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「虫展 −デザインのお手本−」

contents

ディレクター

この展覧会は、虫をデザインのお手本ととらえて様々な角度から考察し、そこから得られた情報を元に、これからのデザインの可能性を模索し、作品として展示してみようという試みです。人類史を約20万年としても、虫は何億年という単位の永い間、この地球上で繁殖し、激変する環境の中で多様に進化してきました。そしてまだまだ人類が出会っていない虫も多く存在すると言われています。ところが、虫は我々人類の大先輩であるにもかかわらず、ここ東京のような都会ではあまねく駆除する対象になっています。いつの間にか、都会には虫がいてはいけないことになっている。いてはいけないことになっているから、いるとその虫がどんな虫かも見ようとせず、反射的に駆除してしまう。しかし待ってください。それは生き物としての大先輩にちょっと失礼ではないのか。小さな頃、昆虫採集に勤しんだ自分の中のそんな気持ちが、この展覧会を開きたいと思うきっかけになりました。そこで早速、鎌倉に虫塚をつくられた、虫が大好きな養老孟司さんに相談し、展覧会の準備が始まりました。その後、虫を研究している方々のお話を聞けば聞くほど、次々に面白い話が出てきたのです。

虫の世界はとんでもなく面白い。私はこの展覧会の準備を進めながら、さらにそう思うようになりました。彼らがなんでこんなに永い間、生き延びてこられたのか。それだけをとってみても、そこに人類が生き延びていくためのヒントがあるように思えてなりません。この度も多くのクリエイターと共に虫に学び、多様な作品を用意いたしました。身の回りにデザインと関わりのない物事は何一つありません。この展覧会を体験していただき、少しでもこれからのデザインのお手本にしていただければ幸いです。

佐藤 卓

プロフィール

佐藤 卓 Taku Satoh

1979年 東京藝術大学デザイン科卒業、1981年 同大学院修了。株式会社電通を経て、1984年 佐藤卓デザイン事務所設立。現 株式会社TSDO代表。「ニッカウヰスキー ピュアモルト」の商品開発から始まり、「ロッテ キシリトールガム」や「明治おいしい牛乳」のパッケージデザイン、「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」のグラフィックデザイン、「金沢21世紀美術館」、「国立科学博物館」、「全国高等学校野球選手権大会」のシンボルマークデザインなどを手掛ける。また、NHK Eテレ「にほんごであそぼ」アートディレクター、「デザインあ」総合指導、21_21 DESIGN SIGHTディレクター及び館長を務めるなど多岐にわたって活動。著書に、『塑する思考』(新潮社)、『大量生産品のデザイン論 - 経済と文化を分けない思考 -』(PHP新書)など。