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パネル討論 [ 21_21 DESIGN SIGHT ディレクターズ・トーク ]

去る11月12日、京都の宝ヶ池ほとりにある国立京都国際会館において、パネル討論 [ 21_21 DESIGN SIGHT ディレクターズ・トーク ]が実施されました。
この催しは、第22回京都賞(財団法人 稲盛財団主催)を受賞した三宅一生の記念ワークショップ『デザイン、テクノロジー、そして伝統』の一環として行われました。

ワークショップ前半は、三宅が30年余にわたる衣服デザイナーとしての仕事を紹介。山口小夜子ほか数名のモデルによる代表作を着用してのデモンストレーションや映像などが披露されました。その後、彼の最新の活動を伝えるものとしてディレクターズ・トークが行われました。

本題のパネル討論は、京都賞 思想・芸術部門審査委員長で美術史家の高階秀爾が座長を務め、21_21 DESIGN SIGHTを設計した建築家で、第13回京都賞受賞者でもある安藤忠雄、当施設のディレクターである佐藤 卓と深澤直人、同じくアソシエイトディレクターの川上典李子らがパネリストとして登場。21_21とのかかわりについて説明したあと、座長の質問に答えるという形式で進行しました。
21_21に関する主な発言を紹介します。



三宅一生
デザインにかかわる場所をつくりたいという気持ちはかなり昔からありました。1970年代の初めに、グラフィックデザイナーの田中一光さん、そして隣にいらっしゃる安藤忠雄さんと京都で会って、何か一緒にやりましょうと話したことがそもそもの始まりです。

2003年に『造ろうデザインミュージアム』という記事を新聞に寄稿しましたら、大きな反響がありまして、三井不動産さんからのご提案や多くの方々のご協力があり、東京ミッドタウンにデザインの施設が誕生することになりました。

とはいえ、私たちの施設はアーカイヴを持ちませんので、ミュージアムとは呼べません。デザインにかかわるさまざまな展示や催しをするなどの活動を通して、日本の伝統と美意識、そして新しいテクノロジーを繋ぐ場所でありたいと考えています。私たちと若い人たちと、一緒に未来をつくっていく、そんな拠点になりたいと考えています。
安藤忠雄
今回の建築は、三宅さんの「一枚の布」に対応する「一枚の鉄板」ということで考えました。50メートルもの一枚の鉄板が屋根となります。高度な技術を要するものですが、現場の職人たちが作り上げました。現場の人たちの気迫、ものをつくる強い思いが実現へ導いてくれました。

設計するにあたって、この混迷する時代に、もひとつの日本の顔をつくる、日常の生活に欠かせないデザインの可能性を示す、そんな建築を心がけました。その私の思いと、日本人の高い技術力と気迫を、オープン時の特別企画ではお見せしたいと考えています。そして、この建物が、ここを訪れる人びとにとって、それぞれの可能性を見つける場所になればと願っています。
佐藤 卓
21_21 DESIGN SIGHTに参加することになり、最初にシンボルマークを考えることになりました。私が提案したのは、一枚の鉄板でできたシンボルマーク。ただ「21_21」という数字と記号だけのものです。これをプレートにすることで持ち運べるロゴ、というアイデアを思いつきました。シンボルマークは通常、平面が基本になりますが、プレートというプロダクトにすることで、どこへでも持ち運べるものになるわけです。そしてこのプレートを「デザイン」のアイコンとして捉えてみると、世界中でこのプレートを使ってあらゆるものに「デザイン」という投げかけをすることができます。

このシンボルマークは、一見すると番地を示すプレートに見えます。なんの変哲もない、どこにでもある普通のイメージです。このことは21_21 DESIGN SIGHTのテーマのひとつ「日常」と密接につながっています。日常には、実はたくさんの可能性が潜んでいます。その日常に潜むあらゆる可能性を、ひとつひとつデザインという行為によって引き出すこと。

デザインの可能性は、特別なところにあるのではなく、ごく日常の中にあります。今後21_21 DESIGN SIGHTは多くの人が関わって、デザインの可能性を探る場になると思います。今でも、そしてこれからも、常にデザインの可能性は、実はふつうの日常に問い掛けることから始まると考えています。
深澤直人
21_21 DESIGN SIGHTって何をするところなの?とよく聞かれます。僕は「目からウロコを落とすようなところ」ではないかと思っているのです。第1回企画展のディレクションを担当しているのですが、ここでそのテーマを発表します。「Chocolate」。「10人のうち9人はチョコレート好き。そして10人目は嘘をついている。」とアメリカの漫画家、ジョン・G. トゥリアスは言っています。

チョコレートは、誰もが親しみを持って受け入れている不思議な食べ物と言えると思います。いや、食べ物という存在を超えて、生活のいたるところに顔を出してきます。その、既に共有されている感覚を通して世界を捉えるとどうなるか、それが今回の展覧会の試みです。チョコレートを通して世界を見ていく、ということです。

環境と人間との関係を探っていくと、かならずデザインの視点が存在していますので、そこを探求したいのです。もちろん、チョコレートそのものの作品も登場しますが、それだけではありません。参加作家たちとワークショップを行なってさまざまな可能性を考えていますので、なかなかユニークな試みになると思います。ご期待ください。
川上典李子
21_21 DESIGN SIGHTをどのようにつくっていくか、その方法論から始まり、本当に手探りのスタートでした。三宅さんとミーティングを繰り返してきて、印象に残っていることはふたつあります。ひとつは「プロセスを大切に」ということ。ふたつ目 「楽しくやりましょう」ということです。私たちがまず楽しむことで、多くの人に参加してもらえる生き生きとした環境をつくれるのだ、と。これまでやってきた、さまざまな工場見学ですとか、ミーティング、合宿、ワークショップ、建築現場の見学、ウェブサイトの運営など、すべてにおいてそのふたつは通低してきたと感じています。

21_21 DESIGN SIGHTは年2回、長期の企画展と、その間のさまざまなジャンルを横断するようなアクティヴィティを行なっていくことが決まっていますが、これからも、この2つを大切にしながら進んでいきたいと考えております。そうすることによって、さまざまな方に参加していただけるデザインの実験の場、デザインを考える場をつくりたいと思います。


--このほか、京都でも21_21が何かできないだろうか、デザインって一体なんだろうか、子供も大人もわいわい言って楽しめる場所にしたいなど、それぞれの立場から21_21に対する思いや夢が語られました。



(21_21 DESIGN SIGHT 広報・財団法人 三宅一生デザイン文化財団)