Loading...

mainImg

企画展「デザインの先生」

contents

ディレクター

ふと見回せば私たちは、なんと多くの人工の「かたち」に囲まれて暮らしていることでしょう。

そのなかで「優れたかたち」の存在はごく限られた数です。背景には、目に見えない長いプロセスがあり、一つひとつに、積み重ねられた時間と思索が凝縮しています。だからこそ時代や文化を越えて語り継がれ、特別な輝きを放ち続けるのです。

本展は、国境を越え、人々を驚かせ、社会を動かす力を持ち、現代においてなお特別な輝きを放つ6名を「デザインの先生」と呼び、彼らのプロジェクトとともに、背景にある哲学を表に引き出す試みです。

ドイツ、スイス、イタリアを母国とする「デザインの先生」たちは、同じ潮流に属していたわけではなく、それぞれが異なる原動力と哲学をもとに、戦後のヨーロッパで独自の道を切りひらいたマエストロたちです。

ではなぜ、仕事の手法や生き方も異なる「先生」6名を、同じステージに招聘したのかと言えば、そこに共通する軸を見たからでした。
商業主義を優先した「かたち」ではなく、ヒューマニティを中心に置き、さらには環境までとらえる営みとしてプロジェクトを行なっていたという軸です。
また「先生」たちが、自身の職能についてドイツ語ではゲシュタルター(Gestalter)のほか、エントヴェルファー(Entwerfer)を、イタリア語ではプロジェッティスタ(progettista)を使用していたことにも注目します。
それは「構想者。設計者。プロジェクトする者。」にあたる言葉で、デザインをより統合的な営みとしてとらえていたことを示しています。
本展では、これからの私たちの指針ともなるプロジェクトを改めて展示し、彼らの残した力強い言葉に耳を傾けます。

日常の対象に、実は発見すべき知性が潜んでいる。その気づきが混沌とした現代に問いかけるでしょう。
「私たちは、ここからどう進む?」

川上典李子、田代かおる

川上典李子撮影:Kenichi Yamaguchi

川上典李子 Noriko Kawakami

ジャーナリスト、21_21 DESIGN SIGHT アソシエイトディレクター。
「AXIS」編集部を経て1994年よりデザインジャーナリストとして活動。多摩美術大学理事。2008年「WA一現代日本のデザインと調和の精神」、2014年「Japanese Design Today 100」共同キュレーション(共に国際交流基金)、パリ装飾美術館「Japon-Japonismes. Objets inspirés, 1867-2018」ゲストキュレーター、2023年 京都市京セラ美術館「跳躍するつくり手たち:人と自然の未来を見つめるアート、デザイン、テクノロジー」企画・監修等、展覧会企画にも関わる。武蔵野美術大学客員教授。

田代かおる撮影:木奥恵三

田代かおる Kaoru Tashiro

ライター、インディペンデント・キュレーター。
イタリア政府給費生としてフィレンツェ美術アカデミーで学んだ後、ミラノを拠点にデザイン・建築について取材執筆を行う。主要テーマの一つは、エンツォ・マーリとの対話から読み解くデザイン哲学。翻訳書にマーリの著書「プロジェクトとパッション」(みすず書房)。2018年に帰国し、ATELIER MUJI GINZA Gallery1でデザイン展キュレーションを手がける(-2022)。近年の展覧会に「プロジェッタツィオーネ」(共同企画/東京ミッドタウン・デザインハブ)、「ジオ・ポンティの眼:軽やかに越境せよ。」(21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3)など。多摩美術大学非常勤講師。