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2020年9月 (5)

ギャラリー3では、2020年9月22日まで、POP-UP SHOP企画の第4回目として「tempo store @ 21_21」が開催されています。

tempoは、2013年の誕生以来、空間と時間にアプローチした新しい形のモビールを発信し続けるブランドです。
空間の中で小さな空気の動きに反応して不規則に動くモビールは、「動く彫刻」ともいわれ、部屋の印象を変えるだけでなく、楽しさや癒しをもたらします。

コラボレーションする国内外の建築家やデザイナーが考える「重さ」や「バランス」がデザインに現れる優れたプロダクトとして、tempoのモビールは、美しいだけではなく素材の魅力と絶妙なバランスを楽しめるようになっています。栃木県足利市にある工房での、プロフェッショナルによる丁寧な手作業によりこのバランスが生み出され、モビール独自のリズムが形になります。

今回の「tempo store @ 21_21」では、ギャラリー3の空間を存分に使用してモビールを展示。そして既存の全プロダクトに加え、DRILL DESIGNによる新作の置き型モビールや、広い空間に映える大きなサイズのモビール、ギャラリー3限定カラーなどを販売しています。

21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2では、会期延長になった「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」(9月22日まで、日時予約制)も開催しています。 ぜひ、モビールの魅力と合わせてお楽しみください。

Photo: Ryoukan Abe
Photo: Ryoukan Abe
Photo: Ryoukan Abe
Photo: Ryoukan Abe
足利の工房 Atelier in Ashikaga
Photo: 衛藤キヨコ(kiyoko eto)

現在、開催中の「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」の展覧会ディレクター、田川欣哉と、2020年10月16日から始まる「トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう」の展覧会ディレクター、ドミニク・チェンによる対談が実施された。
COVID-19の影響で会期が変更となった2つの展覧会だが、偶然にも同世代のディレクター2人にはいくつも共通点が見えてきた。デザインや工学をはじめ、さまざまな領域を横断してきた2人の見つめるビジョンとは。

文・塚田有那(トランスレーションズ展 企画協力)

>> 前編に戻る

──ドミニクさんも田川さんも、デザインとエンジニアリングの両方に精通しながら、多様な分野を行き来されていますよね。異分野間の共創の秘訣はどこにあると思いますか?

田川:多様性はかけ算であり、組み合わせの爆発が起きる可能性だと思っています。けれど多様な人が集まって、すぐに全員が同意することはまれです。結果、互いの領域をつなぐ媒介的な人が守りに入ってしまうこともあります。企業の中でも意見がバケツリレーで伝わっていくうちに判断が鈍っていく現場をよく目にしますね。
そんな時、僕たちはよく「振り子」のメタファーを使うのですが、お互いに緊張感を保って、すぐに合意せず矛盾できる状態を持っておくことが大事だと思うんです。そして自分自身も多重人格的になるというか、あらゆる角度から考えても「YES」と思えるものを選び抜く。1万ある可能性の中からひとつを選ぶスキルが重要になっていくんですね。

ドミニク:最終的に選ぶプロセスまではどう運んでいくのでしょうか?

田川:言葉にしにくいのですが、無理な合意形成をできるだけしない、とかでしょうか。自然とこれだと思えるようなかたちまで追求します。

ドミニク:その選ぶプロセスには、会話だけでなくプロトタイプを実際にかたちにすることも大きく関わっているでしょうね。かたちになることで無意識にもその人の脳内のイメージが出てくるというか。それは「翻訳」の課程にも似ていて、本来イメージが言語化される前から翻訳は始まっていると思うんです。それをどう言葉にするか、かたちにするかによって表れ方が変わってくる。
それと、田川さんの言う「多重人格的になる」という感覚もすごく共感します。実際に僕も英語とフランス語と日本語、話す言語によってテンションが変わるのですが、だからこそ、その違いを面白がれるところもあって。

田川:「誤訳」が面白いんですよね。正しさを追求するだけではなくて、思ってもみないところから生じることに可能性があると思うんです。たとえば、僕は大作マンガを読むときは大体20巻くらいから読み始めるんですよ。そうすると、脳内でその20巻までに至るストーリーが勝手に生まれていくんです(笑)。その空白の部分を補完する面白さがあるなと思っていて。

ドミニク:面白いですね。さらにその「誤訳」をお互いに受け入れ合っていけると良いチーム関係が築ける気がします。どれだけ多様な人々の集まりであっても、全員が翻訳者的になっているときは話の展開が早いんですよね。それを日常生活にも取り入れていくと、普段の何気ない生活の中にもたくさんの気付きがあると思います。

──昨今は社会のダイバーシティがよく注目されますが、デザインの視点からできることは何だと思いますか。

田川:みんな、自分の予測した未来を求めていると思うんです。その分、予測しないことが起こると摩擦も生まれる。けれど、予測もしなかったことが起こることを楽しむことはできるし、そのきっかけをつくるのがデザインの面白いところだと思います。

ドミニク:多様性って認めるものではなく、つくっていくものだと思うんですよね。より深く違いを知ることで、自分のほうが変化していくんです。そうした注意を向けていくこと、家族の中にも差異はあるし、㊙展のように創造のプロセスを観察することで見つかる発見もある。生物進化の過程には多様なDNAのゆらぎが重要だと言われますが、差異から生まれる多様さを楽しんでいきたいですね。

現在、開催中の「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」の展覧会ディレクター、田川欣哉と、2020年10月16日から始まる「トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう」の展覧会ディレクター、ドミニク・チェンによる対談が実施された。
COVID-19の影響で会期が変更となった2つの展覧会だが、偶然にも同世代のディレクター2人にはいくつも共通点が見えてきた。デザインや工学をはじめ、さまざまな領域を横断してきた2人の見つめるビジョンとは。

文・塚田有那(トランスレーションズ展 企画協力)

──まずは2つの展覧会を読み解くにあたって、それぞれ企画が立ち上がった背景から教えていただけますか。

田川欣哉(以下、田川):元々の企画は、僕もメンバーである「日本デザインコミッティー」を紹介する展覧会としてスタートしました。コミッティーは1953年から、グッドデザインを世の中に広げるために長く活動してきた有志の会で、メンバーはそれぞれの分野で精力的に活動してきたクリエイターが集まっています。
その展覧会をつくるにあたって、21_21 DESIGN SIGHTという実験や発見を促すような場所で何ができるかを考えました。そこで出た課題のひとつが、デザイナーの世代間ギャップを越えること。たとえば、若手デザイナーたちのもつデジタルの感度と、大御所世代の卓越した職人的なセンスの間には一見するとひらきがあります。けれど、ものごとがアウトプットされる前の、最も人間的な「創造の瞬間」は普遍のはず。そうした無数にある創造の原点の中から、観る人の中で何かが発火していくといいなと思いました。そこから「原画を見せる」という企画に発展していったんです。

ドミニク・チェン(以下、ドミニク):「トランスレーションズ展」の場合は、21_21から「翻訳」というテーマで相談をいただいたことから始まりました。「翻訳」というと言語の問題のように感じられますが、ディスカッションを進めるうちに、そもそもは他者とコミュニケーションをするための道具であり、デザインの本質といえるのではないかと考えるようになったんです。そう考えていくと、言語翻訳のプロでなくても、日常会話の中に「翻訳」は介在していますし、同じ言語を話す人同士でも、言葉にならない感情や感覚を伝えようと試行錯誤することもある。それらをすべて「翻訳」と捉えて、まだまだ開拓しきれていない翻訳の可能性を探っていきたいと思うようになりました。

──企画のコアとなったのはどんな部分なのでしょうか。

田川:デザイナーというのは本来完成されたものを提示することが仕事なので、アイデアレベルの原画を見せたことがある人なんてほとんどいないんですね。メンバーの中には、「途中段階のプロセスを見て何が面白いのか? 鑑賞者向けに理解の補助線を引いた方がいいのでは?」という声もありました。けれど、クリエーションの現場はいつだってカオスで、文脈づけられるものはないと思うんです。あえて説明なしにそのままを出していただくことにしました。そこが㊙展のコアといえますね。

ドミニク:作家を神話性から解放し、ナレッジをシェアしていく方向ですよね。㊙展はそれを若い人に向けて見せているのがいいなと思っていて。僕が教えている学生などを見ていると、みんなネット経由でものの作り方やプロセスをよく学んでいるんですよ。神秘のベールに包まれてきたのが近代的な作家像だとすると、プロセスをシェアしていくのは21世紀的なものづくりといえそうですね。

田川:それでも、参加デザイナーの中には搬入期間中に何度も他の作家の展示を隈なくチェックする方もいて(笑)。普段の見せ方ではない分、お互いを意識されていたのがまた良い刺激になりましたね。

ドミニク:今回つまり田川さんはボクシングでいうところのレフェリーで(笑)、リングを設定し、あとは様子を見守ることに徹したと。
先ほど田川さんは「観た人の中で何かが発火する」と表現されましたが、それはトランスレーションズ展にも通じる考えだなと思いました。展覧会の副題にした「『わかりあえなさ』をわかりあおう」というフレーズには、「わからない」から生じる摩擦や差異から、新たに発火する刺激があるというコンセプトが込められています。わからないからこそ面白い。この「わかりあえなさ」を色々な角度から価値付けていきたいと思いました。

>> 後編につづく

2020年9月2日、企画展「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」に関連して、オンライントーク「木と器のマル秘」を開催しました。
日本デザインコミッティーのメンバーである、三谷龍二が出演し、展覧会ディレクターの田川欣哉を聞き手に、長野・松本の工房と東京をオンラインで繋いでのトークとなりました。

三谷は、㊙展の会場構成プランを見た時、標本箱を見た気持ちになったといいます。来場者が展示品を"観察"するには良い機会だと思ったと語り、田川とともに、自らの展示品の説明に移りました。
基準を決められるよう、最初につくることが多いという「器の型紙」、梨や檜から自作した漆塗りのヘラ、鉛筆の如く持ち手を削り、その中に収まった毛を更新しながら使用するという漆刷毛、そして彫刻刀など、三谷が日ごろ用いる道具類が紹介されました。
また三谷は、㊙展には遊びの要素があると述べ、仕事の合間につくったという小さなオブジェや、日ごろ描いているスケッチにも触れました。

トーク終盤では、自らの仕事を「生活工芸」であると語った三谷。美術を意識した作品としての工芸ではなく、もう少し肩の力を抜いた、伝統工芸と工業製品の中間を、生活工芸とデザインに委ねていると結びました。

2020年8月26日、企画展「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」に関連して、オンライントーク「デザインプロセスのマル秘」を開催しました。
日本デザインコミッティーのメンバーである、喜多俊之が出演し、展覧会ディレクターの田川欣哉を聞き手に、大阪の喜多俊之デザイン研究所と東京をオンラインで繋いでのトークとなりました。

冒頭で、㊙展会場の喜多の展示エリアが映し出されると、喜多は、本展の参加が自らの仕事を振り返る良い機会となったと語り、イタリアを始めとした欧州でのデザイン活動、過去に手がけた椅子や液晶テレビ等について、資料とともに紹介しました。
独立してまもない頃、大分県で猿山を見たときに浮かんだアイデアを椅子に昇華させ、後にイタリアのMOROSOが商品化した「SARUYAMA」、390万台を販売した液晶テレビ「AQUOS」のコンセプト、16世紀の有田の器を基に整形した「HANA」、また漆、紙、木材といった素材への探究など、㊙展のマル秘情報ともいえる内容が語られました。

コロナ禍において、デザインの役割がますます重要になっていると話す喜多。より良い暮らしの実現にむけての活動が必要となっている現在において、暮らしと経済産業に関わるデザインを、自然、テクノロジー、時間などのバランスや、良いマーケットづくりとともに考えていくことの大切さを述べました。
トークの終わりでは、「デザインは実用性、機能性の他にアートの心がいる、サンドイッチのようにどこかに紛らわせるしかない」と語った喜多。彼のデザインを成り立たせている、あふれんばかりの好奇心と探究心の質量が伝わるイベントとなりました。