contents
6人の先生たち

ブルーノ・ムナーリ Bruno Munari(1907–1998年)
1907年イタリア・ミラノ生まれ。20世紀イタリアを代表する最も影響力のある芸術家、デザイナーの一人。絵画、彫刻、グラフィックデザイン、インダストリアルデザイン、写真、教育と多岐にわたる活動を行う。20世紀初頭にイタリアの芸術運動「未来派」に参加。1930年代には、キネティック・アートの先駆けとなる代表作「役に立たない機械」を制作。分野を横断しながら、アイロニーとユーモアにあふれた独自の創作活動を行うとともに、70年代より子どもの創造力を引き出すラボラトリーを世界各地で開催し教育活動に力を注ぐ。絵本『le Macchine di Munari(ムナーリの機械)』にはじまる多くの絵本や、デザインプロジェクトに関する著書は、現在も多くの言語で愛読されている。1957年設立の「ダネーゼ」社との密接な協働関係においては、優れた知育玩具、プロダクトの数々を生み出した。

マックス・ビル Max Bill(1908–1994年)
1908年スイス・ヴィンタートゥール生まれ。1924から27年にかけてチューリッヒの美術工芸学校で銀細工を学び、その後バウハウスに入学。多岐にわたる才能を発揮した建築家であり、芸術家、グラフィカー、ゲシュタルター、文筆家。具体芸術運動を主導し、数学的思考方法に基づく芸術を追求した。1953年に、インゲ・アイヒャー=ショル、オトル・アイヒャーとともにウルム造形大学を創設、その設計を手掛け、初代学長に就任した。環境形成の理念のもと多大な影響を残している。「ウルム・スツール(ウルマー・ホッカー)」を始め「文化財としての生産品」の思考の現われであるユンハンスの時計などは名作デザインとして現在も製造され続けている。1993年には彫刻分野で高松宮殿下記念世界文化賞を受賞した。

アキッレ・カスティリオーニ Achille Castiglioni(1918–2002年)
1918年イタリア・ミラノ生まれ。建築家、デザイナー。1944年、ミラノ工科大学建築学科卒業。1940年頃から兄リヴィオ、ピエル=ジャコモと共に工業デザインを開始し、45年から兄と共同でスタジオを運営。「タッチア」や「アルコ」をはじめとする多くの優れた照明器具のデザインを手がけた。1968年のピエル=ジャコモ他界後は単独で活動した。教育者としても活躍し、トリノ大学およびミラノ工科大学で教鞭を執る。1956年にはイタリア工業デザイン協会(ADI)の設立に関わった。

オトル・アイヒャー Otl Aicher(1922–1991年)
1922年ドイツ・ウルム生まれ。20世紀ドイツを代表するグラフィックデザイナーであり、ビジュアルコミュニケーションとタイポグラフィの分野で後進に大きな影響を与えた。1953年には戦後ヨーロッパに希望をもたらす新たな教育の場として、インゲ・アイヒャー=ショル、マックス・ビルとともにウルム造形大学を創設する。1972年にはミュンヘン五輪のデザイン・コミッショナーとしてビジュアル・アイデンティティを手がけ、ピクトグラムも活かしたデザインで国際的に高く評価された。ルフトハンザ航空などの企業ロゴやCIも数多く手がけるなど企業デザインの先駆的存在である。自発的な探索とリサーチプロジェクトとして生まれたイズニー・イム・アルゴイ(南ドイツ)のためのピクトグラムや、フォント「ローティス」もアイヒャーのデザインとして知られている。

エンツォ・マーリ Enzo Mari(1932–2020年)
1932年イタリア・ノヴァーラ生まれ。芸術家、デザイナー。ミラノのブレラ美術アカデミーに入学し、ビジュアルアート作品を手がける。1950年代後半よりブルーノ・ムナーリの紹介で「ダネーゼ」社と協働し、デザイナーとしての活動を開始。数多くのプロダクト、家具のプロジェクトを手がけ、機能と形態の卓越したクオリティを生み出す。一方で、形態の背景に何があるのかを考えるよう繰り返し説き、量産品、工業デザインについての自身の哲学と倫理観について講演会等で熱弁を振るってきた。自身のデザイン哲学を記した著書に『プロジェクトとパッション』などがある。晩年には、良品計画、丸富漆器、飛騨産業など、日本企業との協働も行なった。

ディーター・ラムス Dieter Rams(1932年–)
1932年ドイツ・ヴィースバーデン生まれ。ドイツを代表するインダストリアルデザイナー。建築を学んだ後、1955年にブラウン社に入社し、長年にわたりデザイン部門の責任者を務めた。シンプルで機能的な製品を数多く手がけ、代表作には「ET 66」(電卓)や「SK 4」(ラジオ・レコードプレーヤー複合機)などがある。著書『Less, but better(より少なく、しかしより良く)』でデザイン哲学「良いデザインの10ヶ条」を提唱。その思想は現代のプロダクトデザインにも大きな影響を与え続けている。2025年9月に、世界デザイン機構(WDO)より世界デザイン賞を受賞。