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建築について
地上1階地下1階の低層建築です。折り曲げられた巨大な鉄板の屋根が地面に向かって傾斜する独創的な造形の建物は、ほとんどのボリュームが地下に埋まっており、中に入ると外観からは思いもよらない空間が広がっています。地上階にはギャラリー3とショップ、地下階に2つのギャラリーと自然光がさしこむサンクンコートを擁しています。設計を手がけたのは建築家 安藤忠雄。三宅一生の服づくりのコンセプト「一枚の布」に着目し、一枚の鉄板を折り曲げたような屋根を考えました。この屋根のほか、日本最長の複層ガラスなど、世界屈指の日本の技術が結集されています。
「一枚の布」から建築をつくる
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安藤忠雄のスケッチ
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建築プロセス
Photo:Masaya Yoshimura/NACASA&PARTNERS, Inc.
21_21 DESIGN SIGHTの敷地は、公共空地に囲まれています。この恵まれた周辺環境を壊すことなく、デザインの美術館としてその存在を主張するためには、どうすればよいかを考えた結果、床面積の8割を地下に埋設することにしました。背後に立ち並ぶヒマラヤ杉に、しっかりと包まれるようにたたずむ建築をつくりたいと考えたのです。
建築の特徴である「一枚の鉄板」は、三宅一生さんの「一枚の布」からイメージを得ています。しかしコンセプトを提示し、画を描くことは簡単ですが、実際にそれをつくりあげるのは大変な困難が予想されました。実際、長さ54mの鉄板屋根の加工には大変高度な技術を要しました。実現を可能としたのは建設に携わった人々の技術力によるものです。現場の方々は設計の要求に充分応えるものをつくろうと、困難に立ち向かってくださいました。日本の建設技術のレベルの高さを改めて痛感することとなりました。
内外のディテールに関しては、現場スタッフの方々と打ち合わせしながらつくりあげていきました。階段、手すり、天井など、いたるところにつくり手の思いと、技術者としての誇りがこめられています。
日本はこれまで、建築、家具、自動車、ファッションなど、さまざまな分野において、世界に通用する数々の優れたデザインを生み出してきました。21_21 DESIGN SIGHTは、経済大国日本のもうひとつの顔であるこのデザイン文化の促進を目的として、三宅一生さんたちの発案で始まった企画です。新たな文化都市として産声を上げる東京ミッドタウンの中で、日常生活を豊かにするデザインの力を手がかりとして、21世紀日本の新たな文化拠点となるべく計画されたものであり、ここを基点としてより一層レベルの高いデザインを発信していくことができればと考えています。もちろんそのために必要なのは、施設ではなくそこに参加する人々です。これからもたくさんの若者がここでデザインに接し、日本の文化レベルの更なる向上に貢献してくれることを期待しています。
安藤忠雄
建築家
安藤忠雄 あんどうただお
大阪生まれ。独学で建築を学び、1969年に安藤忠雄建築研究所を設立。
代表作に「六甲の集合住宅」、「光の教会」、「フォートワース現代美術館」、「地中美術館」、「プンタ・デラ・ドガーナ」、「クラーク美術館」など。著書に「建築を語る」「連戦連敗」ほか。
95年プリツカー賞、13年フランス芸術文化勲章(コマンドゥール)ほか受賞多数。03年より東京大学名誉教授。
施設概要
- 敷地面積
- 2,653.3m2
- 建築面積
- 597.3m2
- 延床面積
- 1,932m2
- 展示室
- 686m2
(ギャラリー1:133m2、ギャラリー2:443m2、ギャラリー3:110m2) - 主体構造
- 鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造、地下1階地上1階
- 設計
- 安藤忠雄建築研究所+日建設計