侍のほか、一般社団法人アスリートソサエティ、株式会社Xiborgなどを通じ、スポーツ、社会、教育、研究に関する活動を幅広く行っている。

「アスリート」というと鍛え上げられた超人的な身体能力に目を奪われてしまいますが、どうやらそれはアスリートの一つの側面でしかないようです。
地面、空気、水、対戦相手やボールの動きなど、刻一刻と変化する「環境」を繊細に感じ取りながら、一方で自らの「身体」をよく知り、コントロールし、その一瞬一瞬の変化に反応していく。大一番の極限状態で最高のパフォーマンスを発揮すべく、自らの、そして時には人間の可能性の限界を押し広げていくアスリートたちが、自らの「身体」とそれを取り巻く「環境」をどう感じ、捉え、適応しているのか、その感覚世界をぜひ体験してみてください。
「身体」と「環境」の関係性やその相互作用に改めて意識を向けることは、「デザイン」という行為の本質にも繋がるはずです。

緒方壽人

緒方壽人 Hisato Ogata

東京大学工学部産業機械工学科卒業。岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)、LEADING EDGE DESIGNを経て、2012年よりTakramに参加。ハードウェア、ソフトウェアを問わず、デザイン、エンジニアリング、アート、サイエンスなど、領域横断的な活動を行う。主な受賞に、2004年グッドデザイン賞、2005年ドイツiFデザイン賞、2012年文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品、2015年グッドデザイン賞特別賞など。21_21 DESIGN SIGHT では企画展「骨展」「"これも自分と認めざるえない"展」「デザインあ展」に参加作家として出展。

「知る」ことで初めて見えてくる世界があります。「できるようになる」ことで初めて見えてくる世界もあります。私たちは、何かを学んだり技術を身につけたりするたびに、少しずつ、これまでよりも高い精度や違った視点で、世界を見ることができるようになっていきます。
それでは、「身体」と「心」をコントロールする技術を限界まで極めていったアスリートには、一体どのような世界が見えているのでしょうか。その世界は、同じように「身体」と「心」を持っている私たちとは何が違うのでしょうか。
この展覧会では、身体や心のコントロールをはじめとした、アスリートを構成している様々な要素を、作品を通じて体験してもらいます。普段見ることができない、アスリートの見ている世界の一端を知ることで、自分の「身体」や「心」について新しい発見をするきっかけになれれば、幸いです。

菅 俊一

菅 俊一 Syunichi Suge

1980年生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。人間の知覚能力に基づく新しい表現を研究・開発し、様々なメディアを用いて社会に提案することを活動の主としている。主な仕事に、 NHK Eテレ「2355/0655」、BRUTUS「行動経済学まんが ヘンテコノミクス」、21_21 DESIGN SIGHT企画展「単位展」コンセプトリサーチ、著書に『差分』(共著・美術出版社)、『まなざし』(ボイジャー)。主な受賞にD&AD Yellow Pencilなど。多摩美術大学統合デザイン学科専任講師。