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企画展 「ルール?展」

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ディレクターチーム

わたしたちの社会はさまざまなルールによって成立しています。その代表的なものが法律ですが、「もしこの世界から法律がなくなったら」と想像してみると、わたしたちの社会にとってルールが不可欠であることは自明です。それにもかかわらず、わたしたちは、なぜこんなにもルールに不自由さを感じるのでしょうか?わたしは、その原因が、わたしたちがルールづくりに参加できていないから、あるいはルールづくりに参加している感覚がないから、だと考えています。

わたしは、一人の法律家として、法を含むルールがわたしたちを自由にするものであってほしいと願っています。わたしたちの社会をより豊かにしていくための「補助線」としてルールを活用できないか。デザインできないか。そのまなざしは必然的に「だれかが作ったルール」から「わたしたちが作るルール」への転換につながっていくはずです。本展示を通して、ルールの堅苦しさではなく、おもしろさ、深さ、そして自由さを感じ取ってもらえたらうれしいです。

水野 祐

水野 祐 Tasuku Mizuno

法律家。弁護士(シティライツ法律事務所)。九州大学グローバルイノベーションセンター(GIC)客員教授。Creative Commons Japan理事。Arts and Law理事。慶應義塾大学SFC非常勤講師。note株式会社などの社外役員。著作に『法のデザイン −創造性とイノベーションは法によって加速する』、共著に『オープンデザイン参加と共創から生まれる「つくりかたの未来」』など。Twitter : @TasukuMizuno

かつてわたしはルールは誰かが作ったものであり、最初からあるものでもあり、存在に疑問を持たずに守るべきものであると思っていました。ですからルールというものに対しては当然、自分を縛るネガティブなイメージを持っていました。

一方で、現在デザイナー・教育者であるわたしがルールに抱いているイメージは全く逆で、ルールが創造性を促す踏み台として機能することや、ルールを上手く設計することで、心地よく行動を促す導線として機能することを知っています。ルールは、行動や思考をデザインするためのツールとしても使うことができるのです。

本展では、さまざまなアプローチでルールへのイメージを更新するための手がかりを提供します。作品体験を通じて、みなさんもルールとの新しい付き合い方を始めてみませんか。

菅 俊一

菅 俊一 Syunichi Suge

コグニティブ・デザイナー/表現研究者/多摩美術大学統合デザイン学科准教授。1980年東京都生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。人間の知覚能力に基づくコグニティブデザインの考え方による問題設計や新しい表現の研究開発を軸に、社会に新しい価値を提案することを活動の主としている。主な仕事に、NHK Eテレ「2355ID / 0655ID」、21_21 DESIGN SIGHT企画展「単位展」コンセプトリサーチ、21_21 DESIGN SIGHT企画展「アスリート展」展覧会ディレクター。著書に『差分』(共著・美術出版社)、『まなざし』(ボイジャー)、『行動経済学まんが ヘンテコノミクス』(共著・マガジンハウス)、『観察の練習』(NUMABOOKS)。主な受賞にD&AD Yellow Pencilなど。主な展覧会に「あいちトリエンナーレ2019」(愛知県美術館、2019)、個展に「指向性の原理」(SOBO、東京、2017)、「正しくは、想像するしかない。」(デザインギャラリー1953、東京、2019)など。 http://syunichisuge.com

何のためにあるのかわからない、誰のためにもなっていないように見えるルールを体裁のために守る、というのはわたしが人生において最も苦手としていることのひとつです。わたしが多数派でできた社会のルールで捉えることができない障害のある人やマイノリティに関する活動を続けているのは、少なからずそんな自分の性格が関係しています。

ルールを苦手に感じるのは、それをつくった見えない存在を信頼できないこと、そして自分も信頼されていないことを感じる時です。ルールという共通言語があるからそこに収まらないものも尊重できるという実感が持てるとき、ルールが自分の味方に思えてくるのかもしれません。この展覧会では、来場者の力を借りて、他人や社会とのさまざまな信頼の結び方を想像する体験をつくれたらと思います。

田中 みゆき


写真:Shiho Kito/Yahooニュース特集

田中みゆき Miyuki Tanaka

キュレーター/プロデューサー。アートセンターなどに勤務後、「障害は世界を捉え直す視点」をテーマにカテゴリーにとらわれないプロジェクトを企画する。価値が定まる前の表現を扱うプロジェクトを通して、表現の見方や捉え方を障害当事者や鑑賞者とともに再考する。近年の企画に、「大いなる日常」展(2017年、NO-MA)、「音で観るダンスのワークインプログレス」(2017年~19年、KAAT神奈川芸術劇場)、映画「ナイトクルージング」(2019年公開)、「オーディオゲームセンター」(2017年~)など。「ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020 BOOK PROJECT『そのうち届くラブレター』」 キュレーター(2020年)、大阪・関西万博日本政府館基本構想策定における企画・展示コンテンツ分野クリエイターを務める。UCLA、東京大学DO-IT、Google Rare"The Power of Difference"など障害や多様性をテーマとしたカンファレンスにも多数登壇。2018年より東京工業大学リベラルアーツ研究教育院非常勤講師。http://miyukitanaka.net