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企画展「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」

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ディレクター

ディレクターズ・メッセージ

いつの時代も、最先端の科学技術とデザインはすぐそばにありました。科学者が生み出す新しい知識や技術はデザインを通じて人々の元へ届けられました。デザイナーたちによって開かれた新しいライフスタイルは、次の研究のトリガーであり続けました。しかしながら、科学者たちの本当の関心は大いなる真理を探究することにあり、デザイナーたちの目標は人々の幸福な体験や豊かな社会の実現にあるので、両者は必ずしも同じ道を歩むことはできません。科学とデザインは近くにいながら、その間には越えがたい溝もあるのです。

そのような緊張感をはらんだ科学とデザインの関わりには、初めてかのような新鮮な出合いがあり、葛藤があり、ドラマがありました。そして時代ごとに、自動車や家電、コンピュータ、スマートフォン、SNSなど、私たちの生活が一変するようなイノベーションを生み出してきました。

本展は、今まさに起こっている科学とデザインの邂逅により芽生えつつある「未来のかけら」を探るものです。2001年以降、私たちは先端技術の研究者たちとともにちょっと未来を感じさせるさまざまなプロトタイプをつくってきました。2013年に東京大学に教授として着任してからは、まだ実用化されていない先端技術にかたちを与え、研究者と共に未来を探る「価値創造デザインプロジェクト」をスタートさせました。

企画展「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」では私のこうした活動をコアに、さまざまな分野の研究者とクリエイターたちの新たな「出会い」を集めます。最先端のロボティクス、積層造形、構造形態学、身体拡張、バイオエンジニアリングなどの研究者たちと、デザイナー、アーティストたちがタッグを組んで未来のかけらを錬成します。サイエンスフィクションのようなプロットにとどまらず、質感や動きを伴った体験を共有できるリアルな物語の断片です。実験室で生まれたばかりのピースを繋ぎ合わせてまだ見ぬ世界を描くのは、ご来場いただく皆さんです。

山中俊治

プロフィール

山中俊治

山中俊治 Shunji Yamanaka

1957年生まれ。東京大学工学部卒業後、日産自動車のカーデザイナーを経て1991-94年東京大学特任准教授。1994年にリーディング・エッジ・デザインを設立。デザイナーとして腕時計から家電、家具、鉄道車両に至る幅広い製品をデザインする一方、科学者と共同でロボットビークルや3Dプリンタ製アスリート用義足など先進的なプロトタイプを開発してきた。Suicaをはじめ日本全国のICカード改札機の共通UIをデザインしたことでも知られる。2008年より慶應義塾大学教授、2013年より東京大学教授。2023年には東京大学特別教授の称号を授与された。ニューヨーク近代美術館永久所蔵品選定、グッドデザイン賞金賞、毎日デザイン賞、iF、Red Dotなど受賞多数。