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2017年10月20日、いよいよ開幕となる「野生展:飼いならされない感覚と思考」の会場の様子を、いちはやくお届けします。

人間の文化と生活には、心の土台となる「野生」の能力が欠かせません。
理性や合理性ばかりが前面にあらわれる現代においても、私たちの本能であり知性でもある野生の感覚と思考は、いまだ失われていません。
本展は、現代の表現者たちのもつ野生の魅力に着目し、さまざまな作品や資料を通して、その力を発動させるための「野生の発見方法」を紐解く展覧会です。

写真:淺川 敏/Photo: Satoshi Asakawa

2017年7月8日、企画展「『そこまでやるか』壮大なプロジェクト展」に関連して、展覧会チームによるオープニングトークを開催しました。
トークには、本展ディレクターの青野尚子、会場構成協力の成瀬・猪熊建築設計事務所より成瀬友梨、猪熊 純、展覧会グラフィックの刈谷悠三が登壇しました。

トークのはじめに、青野尚子が、本展ができるまでの過程について解説しました。
クリストとジャンヌ=クロードを出発点として、世界各国からダイナミックな手法で活動を行うさまざまな分野の作家たちが集う本展。
参加作家の制作のプロセスを解説し、過去に制作した作品についても触れました。

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展覧会グラフィックを担当した刈谷悠三は、ポスタービジュアルの複数のアイデアを実際に見せながら、現在のビジュアルに至るまで様々な試行錯誤があったことについて振り返ります。展覧会タイトルにもある「そこまでやるか」の言葉によって想像力を引き立てられるよう、あえて画像は用いらずに構成したことを説明しました。
さらに、クリストとジャンヌ=クロードの「フローティング・ピアーズ」から着想を得たオレンジを展覧会のテーマカラーとし、会場グラフィックでも統一感があるデザインを目指したと語りました。

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作品のスケールが身体的に伝わり、会場全体でひとつの体験ができるように構成したと語る猪熊 純。構想途中の模型を用いながら、どのように会場のバランスをつくりあげてきたのかを解説しました。特に4組の作家が集うギャラリー2では、同時に複数の作品が目に入り迫力が伝わる配置、一体感をもたせつつも個々の作品と向き合って鑑賞できる構成を、具体的に意識したと言います。
成瀬友梨からも、参加作家とその作品から感じ取った魅力をより良く伝えていくための粘り強い試行錯誤が語られました。

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本展開催に向けて約1年をかけて準備してきた展覧会チームのアイデアの源や試行錯誤を重ねたプロセスからも、「そこまでやるか」というフレーズに応えようとする強い熱意が感じられるトークとなりました。

いよいよ明日開幕となる「『そこまでやるか』壮大なプロジェクト展」。開幕に先駆け、会場の様子をお届けします。

つくることの喜びとともに、「壮大なプロジェクト」に向けて歩みを進める表現者たち。彼らの姿勢には、さまざまな困難に立ち向かう強い意志と情熱があります。本展には、世界各国からダイナミックな活動を行うクリエイターたちが集います。

本展では、制作過程のアイデアスケッチやドキュメント、実際の作品で使用した素材、新作インスタレーションを展示し、より直感的に身体で作品を楽しむことができます。
展覧会ディレクターに建築やデザイン、アートなど幅広い分野に精通するライターでエディターの青野尚子を迎え、クリエイションが持つ特別な力と、そこから広がっていく喜びを伝えます。

Photo: 木奥恵三 (Keizo Kioku)
Photo: 木奥恵三 (Keizo Kioku)
Photo: 木奥恵三 (Keizo Kioku)
Photo: 木奥恵三 (Keizo Kioku)
© Georges Rousse
Photo: 木奥恵三 (Keizo Kioku)

企画展「デザインの解剖展: 身近なものから世界を見る方法」に企画制作協力として関わっているのが岡崎智弘。今回の仕事や見どころを語ってもらいました。
(聞き手:川上典李子)

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「デザインの解剖展: 身近なものから世界を見る方法」会場風景(Photo: Satoshi Asakawa)

—会場では「デザインの解剖展」の300近いコンテンツを自由に見ていただき、考えるきっかけにしてもらいたいというのが21_21 DESIGN SIGHTの願いでもあります。そうした「見方」のヒントとして、「ここは!」という例のいくつかを岡崎さんから挙げていただけますか。展覧会最終日まで残りわずかとなりましたが、これから来場くださる方や、閉幕前に再度いらしてくださる方に参考にしていただけるかと思います。

たとえば、ブルガリアヨーグルトの情報構造。パッケージの文字や図柄の重なりから、情報の構造や配置を観察できる展示ですが、なかでも「乳」の一文字が突出しているんです。使用アレルギー物質を表示する小さな文字情報のひとつでありながら、重要な文字情報として、最も高い階層として考えられていることがわかります。このように考えられた情報の階層、構造は、平面のグラフィック表現となった際にも目立ち、きちんと見てとることができるのです。グラフィックデザインの役割について改めて考えることのできる良い例だと思います。

きのこの山の正面外装グラフィックについては、1つだけ白いパッケージの展示になっています。1985年の2代目パッケージですが、企業の収蔵もなく、コレクターも見つけられていない。どこにもないというミステリアスな面もさることながら、量産されて流通し、あたり前のように生活のなかにあるものがこうしてゼロになるという状況、これはすごいことだと思いませんか。2代目パッケージがどこかにあることを知っている方がいたら、ぜひとも教えてください。

商品それぞれに容器の形や材質、包装の構成要素や印刷を解剖していますが、明治エッセルスーパーカップの容器を約21倍にした巨大模型は特に細部もまじまじと見てほしいものです。外蓋の構造を裏側から見てみたり、床ぎりぎりの位置になってしまいますが、底の内側部分も細かく表現しているので、ぜひともじっくり見てみてください。これを見た後に市販されているアイスクリームのカップを切ってみたり、外蓋を広げたりしてもらえると、また新しい発見があるのではないかと思います。

会場には各製品に関する客観的な情報が並んでいますので、少しでも興味のある点があったら、情報を道具としてつかって、さらに深く踏みこみながら考えてもらえるのがよいと思います。展覧会準備の際に佐藤 卓さんが「情報に触れたひとに情報を自由に編集してもらえる構造にしよう」とおっしゃっていましたが、まさにその通りだと思います。それは僕たち展覧会をつくる側にはできないことです。


「デザインの解剖展: 身近なものから世界を見る方法」会場にて(Photo: Satoshi Asakawa)

—昨年秋の「六本木アートナイト2016」の日に、岡崎さんはじめ鈴木啓太さん、中野豪雄さんと「デザインの解剖展」ギャラリーツアーの案内役をさせていただいた際、「展覧会制作に関わってみて、デザインということばが溶ける思いがした」という岡崎さんの発言にはっとする思いでした。本展に密に関わってくれた岡崎さんがいま思っていること、そこにデザインとは何かを考えるうえでの大切な点が含まれているように感じています。

量産されている身近なものを、デザインの視点、またデザインという方法論で解剖する展覧会は、ひとつの製品にこれほど多くの要素が含まれていることに気づかせてくれます。成分にしても味にしても専門の立場のひとが研究し、決定してきた結果です。このように製品をデザインの視点で解剖していくと、最小単位として「仕事」が現われてくることに気づきました。デザインということばは溶けてなくなり、仕事ということばに置き代わるような感覚でもあったのです。デザインということばがより広くなっていたり柔らかくなっているのかもしれませんが、どの仕事のどの段階でも、現状を良くするために仕事がされています。そう考えると、純粋に仕事をすることもまたデザインと言えるのではないだろうかと、考え続けているところです。「デザインの解剖」を通して、自分の職能をまっとうしている多くのひとの存在が見えてきました。デザインとはやはりひとと関係することであるということ。そのことを改めて考えています。


オープニングトーク「解剖展の解剖」2016年10月22日

企画展「デザインの解剖展: 身近なものから世界を見る方法」に企画制作協力として関わっているのが岡崎智弘。今回の仕事や見どころを語ってもらいました。
(聞き手:川上典李子)

—岡崎さんにはこれまでにも「デザインあ展」(2013年)「単位展 ― あれくらい それくらい どれくらい?」(2014年)に出展してもらっています。NHK Eテレ「デザインあ」の「解散!」コーナーでのストップモーションを活かした映像でも注目されている岡崎さんですが、ご自身の活動はグラフィックデザインが始まりだったそうですね。

はい、大学でグラフィックデザインを勉強して、卒業後は印刷を主とするグラフィックデザインの事務所に所属していました。グラフィックの視点でコマ撮りした動画をウェブサイトで紹介していたところ、中村勇吾さんからNHK Eテレで準備中だった「デザインあ」への声をかけてもらったんです。これが2010年のことで、「解散!」は番組開始の2011年春から継続しています。
このときはグラフィックデザインの考えを映像に活かすという意識でしたが、その後、グラフィックや映像といった異なるジャンルのデザインがあるのではなく、それぞれのジャンルが「デザイン」という大きなくくりに内包されているのだと考えるようになりました。 21_21 DESIGN SIGHTの「デザインあ展」も初めてとりくんだもので、お寿司の解散、本の解散、器の解散、お金の解散の4つをオブジェとしてデザイン・制作しました。表現媒体が違うと必要とされる技術はもちろん異なりますが、グラフィックにしても映像、プロダクトにしても、姿勢としては同じ「デザイン」なのだと意識しています。


「デザインあ展」会場風景 2013年2月8日-6月2日(Photo: Masaya Yoshimura)

—岡崎さんの幅広い活動のなかからいくつか紹介してもらえますか。

NHK Eテレの「デザインあ」と同じく2011年から継続しているものに、離島専門季刊誌『ritokei』のアートディレクションとデザインがあります。全国に数百ある離島をつなげる役目を担おうと活動している離島経済新聞から声をかけてもらい、彼らのプロジェクトをどのようにかたちにしていけるのか、またどう伝えていけるのかに関わっています。愛知県常滑市でのTOKONAMEプロジェクトでは、現地移り住んだデザイナーの高橋孝治さんをはじめとする「とこなめ会」の一員として、常滑焼きの伝統をどう今後に展開していけるのかを考えているところです。映像の仕事では、無印良品の小型収納類のプロモーションがあります。クリエイティブディレクターを務めた阿部洋介さんと、小物類を整理整頓してくストップモーションの映像をディレクションしました。


「デザインの解剖: ISSEY MIYAKE A-POC BAGUETTE」
(なんなの? A-POC ー MIYAKE ISSEY + FUJIWARA DAI ー」展)
2003年9月10日-10月5日、AXISギャラリー(Photo: Yasuhito Yagi)

—今回の「デザインの解剖展」についてお聞きします。佐藤 卓さんの「デザインの解剖」を岡崎さんは学生時代に見ていたとか。

はい、「デザインの解剖」を初めて知ったのは学生時代、「なんなの? A-POC ー MIYAKE ISSEY + FUJIWARA DAI ー」展(2003年)の会場です。展覧会のグラフィックデザインが大学の恩師だった秋田 寛さんでした。この会場では、繊維構造の模型に「おーっ!」と驚かされてしまいました。模型を観察することで構造を自然に理解できながらも、小さなものを巨大化した奇妙なものをギャラリーで見た、という感覚です。その感覚を今でも覚えています。


「デザインの解剖展: 身近なものから世界を見る方法」会場風景 (Photo: Satoshi Asakawa)

—今回の展覧会については、コンテンツが膨大な量であるからか、制作プロセスに興味を持った方から私自身も多くの質問を受けています。展覧会ディレクターである佐藤さんと構成をどう詰めてこられたのか。そのやりとりの様子を改めて聞かせてもらえますか。

開幕1年半ほど前、展覧会のコンテンツを考える初期段階から参加しています。佐藤さんと検証したコンテンツ案は100以上になりました。その一つひとつの検討と、並行して進んでいた書籍におけるコンテンツも整理しながら、最終的に会場で紹介しているコンテンツは300近くあります。そのうえでこれら一つひとつの展示方法を考える作業があります。コンテンツの何かが日々細かく更新されているので、それ自体をチェックする作業からして大変で、最初はわかりやすいように資料に更新マークをつけていたりしたのですが、マークがついたことを制作チームが共有することだけでも大変でした(笑)。
これほど多くの項目を展覧会としてまとめる作業に関わるのはもちろん初めてのことです。「デザインあ」のときもそうでしたが、僕はどうも、それまでやったことのない分野の仕事に関わることが多くなる人生みたいです(笑)。情報やものを構成し、人間の知覚にかかわる要素を組み立てる視覚伝達の仕事によって社会に関与するということは共通していますが...


「デザインの解剖展: 身近なものから世界を見る方法」会場風景 (Photo: Satoshi Asakawa)

—解剖は、岡崎さんが「デザインあ」でとりくんでいる「解散!」とつながるところがありますね。

「デザインあ」の「解散!」は佐藤さんのデザインの解剖から生まれたひとつで「要素をよく見る」という点は共通するものです。あるものをピンセットで分解し、一つひとつを手で動かした写真を1分間の映像にまとめているのが「解散!」ですが、解散は物性を軸として、あるものの多層構造、内包構造を楽しく見ることができるように伝えるもの。今回の展覧会の「デザインの解剖」はこの解散につながるところがありながらも、味や知覚も含みながら切りこんでいる点で異なる特色があります。
客観的な価値に基づいたコンテンツを並べて展覧会にしていく佐藤さんとの今回のやりとりは、とても楽しいものでした。「デザインの解剖」における佐藤さんの一貫した考え方、すなわちデザインの視点で見る、客観的に見るということを会場でもまず伝えたうえで、僕自身大切にしたかったのは、子どもでも楽しめる展示であると同時に深い部分を理解してもらえるものであること、またその幅をどうもたせられるのかということです。

>>後編へつづく

おかざきともひろ:
アートディレクター/グラフィックデザイナー
1981年生まれ。東京造形大学デザイン学科卒。アイルクリエイティブ勤務を経て、2011年9月よりSWIMMINGを設立。印刷物から映像制作までカテゴリを横断したデザインを行う。多摩美術大学情報デザイン学科にて非常勤講師を務める。

社会を支える基盤であり、叡智の結集でありながら、普段は意識されることの少ない土木工学や土木構造物の世界。21_21 DESIGN SIGHTで「土木」をテーマにしようと決めた際、ディレクター一同、これこそがデザインの施設でとりあげるべきテーマであると話し合った経緯があります。生活を支える普段は見えない力、自然災害から生活を守る工夫の歴史について、あるいは現場を支える多くの人々の存在、最新の技術や日本の作業作業のきめ細やかさなど、いつも以上に熱い会話となりました。こうした「土木」をより多くの方々に身近に感じてもらえる機会を、建築家の西村 浩氏がみごとに構成してくれています。

会場でまず出会うのは、見えない土木の存在です。1日あたり300万から400万もの人々が行き交い、乗降客数や規模で世界一にも記録されている新宿駅を始め、渋谷駅、東京駅のメカニズムを可視化するべく「解体」を試みた建築家 田中智之氏のドローイング。アーティストのヤマガミユキヒロ氏は、神戸の六甲山からの街なみと隅田川からの風景を絵画と映像の投影による「キャンバス・プロジェクション」で表現しています。日の出から日没、そして再び日の出を迎えるこれらの美しい風景も、土木あってこそ。そう考えると実に感慨深く、静かに移ろっていく風景に見入ってしまいます。


渋谷駅については、ギャラリー2で紹介されている田村圭介+昭和女子大学環境デザイン学科 田村研究室による「土木の行為 つなぐ:渋谷駅(2013)構内模型」も。複数の鉄道が乗り入れ、地下5階、地上3階という駅の複雑な構造は驚かされるばかり。背後の写真は西山芳一氏の撮影。

工事現場で汗を流す人々の姿もフォーカスされています。21_21 DESIGN SIGHTが土木のテーマで伝えたかったひとつに「支える人々の存在」がありましたが、西村氏も同じ想いを持ってくれていました。とりわけダイナミックな作品は、現在の渋谷の工事現場の音が奏でるラベルの「ボレロ」にあわせて、高度経済成長期に収録された映像と現在の渋谷の工事現場の映像が目にできる「土木オーケストラ」(ドローイングアンドマニュアル)。同じく私の心に響いたのは、溶接、舗装、開削等の作業をする人々の写真「土木現場で働く人たち」(株式会社 感電社+菊池茂夫)です。土木建築系総合カルチャーマガジン「BLUE'S MAGAZINE(ブルーズマガジン)」を知ることもできます。「人」という点では、スイス、ゴッタルドベーストンネルの完成の瞬間を記録した映像での、歓喜する人々の姿も心に残りました(「日本一・世界一」のコーナーで紹介)。

ダム建設で人工湖に沈んだものの、水位の低い季節に目にすることのできるコンクリートアーチ橋「タウシュベツ川橋梁」(北海道上土幌町)を始め、30年間土木写真家として活動する西山芳一氏が撮影したトンネルやダムの壮大さと美しさ。それらの写真を堪能できる展示空間(ギャラリー2)には、「つなぐ、ささえる、ほる、ためる」などのキーワードで、アーティストやデザイナーの作品が紹介されています。

砂を盛ったり掘る行為にあわせて等高線が現われる「ダイダラの砂場」(桐山孝司+桒原寿行)、来場者がダムの水をせき止める「土木の行為 ためる」(ヤックル株式会社)、ビニールのピースを積み上げてアーチ構造をつくる「土木の行為 つむ:ライト・アーチ・ボリューム」(403architecture [dajiba])等々、楽しみながら「土木の行為」を知る作品が揃っているのも「土木を身近に感じてほしい」という西村氏の想いゆえのこと。また、マンホールに入る体験ができる作品「人孔(ひとあな)」(設計領域)、左官職人の版築工法を手で触れながら鑑賞できる「土木の行為 つく:山」(公益社団法人 日本左官会議+職人社秀平組)など、実際の素材、工法を知ることのできる醍醐味も。

身体を使いながら鑑賞できるこれらの幅広い展示に、建築の専門家も関心を寄せています。そのひとり、南カリフォルニア建築大学の夏期プログラムで来日した学生を引率した建築史家の禅野靖司氏の言葉を引用しておきたいと思います。「土木の力を身体性とともに示していること、さらには土木を文化的な脈絡で見直し、専門外の人も好奇心を持って学び楽しむことができるフィールドとして紹介していた点が興味深い。安藤忠雄氏の建築の内部でこのテーマがとり上げられていることも、マテリアルと構造の不可分な関係を意識させ、学生たちには刺激的でした」

そして会場終盤、登場するのは骨太のメッセージです。関東大震災の復興事業の一環であり、近代都市東京のために情熱を注いだエンジニアの姿が伝わってくる永代橋設計圖。さらには、東日本大震災の復興事業の現場を、本展企画協力の内藤 廣氏はじめGSデザイン会議のメンバーが三陸を訪ねる「GS三陸視察2015 映像記録作品『GROUNDSCAPE』」(66分)。とてつもなく大きな存在である自然と私たち人間の関係について。「震災という非日常に備えながら日常を支えるのが「土木の哲学」と西村氏。「土木にはまだまだやるべきことがたくさんあり、考えなくてはいけないことが横たわっている」。自然とどう向き合うべきか。さらにはこれからの幸せとは何であるのか。西村氏が本展から発する深い問いです。

再び巨大駅の解体ドローイングに戻り、六甲山からの眺め、隅田川の景色の作品にもう一度向き合ってみました。巨大駅が滞ることなく機能し、こうした街の風景を「美しい」と感じつつ眺められるのも、身体のすみずみに血が巡っていくかのごとくメカニズムが熟考され、そのための技術も活かされているからこそ。また、ダイナミックで力強く、ひとの暮らしを思う実に繊細な配慮とともにあるのが土木の世界です。土木が生活を支えてきた歴史、支えられている現状を意識しながら、この先の生活のために大切なものとは何か、考えを巡らせることの重要性を実感せずにはいられません。

文:川上典李子
写真:木奥恵三

2016年7月1日より、台北の松山文創園區 五號倉庫にて、21_21 DESIGN SIGHT企画展 in 台北「単位展 — あれくらい それくらい どれくらい?」が開催中です。

旧たばこ工場を改装した会場では、21_21 DESIGN SIGHTで昨春開催した「単位展」を忠実に再現したほか、新たに台北で集めた品々で構成した「1から100のものさし」、台湾のデザイナーらが参加した「みんなのはかり」など、台北展独自の展示も。

会場入口には、21_21 DESIGN SIGHTのコンセプトやこれまでの活動を紹介するコーナーがあり、併設されたショップには、台北展にあわせて制作された新たなオリジナルグッズも加わり、連日多くのお客様で賑わっています。
会期は9月16日まで、会期中無休ですので、台北にお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。

Photo courtesy of INCEPTION CULTURAL & CREATIVE Co., Ltd.

2016年6月24日、いよいよ開幕となる企画展「土木展」の会場の様子をいちはやくお届けします。

道路や鉄道、携帯電話やインターネット、上下水道、災害に対する備えなど、私たちの日常生活に必要不可欠な土木。「土木展」は、生活環境を整えながら自然や土地の歴史と調和する土木のデザインについて考える展覧会です。

Photo: 木奥恵三

2016年6月24日(金)よりはじまる企画展「土木展」は、生活環境を整えながら自然や土地の歴史と調和する土木のデザインについて考える展覧会です。
本展に向けて、実際の「土木」を訪れたり、自らの手で「土木」のスケールを体感したりしながらすすめられたリサーチの様子を一部ご紹介します。

日本の高度経済成長期を支えた土木の工事現場と、現代の土木の工事現場の映像と音とを組み合わせたシンフォニーが、ギャラリー内の壁面いっぱいに繰り広げられる壮大な展示作品「土木オーケストラ」。2015年に21_21 DESIGN SIGHTで開催した企画展「動きのカガク展」にてディレクターを務めた、菱川勢一率いるドローイングアンドマニュアルによる作品です。


「土木オーケストラ」ドローイングアンドマニュアル

本作では、現代の土木の工事現場として、渋谷駅周辺再開発事業の様子を紹介しています。現在、新たにビル群を建設するために、河川の移動や駅通路の開設など、大掛かりな区画整理が行なわれている渋谷駅周辺。2016年3月、本作撮影のため、ドローイングアンドマニュアルが現場をリサーチしました。

当日は、渋谷駅街区土地区画整理事業共同施行者事務所に集合し、東京急行電鉄株式会社の担当の方とともに工事現場へ出発。渋谷駅近辺で行なわれている駅街区の工事、百貨店解体、銀座線改良工事の現場を仔細に見ながら、映像と音の素材を確認していきます。普段は仮囲いで中の様子を見ることのできない現場では、地中深くから、地上に位置する東京メトロ銀座線の線路下まで張り巡らされた土木のネットワークが行き渡っていました。

私たちが暮らす社会は、普段は目にする機会の少ない、土木に携わる人たちの地道な働きで成り立っています。「土木オーケストラ」では、土木の先人たちの努力が今日に至るまで脈々と受け継がれていることを、ダイナミックに体感することができます。どうぞご期待ください。

開催中の企画展「建築家 フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"」は、世界的に活躍する建築家 フランク・ゲーリーの「アイデア」に焦点をあて、アイデアが生まれる背景や完成までのプロセスを、数々の模型や、建築空間を体験できるプロジェクションを通して紹介しています。
ここでは本展技術監修を務める遠藤 豊による紹介映像で、会場の様子をご覧いただけます。

いよいよ明日開幕となる「建築家 フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"」。開催に先駆け、会場の様子をお届けします。

建築家 フランク・ゲーリーは、半世紀以上にわたり建築の慣習を覆し、世間の常識に挑戦する作品をつくり続けてきました。見る者を圧倒し印象に強く残り続ける、誰にも真似できない建築。本展では、ゲーリーの創造の原動力「アイデア」に焦点をあて、その思考と創造のプロセスを、新進の建築家 田根 剛をディレクターに迎えて紹介していきます。

会場には、アイデアが詰まった数々の模型をはじめ、建築を体感できるプロジェクション、書籍や映像等を数多く展示。ひとりの人間としてのゲーリーの姿に触れられる「ゲーリーの部屋」も登場します。自由に発想することの楽しさと挑戦し続ける勇気を与えてくれる展覧会にぜひ、足をお運びください。

Photo: 木奥恵三

2015年9月5日、「動きのカガク展」展覧会ディレクターの菱川勢一が、クリエイター集団ライゾマティクスの一員、真鍋大度を会場に迎え、トークイベントを開催しました。その活躍がともに国内外で高く評価される真鍋と菱川。ふたりを取り巻く「動き」をテーマに、これからの「ものづくり」について語り合いました。

メディアアーティストである真鍋と映像作家である菱川。トークは、ふたりの共通の関心事であった「音楽」から始まります。ミュージシャンである両親のもとに育ち、学生のころからDJとしても活躍している真鍋にとって音楽は身近なもの。会場スクリーンで今までの活動をたどっていくと、レーザーの動きを音に変換させるといった初期の試みから、真鍋の「聴覚と視覚の結びつき」への関心を伺うことができました。対する菱川も、「映像」への興味の発端が80年代のミュージックビデオに遡ると語ります。なめらかにつながる音に比べ、映像は1秒間に30コマが限界。映像を制作するにあたって、音と像のズレは悩みの種であるように話すものの、突き詰めていくと大変興味深い「音の魅力」を強調しました。

話題はそれぞれの最近の関心へと移っていきます。真鍋が取り上げたのは「ドローン」。ダンサーの動きを記録し、それをドローンにインストールすることで、人間とドローンのコラボレーションを可能にしたパフォーマンス作品でも知られているライゾマティクスでありますが、真鍋はそこに次なる可能性「人工知能」を組み込んでみたいと話しました。扱う数が増えれば増えるほどその設定に手間がかかるというドローン。それぞれに人工知能を植え付け独自に判断ができるようにさせることで、実現できるアイデアは大きく広がると考えます。
対して菱川が取り上げたのは「宇宙」。本展でも多くの作品がテーマとして扱う「重力」をはじめ、地球の「当たり前」が通用しない空間において、自分ならどんな作品をつくることができるだろうか。知識は持っていても実態を知り得ない「宇宙」こそを表現するフィールドとして究極目標にしたいと、菱川は熱く語りました。

「動きのカガク」に触れることができるのは本展会場だけに限られません。例えば映像制作の現場には、人が住むことのできるような家をたった数日間で建てることができる建設技術があると菱川は話します。一般にはあまり知られないこの技術を社会福祉に利用したらどうだろう。真鍋が自らの作品に利用してみたいと述べた「宇宙開発」や「医療」に関する技術に至っても、その技術の利用を限られた業界から解き放てるとしたらそこには大きな可能性が広がるという。同様に、メディア・アートの世界で見出された技術も、アートの枠組みを超えて社会に役立てることができるかもしれない。ふたりの会話は弾みます。

真鍋と菱川はともに「組み合わせる」ことができる人は、結果的に「新しいものを生み出す」ことができると結論づけました。身の回りにあるそれぞれ違ったものを、同じ文脈に並べてみると、そこにははじめて見えてくるものがあります。身の回りの情報にアンテナを張り続け、興味を持ったものに常に全力を注ぐ真鍋と菱川。彼らの好奇心ははかりしれません。「ものづくり」のこれからは、そんな好奇心にかかっているのかもしれません。

企画展「動きのカガク展」では、身近な材料と道具でつくられたシンプルな仕組みから最先端のプログラミング技術まで、様々な力によって「動く」作品が、その機構の解説とともに紹介されています。
この連載では、本展企画協力 ドミニク・チェンがそれぞれの作品が見せる「生きている動き」に注目しながら、展覧会の楽しみ方をご提案します。


「動きのカガク展」ポスター(アートディレクション&デザイン 古平正義)

「人間は動き、変化しているものしか知覚できない」。これは生物が物理環境のなかで生存に役立てる情報を能動的に探索する仕組みを説いたアフォーダンス理論で知られる生態心理学を開拓したジェームズ・J・ギブソンの言葉ですが、これは僕たち人間がどのように世界を体験するように進化してきたかを知るための基本的な条件として理解できます。同じく、文化人類学者にしてサイバネティクス(生物と無生物に共通する生命的なプロセスの仕組みの解明を行なう学問)の研究者でもあったベイトソンによる、情報とは「差異を生む差異である」という表現を重ねあわせると、動きこそが違いを生み出す源泉であると解釈することができます。

生物の世界でも、たとえば樹の枝のような身体を持つに至った昆虫が天敵から身を守る時には動きを止めて背景と化すことを擬態といいますが、そのことによって情報を周囲に発信させない、いいかえると「生きていない」という情報を偽装しているわけです。生物としての私たちは「生きているか死んでいるか」ということにとても敏感なセンサーを持っているといえます。このセンサーを通して、私たちは「自分で動いているもの」と「別のものによって動かされているもの」を区別することもできます。このセンサーはとても優秀で、物理的な物体以外のことに対しても機能します。

「動きのカガク展」に集まったデザインからアート、産業から工学研究までに及ぶ作品の数々は、その制作方法から表現方法まで多種多様であり、安易に分類することは難しいでしょう。それでもその全てに通底する一本の軸があるとすれば、それは「生きている動き」を見せてくれる、という点が挙げられます。

考えてみると不思議です。人がつくった仕組みや動きになぜ「生きている」感覚が宿るのか。それはここで展示されている作品が何らかの方法で物理的な法則や生物の規則に「乗っかっている」からです。


上:『アトムズ』岸 遼
下左:『メトログラム3D』小井 仁(博報堂アイ・スタジオ/HACKist)
下右:『水玉であそぶ』アトリエオモヤ

水面の表面張力を指で感じられる『水玉であそぶ』(アトリエオモヤ)は水という身近な存在がアメーバのように離れたり合わさったり美しさを再発見させてくれるし、たくさんの発泡スチロールのボールを宙に浮かせる『アトムズ』(岸 遼)は100円ショップで売っているふきあげ玉のおもちゃと同じベルヌーイの定理を機械的に使って、私たちの身体を常に包囲している空気というものの動き方の不思議さを改めて見せてくれます。寝室のカーテンに差し込む夕暮れの陽光のようなシンプルだけど目を奪われる光の動きをつくる『レイヤー・オブ・エア』(沼倉真理)や様々な形の反射を見せる『リフレクション・イン・ザ・スカルプチャー』(生永麻衣+安住仁史)、布が静かに宙を舞い降りる『そして、舞う』(鈴木太朗)も日々の生活のなかで見つけることのできる光や重力の微細な美しさに気づかせてくれます。他方で、都市というマクロなスケールに視点を移せば、東京メトロの運行情報データを基に地下鉄の動きをまるで人体の血流図のように見せる『メトログラム3D』(小井 仁)から、生物のように脈打つ東京という大都市のダイナミズムをリアルに感じることができるでしょう。

この展覧会が生き生きとした動きに溢れているのは、映像作品『もしもりんご』(ドローイングアンドマニュアル)が見事に見せてくれるように、実写のリンゴに虚構の動きを与えることで、まるでりんごがハエのように飛んでいると感じられるし、ガラスのように木っ端微塵に割れたと感じられる、私たちの感覚のある種のいい加減さに拠っているといえるでしょう。同様に『森のゾートロープ』と『ストロボの雨をあるく』(共にパンタグラフ)は、回転スリットや絵柄のプリントされた傘を手にとって動かすことで、アニメーションという日常的の至るところで見ている表現方法が私たちの眼の解像度の限界に起因していることを身体的に再認識させてくれます。


左:『もしもりんご』ドローイングアンドマニュアル
右:『ストロボの雨をあるく』パンタグラフ

本当に生きているからそのように見えるのではなく、生きているように私たちが感じるから、そう見える。『ISSEY MIYAKE A-POC INSIDE』と『ballet rotoscope』(共に佐藤雅彦+ユーフラテス)は実際の映像と切り離された人間の動きの特徴点を抽出して、観察させてくれます。こうした動きをゲームや映画のCGでモデリングされたキャラクターに付与すれば、まるで生きている本物の人間のように感じるでしょう。


上左:『124のdcモーター、コットンボール、53×53×53センチのダンボール箱』ジモウン
上右:『ISSEY MIYAKE A-POC INSIDE』佐藤雅彦+ユーフラテス
下:『シックスティー・エイト』ニルズ・フェルカー

非生物が生物のように感じられる別の例として、まるで違う惑星の昆虫が密生する峡谷にいるかのような感覚を生んでいる『124のdcモーター、コットンボール、53×53×53センチのダンボール箱』(ジモウン)と、空気で伸縮する巨大な異生物のような『シックスティー・エイト』(ニルズ・フェルカー)、こちらの手の動きを模倣するように回転し続ける巨大な植物のような『動くとのこる。のこると動く。』(藤元翔平)を見ていると、私たちはこの世に存在しない生命の動きをも現出させることができることに気づかせてくれます。また、手元の取っ手の回転運動が目の前の球体の上下運動に変換される『プロジェクト・モーション/サイクル』(東北工業大学 クリエイティブデザイン科 鹿野研究室)も、まるで別の巨きな身体を動かしているような不思議な感覚を生み出しています。


『ロスト #13』クワクボリョウタ

本展には身体的な感覚と共に、複雑な情感を生んでくれる作品も展示されています。来場者が書いた文字をアルゴリズムが分解して再構築した形をロボットが壁面に描き続ける『セミセンスレス・ドローイング・モジュールズ #2(SDM2) - レターズ』(菅野 創+やんツー)は、計算機が意味を解釈する必要なく作動し続けられることをまざまざと見せつけてくれ、私たち人間と人工知能の「知性」の働きの違いについて考えさせられます。高みに立って好きな方向に指をさすと三角錐の頭が一斉に同じほうを向き、しばらくすると反抗してバラバラな向きを見る『統治の丘』(ユークリッド【佐藤雅彦+桐山孝司】)は人間社会の流れに身を委ねるような動き方に対するクールな皮肉に溢れています。そして、光源となる小さな電車が様々な風景の「影像」を壁に映しながら進む『ロスト #13』(クワクボリョウタ)を見ていると、私たちそれぞれが過去に通り過ぎてきた無数の風景に対する懐かしさと、未だ見ぬ光景への憧憬が混然一体となったような感情が生起されます。動きとは物質的な事柄だけを指すのではなく、私たちの心もまた揺れ動きながら変化する対象であるということを改めて想わせてくれます。

この展示に込められたもう一つの大切なメッセージは、こうした動きを自分たちでつくってみることへの誘いです。文章や詩、音楽というものは、ただ読んだり聞いたりするだけではなく、同時に自分たちで書いてみることによって、より豊かな味わいを楽しめるようになります。それは何千年と続いてきた人間の表現するという営為の根底に流れる原理だといえるでしょう。

そのためにも、本展では有孔ボードの作品パネルに、各作品をつくるための道具や素材、そしてどのような原理で動いているのかということを示す解説映像、そして展示ディレクターの菱川勢一がその作品にどうして感動したのかという感想のメモ書きが貼ってあります。これはなるべくつくり手と鑑賞者との境界を取り払い、あなたもぜひつくってみてください、という招待を意味しています。

考えてみれば、現代はインターネットを通じて様々なものづくりのノウハウや方法を知ることができるし、コンピュータを使った表現を学ぶこともますます簡単になってきている、非常に面白い時代だといえます。映像でも物理的な装置でもアルゴリズムでも、手を動かしてみることですぐに覚えられて、仲間と共同しながら社会に面白い表現をぶつけることができます。「学校の図工室」という裏テーマが付された本展を体験して、未来のデザイナー、エンジニアやアーティストとなる老若男女の衝動に少しでも火が点り、家に帰った後にもその火を絶やさず、未知の動きを生み出してくれることに今からワクワクしています。

文:ドミニク・チェン(情報学研究者/IT起業家)
会場風景写真:木奥恵三

開催中の企画展「動きのカガク展」展覧会ディレクター 菱川勢一率いるドローイングマニュアルによる展覧会紹介映像が、東京ミッドタウン館内で放映されています。
「つくることは決してブラックボックスになってはいけない」という菱川勢一のメッセージ通り、21_21 DESIGN SIGHT館内で参加作家たちが作品設置をしている様子をご覧いただけます。

また、展覧会場内では、同じくドローイングアンドマニュアルが制作した『動きのカガク展 ドキュメント映像』で、展覧会企画の制作プロセスも紹介しています。
ぜひお楽しみください。

2015年7月4日、企画展「動きのカガク展」企画協力 ドミニク・チェン、参加作家より鹿野 護(WOW)、菅野 創+やんツー、岸 遼が登壇し、トーク「クリエイションとテクノロジー」を開催しました。

まず、ドミニク・チェンが、展覧会ディレクター 菱川勢一が本展企画初期から繰り返し強調してきた「つくることをブラックボックスにせず、オープンにしたい」というメッセージを紹介すると、3組の作家がそれぞれ、本展展示作品に至るまでの制作過程や自身のクリエイションをその裏側まで語りました。

自身にとって、クリエイションとは人がそのものに興味をもつきっかけとなるような「違和感のある現象」をつくり出すことであり、テクノロジーはそれを実現するための手段であると岸。
続く鹿野は、普段の自身の活動とは違いデジタル・テクノロジーに頼らない素朴な機構による本展展示作品に、東北工業大学の有志の学生と取り組んだ記録を紹介。
菅野 創+やんツーは、無作為に線を描く「SENSELESS DRAWING BOT」に始まり、展示環境や鑑賞者の手書き文字を再構成して線を描く本展展示作品「SEMI-SENSELESS DRAWING MODULES」にたどり着くまでを紹介しました。

会はフリートークに移り、作品と鑑賞者の関係性について菅野 創+やんツーが、反応や展開が予測できる作品ではなく偶然性を重視した作品を制作したいと述べると、岸も、鑑賞者の反応を期待してつくりはじめる自身の方法を更新してみたいと同意しました。鹿野は、モーション・グラフィックの表現において動きを自然に見せるために加えられる様々な工夫が、実際に物体が動くときには、その環境や偶発する要素の中に元々備わっていることに改めて気づいたと語りました。

来場者からの質疑応答では、3組の作家へクリエイションへの初期衝動を問われると、菅野 創+やんツーは、現在取り組んでいる人工知能にクリエイションを実装する試みとしての三部作を紹介。本展展示作品がその第二部であることを説明しました。続いて鹿野は、日常に潜んでいる不思議な現象を自身を含めた人間がどのように認識するのかということに興味があると語りました。岸は、効率化、画一化された「常識的なもの」を疑う自身の視点を述べると、それらを問い直してつくり直すことが自身の衝動であると答えました。

最後に、会場を訪れトークの様子を見守っていた菱川勢一が、登壇者を含めた本展参加作家はいずれも、身近なことに疑問を抱き追求し続ける勇敢な人々であると述べ、日常と地続きにあるその勇敢さを、ぜひ来場者にも持ってもらえればと締めくくりました。

2015年6月19日より開催となる企画展「動きのカガク展」は、「動き」がもたらす表現力に触れ、観察し、その構造を理解し体験することで、ものづくりの楽しさを感じ、科学技術の発展とデザインの関係を改めて考える展覧会です。
本展ディレクターを務めるクリエイティブディレクター 菱川勢一が展覧会に込めた思いを、本展企画協力のドミニク・チェンによるインタビューを通じて紹介します。


「動きのカガク展」ドキュメント映像より(制作:ドローイングアンドマニュアル)

― 今回の展示を企画された動機について色々と伺っていきたいと思います。この展示ではデザイナーとアーティストの双方がフィーチャーされていますが、この点について意識されていることはありましたか?

デザインとアートを分ける必要はないと思っています。一般的にデザイナーは社会やビジネスとつながっていて、アーティストは自分の感覚で勝負しているとされていますが、その二つはすでに混ざり合っています。例えばブランドデザインなどでは、アートはビジネスの世界にすでに取り込まれている。一方で、デザインの世界は凝り固まっていると感じます。社会性や様々なルールに縛られている、というか。昨今のデザイナーはもっと自由に振舞ってもいいのではないかと思います。
先日「子供達は将来何になりたいか?」という未来の職業人気ランキングをインターネットで見ましたが、デザイナーやアーティストといった職業は30位にも入っていません。本来はスポーツ選手や医者などと並ぶメジャーな職業になってもいいはずです。
私がこの展覧会に込めたのは、シンプルにものをつくる面白さを感じて欲しい、という思いです。アーティストだけどデザインの仕事をしていたり、産業の世界にリーチすることを意識しているアーティストがいたりと、分類不能な人が増えた一方、他方で肩書きに縛られて活動している人たちも多いと感じます。この展覧会に来る人たちにはもっと自由な感覚を掴んで欲しいと思います。

― なるほど。既存の枠組みや分類に縛られずに、とりあえず手を動かしたくなるという衝動を生み出すことがこの展示の目的だと言えるでしょうか。

そうですね。それは何と呼ぶのかわからない、簡単に掴めそうもない感覚です。けれど直感的に面白いと思えるものは、ものをつくる過程の中に確かにあります。特に次世代を担う人たちである学生や子供たちに展覧会を体験してもらって、そのことを感覚的に掴んでもらえればひとつのムーブメントにつながると考えています。だから来場者には展示されている作品を「参考作品」として観てもらいたい。参加している企業にもいろいろと秘密はあるかもしれませんが、そこもオープンにしてもらえたら嬉しいですね(笑)。イメージとしては先輩たちの作品が置いてある学校の図工室みたいな。だから展示だけでなくトークイベント、ワークショップやギャラリーツアーなどを通して「つくる」空気を伝えたいですね。


NTTドコモ WebAD "森の木琴" / NTT DoCoMo "XYLOPHONE"

― 今回は作品を展示するだけでなく、それぞれの制作プロセスや原理の解説を試みていますが、そこにはどういう思いがありますか?

僕も受賞したことのあるカンヌ国際広告祭の「フィルム・クラフト」部門は審査員が全員クリエイターなんです。その部門の受賞作品にアレックス・ローマンの『Third and the Seventh』という非常に面白い映像作品があります。
この映像はGoogle Sketch Up(注:誰でも無償でダウンロードして利用できる3Dモデリングツール)のオープンライブラリから他人がつくったモデルをダウンロードしてきて、それをカスタマイズしてつくった全編フルCG映像なんです。そして自らの編集過程、つまりどうやってつくったかというプロセスを動画にして公開している。
つまりこの作品はオープンにシェアされたものを使って、自分自身の作業もオープンにシェアしながつくられたものです。僕はこれは素晴らしいことだと思いました。
ここには一人で全てつくるのではなくインターネットを通してつながっているみんながひとつのチームだという認識があります。知識やコンテンツは世界中に溢れているけれど、本当に大事なのはそういった素材をいかに料理するか、ということだと思います。つくることは決してブラックボックスになってはいけない。この点は子どもたちだけでなく、展覧会に来る全ての人に伝えたいですね。

後編へつづく

インタビュアー:ドミニク・チェン

開催中の企画展「単位展 ― あれくらい それくらい どれくらい?」展示作品より、「Giraffe's Eye」の参加作家の一人、岡田憲一(LENS)による映像が、東京ミッドタウン内にて期間限定で放映されています。ぜひご覧ください。

開催中の企画展「単位展 ― あれくらい それくらい どれくらい?」展示作品より、「1秒の世界」の参加作家の一人、岡崎智弘による映像が、東京ミッドタウン内にて期間限定で放映されています。
展覧会期中には、他の参加作家による予告映像の放映も予定しています。ぜひご覧ください。

開催中の企画展「単位展 ― あれくらい それくらい どれくらい?」展示作品より、「速さの比較:マッハ1ってどれくらい?」の構成を担当した菅 俊一による映像が、東京ミッドタウン内にて期間限定で放映されています。
展覧会期中には、他の参加作家による予告映像の放映も予定しています。ぜひご覧ください。

2015年5月9日、「単位展」参加作家であり、アートディレクターの岡崎智弘と、一般社団法人Think the Earthの上田壮一によるトーク「1秒の世界」を開催しました。

本展企画進行の前村達也が、展覧会のリサーチ初期、1秒間に起こる世界の事象がつづられた書籍『1秒の世界』と出会い、遊びの要素を取り入れながらも社会的なテーマに基づいたコンテンツを展示したいと考えたことから、著者の上田にコンタクトし、また、岡崎に参加を呼びかけた経緯を語りました。

「エコロジーとエコノミーの共存」をテーマに、地球の大切さを世界に繋げる活動を行なっている上田が属するNPO、Think the Earthと、NHK エデュケーショナルのテレビ番組「デザインあ」の「解散!」で知られる岡崎。両者の活動に触れたのち、岡崎の作風であるコマ撮り映像の緻密さが1秒の世界に組み込まれてゆくプロセスが語られました。
書籍『1秒の世界』における環境、経済、社会の大きな変化量に驚いたという岡崎は、1秒間に15コマの映像を作成。その中に時折日常の動きとは違う要素を途中で足していったというプロセスは、「1秒というものをセンシティブに見ることに繋がった」と述べました。

最後には、二人がお互いの質問に応え合う形式となり、各々の「1秒の世界」に対する想いや、気持ちの切り替えの瞬間を秒数で判断することの難しさ、見えない時間の話などとトークは弾みました。

いよいよ明日開幕となる「単位展 ― あれくらい それくらい どれくらい?」。
会場の様子を、いちはやくお届けします。

単位で遊ぶと世界は楽しくなる。単位を知るとデザインはもっと面白くなる。
単位というフィルターを通して、私たちが普段何気なく過ごしている日常の見方を変え、新たな気づきと創造性をもたらす展覧会です。

また、会場1階スペースを、単位にまつわるショップとして無料開放します。展覧会とあわせて、ぜひお楽しみください。

写真:木奥恵三

現在好評開催中の「活動のデザイン展」より、展示作品の一部を映像で紹介します。実際の作品を、21_21 DESIGN SIGHTでぜひお楽しみください。

アトリエ ホコ「フィックスパーツ」


企画展「活動のデザイン展」会場風景/撮影:吉村昌也

「修復と改良」を奨励し、人々の身の周りの問題を解決していく「フィックスパーツ」プロジェクト。会場では、国内外6組による新作を実物と映像でご紹介しています。

牛込陽介 「プロフェッショナル・シェアリング:シェアの達人」

Professional Sharing from Yosuke Ushigome on Vimeo.


企画展「活動のデザイン展」会場風景/撮影:吉村昌也

シェアリング・エコノミー(共有型経済)の発展により、個人のあらゆるリソースを売買できる世界を想定し、「シェア」を生業とするプロ・シェアラーの姿を通して、今日喧伝されている「シェア」の概念に問いを発します。

>>Vol.1へ
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現在開催中の企画展「活動のデザイン展」が、イタリアのウェブサイトdomus、日本のウェブサイトJDNに紹介されました。

>>domus "The Fab Mind"

>>JDN 「World Report / 21_21 DESIGN SIGHT 企画展『活動のデザイン展』」

現在好評開催中の「活動のデザイン展」より、展示作品の一部を映像で紹介します。実際の作品を、21_21 DESIGN SIGHTでぜひお楽しみください。

マスード・ハッサーニ 「マイン・カフォン」

Callum Cooper, Massoud Hassani and Mahmud Hassani


企画展「活動のデザイン展」会場風景/撮影:吉村昌也

幼少時代の体験をもとにつくられた地雷撤去装置。発想の源になったペーパー・トイや、制作背景の映像も展示しています。

アルマ望遠鏡プロジェクト/ 国立天文台+PARTY+Qosmo+エピファニーワークス
「ALMA MUSIC BOX: 死にゆく星の旋律」


企画展「活動のデザイン展」会場風景/撮影:吉村昌也

南米チリに展開する「アルマ望遠鏡」が捉えた観測データをもとにつくられたオルゴール。死にゆく星「ちょうこくしつ座R星」の70の物語を、音と映像で、日替わりでお楽しみいただけます。

>>Vol.1へ
>>Vol.3へ

2014年12月6日、「天文学とデザイン――『星の旋律』を聞くプロジェクト」を開催しました。

はじめに、国立天文台チリ観測所の平松正顕がアルマ望遠鏡について解説。光ではなく、目に見えない電波を通して宇宙や星のデータを観測するアルマ望遠鏡は、世界22ヶ国の国際協力プロジェクトとして、南米チリの標高5000mの場所に設置されています。

続いて、ともに宇宙好きというPARTYの川村真司とQosmoの澤井妙治が、データを生かし、人の五感や感情に訴える作品づくりについて語りました。川村は、円形に靄がかかったデータを忠実にオルゴールのかたちに落とし込むという考え方、澤井は、感情がわきあがるような余白のある音の制作について紹介しました。二人は、オルゴールを解体して構造を学んだことや、回転スピードのシュミレーションを重ねたこと、そしてアクリルのディスクをレーザーカッターで手づくりしたプロセスについて説明しました。

今回の作品のモチーフとなったのは、「ちょうこくしつ座R星」。天文学者の役割とは宇宙や星の物語を描ききることだと語る平松に、川村と澤井は、ぜひオルゴールをアルマ望遠鏡のあるチリに持っていきたいと応じました。

現在好評開催中の「活動のデザイン展」より、展示作品の一部を映像で紹介します。実際の作品を、21_21 DESIGN SIGHTでぜひお楽しみください。

DNAシャロアー&クリスティン・メンデルツマ/ヴァンスファッペン
「ロースさんのセーター」


企画展「活動のデザイン展」会場風景/撮影:吉村昌也

一人のオランダ人女性によって編み続けられた500枚以上のセーターのうち、60枚を展示。すべてのセーターを記録したクリスティン・メンデルツマデザインの本の全ページもご覧いただけます。

スタジオ スワイン 「カン・シティ」


企画展「活動のデザイン展」会場風景/撮影:吉村昌也

アルミ缶や屋台の廃油など、ブラジルにある廃材だけを使ってつくられた椅子。ものづくりのサイクルを考察した作品です。

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2014年11月8日、takram design engineeringの田川欣哉と渡邉康太郎、Kaz米田、牛込陽介によるトーク「未来をクリティカルに問う活動」を開催しました。

ロンドンを拠点にデザイナーとテクノロジストとして活動する牛込は、自身が発表してきた作品がメディアアートの枠組みで評価されることに疑問を持ち、テクノロジーの視点から生活や社会に影響を与えたいとクリティカルデザインを学びました。今回の展示作品「ドローンの巣」と「シェアの達人」をはじめ空想と思索から生まれる世界観そのものをデザインして提示する作品について解説しながら、思い込みを覆し、外の世界に一歩踏み出すアプローチの大切さを語りました。

takram design engineeringの渡邉は、これまでの作品を振り返りながら、思考の枠組みの持ち方の重要性について語りました。Kaz米田は、100年後の荒廃した世界における人間と水との関係を問い直すことから生まれた展示作品「Shenu:百年後の水筒」について、田川は、乾燥地帯に生息する動物の臓器の仕組みの研究から生まれた人工臓器について語りました。

問題解決以前の問題発見に重点を置き、社会と人間の関係を問い続けることでイノベーションの種を見つける、そんな新しい時代のデザインの態度について語り合うトークとなりました。

いよいよ開幕を明日に控えた「活動のデザイン展」。変動する世界における未来へのヒントに満ちた会場の様子を、いちはやくお届けします。

展覧会ディレクターの川上典李子と横山いくこによるギャラリーツアーを開催します。参加作家の特別参加も予定。ぜひご来場ください!

展覧会ディレクターによるギャラリーツアー

日時:11月1日(土)・2日(日)16:00-17:00、3日(月祝)14:00-15:00
場所:21_21 DESIGN SIGHT
>>詳細はこちら

撮影:吉村昌也

2014年10月24日より開催される「活動のデザイン展」。変動する世界における未来へのヒントに満ちた本展から、展示作品の一部をご紹介します。


マスード・ハッサーニ 「マイン・カフォン」

「マイン・カフォン」

マスード・ハッサーニ

アフガニスタン出身で、現在はオランダに拠点を置く作家の、幼少時代の体験をもとにつくられた地雷撤去装置。発想の源になったペーパー・トイや、制作背景の映像も展示します。


マスード・ハッサーニ 「マイン・カフォン」

マスード・ハッサーニ「マイン・カフォン」(Photo: Rene van der Hulst)

マスード・ハッサーニ Massoud Hassani:
1983年にアフガニスタンで生まれ1998年にオランダに移住。9歳の頃に溶接技術を学び、自動車整備工として働いた経験を持つ。オランダに移住後、「プロダクトデザイナー」という職業を知り、アイントホーフェン・デザイン・アカデミーに入学。新しいライフスタイルと文化的習慣を身につけた彼は2つの文化の懸け橋となるものを模索することに研究の重点を置いた。2011年に卒業し、現在はアイントホーフェンにある自身のスタジオで、兄のマフムード・ハッサーニ(Mahmud Hassani)と仕事をしている。
http://massoudhassani.blogspot.jp

マスード・ハッサーニがトークに出演します。

「イーヴォ・ファン・デン・バールとマスード・ハッサーニによるトーク」

日時:11月1日(土)14:00-15:30
場所:21_21 DESIGN SIGHT
>>詳細はこちら

>>「活動のデザイン展」展示作品紹介一覧を見る

2014年10月24日より開催される「活動のデザイン展」。変動する世界における未来へのヒントに満ちた本展から、展示作品の一部をご紹介します。


Humans Since 1982「ア・ミリオン・タイムズ」(Photo: Tim Meier)

「ア・ミリオン・タイムズ」

Humans Since 1982

384個の時計が並んだ作品。プログラミングされた針は、規則的な動きの中から言葉や数字を紡ぎだします。

Humans Since 1982(ヒューマンズ シンス 1982):
1982年スウェーデン生まれのペール・エマニュエルソン(Per Emanuelsson)とドイツ生まれのバスティアン・ビショッフ(Bastian Bischoff)が、2008年、ヨーテボリ大学デザイン工芸学部(HDK)の修士課程在学中にスタジオを設立。2010年より活動拠点をストックホルムに置く。クライアントにはアートコレクターの他、スイスの国際時計博物館、ゴールドマン・サックス、フェンディ、ナイキなど。作品はロンドン、ニューヨーク、パリ、ミラノ、ブリュッセル、ストックホルム、ソウル、ニューデリー、北京などの美術館やギャラリー等で展示されている。
http://www.humanssince1982.com

Humans Since 1982がトークに出演します。

オープニング・デザイナー・リレートーク「活動のデザイン」

日時:10月25日(土)14:00-16:00
場所:21_21 DESIGN SIGHT
>>詳細はこちら


大西麻貴+百田有希/o + h「望遠鏡 のおばけ」

「望遠鏡のおばけ」

大西麻貴+百田有希/o + h

望遠鏡を使った、視点を変える装置。新たな発見と驚きを与える作品です。

大西麻貴+百田有希/o + h:
大西麻貴は1983年生まれ。2006年京都大学建築学科卒業。2008年東京大学大学院修士課程修了。百田有希は1982年生まれ。2006年京都大学建築学科卒業。2008年同大学大学院修士課程修了。2008年より、大西麻貴+百田有希/o + hを共同主宰。建築設計を中心に、インスタレーションやまちづくりまで様々な活動に取り組む。主な作品に「二重螺旋の家」(2011年)、「さとうみステーション」(2013年)等。SDレビュー2007鹿島賞、2012年新建築賞等受賞多数。
http://onishihyakuda.jp

大西麻貴+百田有希/o + hの「視点を変えるイス」が、東京ミッドタウンの芝生広場に登場します。

デザインタッチ2014「スワリの森」

日時:2014年10月17日(金)- 11月3日(月祝)11:00-18:00 ※雨天中止
場所:ミッドタウン・ガーデン 芝生広場
>>詳細はこちら


織咲 誠「Line Works - 線の引き方次第で、世界が変わる」

「Line Works - 線の引き方次第で、世界が変わる」

織咲 誠

「線の引き方」に着目して継続されているリサーチを、約40事例紹介します。

織咲 誠 Makoto Orisaki:
インターデザインアーティスト。「自然力を取り込む知恵」の思索を行い、「物質量やコストに頼らない」利を得るクリエイティブの提唱と実践をしている。思想の形は世界で特許登録され、製品として世に出つつある。展覧会に「瀬戸内国際芸術祭 2013」(小豆島)、2007年「ニュービジョン・埼玉 III──7つの目 × 7つの作法」展(埼玉県立近代美術館)、2005年「BRAUN展」、2004年「FILING展」、1998年「Hole Works」個展(英国ハビタ)など。2002年「ファイル展」企画・構成およびディレクション、2012年「DESIGNTIDE TOKYO 2012」会場構成・制作。「URBANART#1」 大賞および審査員賞、「第14回桑沢賞」等受賞。


織咲 誠がトークに出演します。

「織咲 誠と谷尻 誠によるトーク」

日時:11月29日(土)14:00-15:30
場所:21_21 DESIGN SIGHT

>>「活動のデザイン展」展示作品紹介一覧を見る

2014年10月24日より開催される「活動のデザイン展」。変動する世界における未来へのヒントに満ちた本展から、展示作品の一部をご紹介します。

「ロースさんのセーター」

DNA Charlois(ディーエヌエー シャロアー)&クリスティン・メンデルツマ/Wandschappen(ヴァンスファッペン)

展覧会ポスターのビジュアルにもなっている、「ロースさんのセーター」。
一人のオランダ人女性によって編み続けられた500枚以上のセーターのうち、60枚を展示します。また、これまでの全セーターを記録したクリスティン・メンデルツマデザインの本とあわせて販売し、プロジェクトの映像も紹介します。


DNA Charlois &クリスティン・メンデルツマ/Wandschappen「ロースさんのセーター」(Photo: Joop Reijngoud)

DNA Charlois &クリスティン・メンデルツマ/Wandschappen「ロースさんのセーター」(Photo: Joop Reijngoud)

DNA Charlois(ディーエヌエー シャロアー)/ Wandschappen(ヴァンスファッペン):
ニコル・ドリエッセン(Nicole Driessens)とイーヴォ・ファン・デン・バール(Ivo van den Baar)は、ビジュアルアーティストで、1999年にアートとデザインの制作会社 Wandschappenを設立。以来、多岐にわたるアート作品、デザイン製品、そして地元ロッテルダム市シャロワーに密着したプロジェクトを手掛けている。そのほか、マルセル・ワンダース、クリスティン・メンデルツマ、ヘラ・ヨンゲリウスといったデザイナーのために、プロトタイプの開発や制作を行っている。
www.wandschappen.nl www.dnacharlois.nl

クリスティン・メンデルツマ Christien Meindertsma:
メンデルツマはデザイナーとして製品と原材料の生涯を追い続ける。最初の本『Checked Baggage』(2004年)に続き、受賞 2作目の本『PIG 05049』(2007年)は、「05049」と呼ばれる名もないブタの様々な部分を原料に驚くほど多くの製品ができることを写真で一挙に集めたものだ。彼女の作品はこれまでに、ニューヨーク近代美術館(ニューヨーク)、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(ロンドン)、クーパー・ヒューイット国立デザイン博物館(ニューヨーク)で展示された。アイントホーフェン・デザイン・アカデミーを2003年に卒業。
http://www.christienmeindertsma.com

Wandschappenのイーヴォ・ファン・デン・バールがトークに出演します。

「イーヴォ・ファン・デン・バールとマスード・ハッサーニによるトーク」

日時:11月1日(土)14:00-15:30
場所:21_21 DESIGN SIGHT
>>詳細はこちら

>>「活動のデザイン展」展示作品紹介一覧を見る

ジャン=ポール・グードの新作インスタレーションで音楽を担当したのが三宅 純。ジャズトランぺッターとして活動を開始し、1980年代より数々のCM音楽の作曲、2000年代以降はピナ・バウシュやフィリップ・ドゥクフレといった振付家の舞踏作品、またヴィム・ヴェンダースや大友克洋の映像作品に参加するなど、ジャンルを横断しながら生まれるサウンドの独自の響きが国際的に高い評価を受けている音楽家だ。2005年に拠点をパリに移したとき、最もコラボレーションをしてみたいと考えた作家のひとりがジャン=ポール・グードだった。そして初対面のとき、「ふたりとも丈の短いパンツだったからすぐに友だちになれたんですよ」と笑う。

「国境が地続きでいくつかの国と接していて、色々な場所に近くて移動しやすく、コラボレーションをしたいアーティストたちがたくさん通過する世界の"ハブ"のような街がいい」と考え、2005年に三宅 純はパリを拠点に選んだ。パリに移るとすぐに、思いがけずもグードから舞台作品の音楽をつくってもらえないかと相談を受けた。「彼にまつわる3人のミューズの舞台作品をつくりたい、と相談を受けたのが最初の出会いです。その作品は結局実現しなかったのですが、それ以来、彼に広告音楽を頼まれたり、私がアルバムジャケットのデザインをお願いしたり、ギャラリー・ラファイエットの広告に私が出たり、色々と交流があって、3年ほど前に今回のインスタレーションの話が出ました」
パリの装飾美術館で回顧展を終えたグードは、そこに展示したファリーダをモデルとする巨大な立体作品を動くインスタレーションにしたいと考え、三宅に相談をした。三面鏡のような装置を前にして回転するフィギュアが、無限にその像を増殖させていくようなアイデアなどをグードが語り、三宅はイメージを膨らませた。そして、ふとした雑談の内容が、最も三宅をインスパイアしたという。
「ジャン=ポールがファリーダと付き合っていたときに、一緒に飛行機に乗ってアラビア文字が書かれた彼女の写真を見ていたら、"私の父親はモロッコの音楽界の重鎮なんだ"と、隣の乗客が話しかけてきたそうなんです。その人はユダヤ系だったようで、"お前はワルツというものを知っているか? あれはユダヤ人がつくったんだぞ"という話を始めたのだと。ユダヤの民族はいろんな国に居住しているので、いろんな音楽のスタイルにあわせて変化しながら独自の表現をつくる、非常に音楽的才能のある人たちだと私は常々思っていて、ジャン=ポールの話を自然なこととして納得しました。単なる雑談のひとつだったんですが、それをきっかけに私はその歴史の流れを感じられるような音楽をイメージしました。ワルツが発展していった過程、もしくは、血が混じっていった過程を音楽にしたらどうかなと思ったのが最初だったのです」

ジャズトランぺッターとして活動を始めた三宅は、やがて、作曲家としてジャズの領域に留まらない活躍を続けることになる。「ジャズの場合はテーマがあってアドリブをするけど、他の人がソロ演奏をしているときに暇なんですよ」と冗談めいた話から、作曲活動のきっかけを語る。
「最初はトランペットを吹くことがモチベーションだったわけですが、ライブを続けるうちに、サウンド全体への興味が大きくなりました。それが高じて色々な曲を書くようになったんですが、トランペットだとジャズというカテゴリーに留まっていたのに、サウンド全体を考えるとそこから大きく逸脱できることに悦びを覚えました。演奏することはもちろんとてつもなく魅力的です。しかし当事者になると、全体が見えないジレンマがあります。逆に全体を見ようとすると、当然演奏には参加できません。だからときどきその両方をやるわけです」

さまざまな分野で音楽を手がけ続ける三宅が、初めて舞台作品を手がけたのが奇しくもロバート・ウィルソンの作品だった。その体験は三宅の以後の創作活動にとても大きな影響を与えた。
「各国からいろんなアーティストやスタッフが集まって、ひとつの目的に向かってチームで走るというのが、ミュージシャンとして活動してきたなかであまりなかった光景で、とても美しいものだと感じました。劇場の舞台袖や緞帳裏でストレッチをしているダンサーがいたり、楽屋に緊張感あふれる役者がいたり、そういう風景も含めて劇場は素敵だと思ったんです。そこにはたくさんの記憶が自然と宿っている気もしました。あとは、デヴィッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』に出てくる"シレンシオ"という不思議な劇場にも衝撃を受けました。口パクで謎のパフォーマンスが行われている劇場で、観客はそのパフォーマンスの滑稽さを理解していながら、偽らざる涙を流しているんです。光景として、まさにあんなことが起こるような劇場をつくってみたかったんです」 2013年にリリースされたアルバム『Lost Memory Theatre act-1』は、失われた記憶への思いが音楽で表現された作品だ。これまでにもコラボレーションを行ってきた演出家の白井 晃がこの作品に惚れ込み、舞台化した作品を8月21日から31日まで神奈川芸術劇場(KAAT)で上演する。そこで生まれる音楽と舞台作品の新たな関係にも期待が高まる。
「私は言葉にできない心象風景や心情のレイヤーを音楽にしてきました。たったひとつの音だけで千の言葉以上のものを伝えられる事もある。そして、音楽体験には現実にはない時間が流れる瞬間もあると考えます。なぜ自分が音楽をしているかというと、言葉にできない心象風景や心の動きをレイヤーにして、ひとつの音でも何も語らずに何かを伝えられる、そして、音楽体験によって現実ではない時間が流れる場合もあると考えているからです。音楽の様式だけを考えると、もう飽和してからかなり長いというか、どのジャンルも一応飽和点まで行って重箱の隅をつついている状態です。その異種交配というか、すべてのジャンル様式を横断しながら表現するなかに日本人としてのアイデンティティが出てくるかもしれないし、もしかしたら、新しいオリジナルなものが創りだせるかもしれない。新しいものだけを目指すというよりも、過去の宝に封じ込められたものを掘り起こしつつ、それをいかに自分なりに展開させられるかというのが私のライフワークなのかもしれません」

構成・文:中島良平
写真:木奥恵三

プロフィール/
三宅 純:作曲家。日野皓正に見出され、バークリー音楽大学に学ぶ。ジャズトランぺッターとして活動開始後、ジャンルにとらわれない独自のスタイルで作曲家としても頭角を現す。CM、映画、アニメ、ドキュメンタリー、コンテンポラリーダンスなど多くの作品に関わり、カンヌ国際広告映画祭など受賞歴も多数。ピナ・バウシュ、ヴィム・ヴェンダース、ロバート・ウィルソン、オリバー・ストーン、大友克洋など、多くの表現者たちとコラボレート作品を残している。

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2014年8月2日、映像作家・脚本家・写真家・作詞家の菱川勢一を招き、トーク「イメージを生み出す」を開催しました。

あらゆるフィールドを跨ぎ、既成の枠組みにとらわれることのない作家として知られる菱川。それは、既存の表現方法や分野を超えた自由な創造を行なう作家が集う本展と相通じます。トーク序盤では自身が歩んできた道について述べられました。菱川は高校卒業後放浪し、レコード会社を経てニューヨークに渡ったのち、映像からデザインの世界に入り、帰国後友人たちと共にグラフィックと映像を手がけるデザインスタジオ DRAWING AND MANUALを設立。そこで菱川は「モーショングラフィックス」と呼ばれる表現で名を知られるようになりました。次いで彼のデザインスタジオの話となり、手がけてきた作品の数々を映像トレーラーで紹介し、いくつか象徴的な作品の話に移りました。

誰もが知っている大きな仕事という枠と「大衆」というテーマについて、「見てくださる、楽しんでくださる人々が多様であるということ」の難しさに触れながら、NTTドコモのCM「森の木琴 - Xylophone」では、全長44mに及ぶ木琴を用い、球が木琴を転がる様をワンテイクで収めるべく50回撮ったというエピソードに始まり、国宝をアニメーション化したというNHK大河ドラマ「功名が辻」でのオープニング映像や、同局スペシャルドラマ「坂の上の雲」や同局大河ドラマ「八重の桜」などの制作背景に及びました。「名前や体裁に拘らず、やりたいことがあれば今すぐやる。いい作品にはいいエピソードが残る」と菱川は結び、会場はダイナミックなイメージが生まれる現場となりました。

アーティスト、イラストレーター、広告デザイナーなど、肩書きを限定できないような幅広い活動を続けるジャン=ポール・グードは、自らを「イメージメーカー」と表現する。その創作活動の原点にあるのは、ダンサーであった母親から幼いころに受けたダンスのレッスンで芽生えた、身体とその動きへの興味であり、思い描いたイメージを画面に留めるドローイングへの愛だという。ジャン=ポール・グードに話を聞いた。

「アフリカ人の多くが優れたリズム感を持って生まれてくるように、日本人の多くはグラフィックへの優れた感覚を持って生まれてくるように私は感じています。街を歩いていてもあらゆる場面で魅力的な視覚表現と出会うことができるし、優秀なデザイナーも数多い。三宅一生さんも、私は傑出したグラフィックデザイナーだと思っています。グラフィックへの類い稀なセンスから、独自の服を手がけています。そのような日本という国で、しかも三宅さんがディレクターを務めるこの会場で展示ができるのは本当に光栄なことです」
柔和な笑顔で、今回の展示が実現した感想をこう語るジャン=ポール・グード。長い創作キャリアのなかからキュレーターのエレーヌ・ケルマシュターとともに展示作品を選び、企画を練り上げていく過程で、グードの作品のグラフィカルな側面と、被写体の身体性にこだわる姿勢にフォーカスする展示構成に方向付けられていった。そして、展示のメインとして、彼の人生に大きな影響を与えた『3人の女神』をモチーフとする作品を集結させた。

70年代後半から80年代にパートナーであったグレース・ジョーンズ。80年代から90年代にパリで成功を収め、こちらも私生活をともにしたファリーダ。そして、現在の妻であり、やはりモデルとして数々の広告ビジュアルにも登場するカレン。アフリカ系ジャマイカ人のグレース、アルジェリアがルーツのアラブ系であるファリーダ、韓国系アメリカ人であるカレン。多様な文化に対してオープンで、手法もモチーフも分け隔てなく表現に取り入れるグードの姿勢を象徴するかのような、3人の女性との出会いが彼をインスパイアした。
「ここにいる3人の女性は、いわゆるクラシックな意味での美しい女性とは違うかもしれません。しかし、彼女たちはとても美しい。そのエッセンスを写真や映像、立体に表現して、多くの人に見てもらいたいというある種のエゴが制作のモチベーションとなりました。グレースは身長が高く足も長いのですが、首が短いので写真を切り貼りし、引き伸ばすことでその美しさを強調しようとしました。ファリーダは、アラブ文化を背景に持つ『千夜一夜物語』のような美しいイメージをワルツの映像で表現しようとしました。そしてカレン。私は彼女と20年前に出会い、現在は大きな子どももいる母親になりましたが、いつでも彼女はファンタジーのような存在です。私が抱く彼女たちのイメージを写真や映像などに留めたい、その衝動が私を創作に導くのです」

『イメージメーカー展』で、グードは壮大な野心を持って新作に挑んだ。それが展示室中央に展開する機械仕掛けのインスタレーション『見ざる、言わざる』と『聞かざる』だ。
「最初に思い描いたのは、舞踏室をつくること。私のキャラクターがワルツを踊る舞踏室を作品にしたいと考えたのです。そこで大事な要素が音楽です。音楽とダンスする体の関係をどのように見せるか、人ではなく人形が音楽にあわせて動くことで、見る人々の感情を揺さぶり、楽しませることができるか。そこが私にとって大きな挑戦でした。私が愛した3人の女性に特別な衣裳を着せ、三宅 純さんというこれまでにも一緒に仕事をしてきた素晴らしい音楽家に音楽を手がけてもらいました。今回の作品で"動く彫刻"とも呼べるインスタレーションに手応えを感じましたし、ここからさらに規模も大きくしながら発展させられたら素晴らしいと考えています」

ジャン=ポール・グードのキャリアにおいて、作品には本当に多様なモチーフが登場する。1989年にパリのシャンゼリゼ通りで開催したフランス革命200周年記念パレードを手がけたときは、かつて見たバレエ・リュスの作品『パレード』のイメージから発想を広げた。写真を切り貼りして身体の部位を変形させ、被写体の美を強調する「カットアップ」の手法には、ジャコメッティなどかつてのアーティストがどのように人体の美を表現しようとしたか、という美術史的な要素がひとつのきっかけにもなった。そして現在も、機械仕掛けのインスタレーションの展開を思い描くように、いつでも新しいものに対して貪欲で、常に前進する姿勢を見せる。ジャン=ポール・グードの作品が展示された地下空間に足を踏み入れると、その革新的な表現を目と耳で、そして全身の感覚で一種のファンタジーとして体感できるはずだ。

構成・文:中島良平
写真:木奥恵三

プロフィール/
ジャン=ポール・グード:1960年代初頭にイラストレーターとしてパリで活動を開始。1970年代には米『エスクァイア』誌のアートディレクターを務め、1989年にはパリで国家的イベントであるフランス革命200周年記念パレードを手がけて大盛況を収める。コダック、シャネル、ギャルリー・ラファイエットなどの広告は世界各地で広く親しまれている。

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2014年7月5日、ジャン=ポール・グードとエレーヌ・ケルマシュターによるオープニングトーク「イメージメーカー」を開催しました。

はじめにケルマシュターが、異分野を融合させて創作に取り組み、クリエーションの垣根を拡げるという展覧会のコンセプトを解説。「イメージメーカー」の代表格であるグードの幼少期から話を始めました。
パリでブティックを営む家に生まれた父とアメリカ人ダンサーの母。グードのDNAにはファッション、音楽、動きが潜んでいました。幼少期を過ごしたパリ郊外の街には植民地博物館があり、ファサードにはアフリカ、アラブ、アジアの女性が描かれていたと言います。

話は続いて、グードの三人の女神たち−−−グレース・ジョーンズ、ファリーダ、カレンとの出会いと恋に移ります。常にグードのインスピレーション源である女性たちがどんなに美しいかを伝えようと、彼は様々な作品をつくり、同時にショービジネスやファッションの世界を変革してきました。
ファッションに興味は持ちながらも、「愛する女性のための服しかつくれない。あらゆる女性のための服はつくれない」というグード。三人の女神をモデルにした本展のメイン作品は、平和のアレゴリーでもあると語りました。

「イメージには、目に見える映像と頭に浮かぶ印象というふたつの意味があり、その両方をつくるのがイメージメーカーの仕事」というグード。クリエイティビティよりもマーケティングが重視され、ポエジーよりも結果ばかりが求められる現代の広告業界を疑問視しながら、これからの時代をつくる人々に、「ものごとに良く耳を傾け、目を凝らし、考え、努力しよう」と、力強いメッセージを投げかけました。

ケルマシュターは、開館以来のファンであるという21_21 DESIGN SIGHTで展覧会を開催する喜びを語りながら、来場者が現代を問い、未来を想像できる展覧会になればと、トークを締めくくりました。

7月4日(金)、いよいよ企画展「イメージメーカー展」が開幕します。

ファンタジックな想像の世界をつくり出すこと、様々なクリエイティブな分野を融合させること、そして今ここにある世界について語りながら、人々を全く違った世界へ連れだすこと......。本展では、日仏文化交流に精通したキュレーターのエレーヌ・ケルマシュターを展覧会ディレクターに迎え、広告の世界に革命をもたらしたジャン=ポール・グードを中心に、国内外で活躍するイメージメーカーたちによる作品を展示します。

<展覧会の見どころ>

希代のイメージメーカー、ジャン=ポール・グードの世界にメインギャラリーが変貌
グードの創作は次元を超越し、見る者を想像の世界へといざないます。本展では、プライベートな生活での出会いが色濃く反映された機械仕掛けの彫刻「見ざる」「言わざる」「聞かざる」が一番の見どころ。会場では、彼が崇拝する「3人の女神」たち―グレース・ジョーンズ、ファリーダ、カレンをモデルにした人形が、三宅 純作曲の音楽に合わせて踊ります。さらに、グードが手掛けたパリの地下鉄内のデパート広告を16台のモニターを連結して再現したビデオインスタレーションや、写真コラージュ「形態学的改良」シリーズ、ドローイングなどを展示し、自らの世界観を大胆に表現します。

「ヒールレスシューズ」によって世界に名を知らしめた、舘鼻則孝の新たな側面を公開
彫刻、オブジェ、靴の全てが融合された舘鼻の「ヒールレスシューズ」は、履くことによって身体のラインを一変させます。その発想源には花魁の高下駄や日本の伝統文化があります。本展のために、舘鼻は制作プロセスとともに新作の靴と下駄を発表。また、身体構造にインスピレーションを得た石膏作品「アイデンティティーカラム」やアクリル製の彫刻「フローズンブーツ」、さらには大型のかんざしを屋内外に展示します。なお、地下ロビーには「ヒールレスシューズ」試着コーナーも設置します。

あらゆる分野を横断するイメージメーカーたちによる、活気ある世界の物語
舞台演出家として名高いロバート・ウィルソンの「ビデオポートレート」シリーズを日本初公開。本展のために作品プロデューサーが来日し、21_21 DESIGN SIGHTの建築空間に新たな"舞台"をつくりだします。また、映画、写真、絵画と様々な分野で活躍するデヴィッド・リンチは、自らの心象風景を映しとったリトグラフ24点を出展。さらに、フォトグラファーハルは、カップルを真空パックして撮影した「Flesh Love」と新シリーズ「Zatsuran」を紹介します。日仏文化交流に精通したキュレーター、エレーヌ・ケルマシュターのディレクションにより、国内外屈指のイメージメーカーたちの作品が一堂に集い、活気ある世界の物語を繰り広げます。

Photo: 木奥恵三

2014年7月4日より、いよいよ開催される「イメージメーカー展」。開幕を間近に控えた本展の参加作家と、それぞれの作品の見どころを紹介します。

ロバート・ウィルソン

『ニューヨーク・タイムズ』紙に「実験演劇界の巨匠であり、舞台での時間と空間使いにおける探求者」と評されたロバート・ウィルソンは、舞台美術家・演出家兼ヴィジュアル・アーティストとして世界で最も名高い人物の一人です。ダンス、ムーブメント、照明、彫刻、音楽、テキストなど、様々な芸術媒体を自由に統合して型破りな舞台作品を創作している彼は、まさに本展のテーマにぴったりのイメージメーカーです。
圧倒的な美意識で見る者の感情をかきたてるイメージをつくりだし、世界中の観客と批評家から絶賛されるウィルソン。彼の素描、絵画、彫刻作品はまた、世界各地で繰り返し展示され、数えきれないほどのプライベートコレクションや美術館に収められています。

本展では、ウィルソンの多岐にわたる創造性がいかんなく発揮された「ビデオポートレート」シリーズを日本初公開します。照明、衣装、メイク、振り付け、ジェスチャー、テキスト、声、セット、物語など、あらゆる芸術の手法が完璧に融合した作品は、映画のように時の流れを感じさせつつも「凍った瞬間」を捉える写真の要素もあわせもつ、まさにウィルソンの「決定的作品」と呼ぶにふさわしいものです。
本作は、会場に応じたサイトスペシフィックな展示も大きな見どころのひとつ。今回は、クリエイティブプロデューサー マシュー・シャタックの来日により、安藤忠雄の建築空間との奇跡のコラボレーションが実現しました。

ノイエ・ギャラリー、グラーツ(オーストリア)
シンガポール国立美術館、シンガポール
ウォーターミル・センター、ウォーターミル(アメリカ)

マシュー・シャタックが出演する関連プログラム

ギャラリーツアー「ロバート・ウィルソン ビデオポートレート」
日時:2014年7月4日(金)18:00-19:30
出演:マシュー・シャタック(クリエイティブプロデューサー)、エレーヌ・ケルマシュター(キュレーター)
>>詳細ページ

企画展「コメ展」に展示中の映像作品「白姓」を手がけた山中 有による予告映像で、本展の展示作品や会場の様子をご覧いただけます。ぜひご覧ください。

2月28日(金)、いよいよ企画展「コメ展」が開幕します。

コメは、私たちの暮らしにとても身近で、日々の生活に欠かせないものです。日本では、コメを中心とした食文化を深めつつ、稲作の歴史とともに様々な文化が発展してきました。

本展では、私たちの文化の根幹をなすコメのありようを新鮮な目で見つめ直していきます。そして、その未来像を来場者の皆様とともに考えていきます。

佐藤 卓、竹村真一ディレクションによる「コメ展」に、ぜひご来場ください。

撮影:淺川 敏

三宅一生が企画・コスチュームデザインを行なった「青森大学男子新体操部」公演(2013年7月18日/国立代々木競技場第二体育館で開催)の中野裕之監督ノンフィクションフィルム。好評につき、テアトル新宿でレイトショー追加上映が決定しました。
このフィルムは、中野裕之監督のカメラが、公演の準備段階から本番当日までの3ヶ月にわたる青森大学新体操部の挑戦の日々を捉えた作品です。たった一度だけの公演に向けて、選手たち、そしてコーチ陣が、何を考え、何を感じ、何に悩みながら日々練習に取り組んで来たか、プロジェクトの舞台裏が中野監督の目を通して描かれています。ぜひご覧ください。

ワールドプレミア・スクリーニング

日時:2013年12月13日(金)まで 12:20-13:50
   2013年12月14日(土)- 20日(金) 12:20-13:50、21:15-22:45
場所:テアトル新宿

>>公式ウェブサイト

三宅一生が企画・コスチュームデザインを行なった「青森大学男子新体操部」公演(2013年7月18日/国立代々木競技場第二体育館で開催)の中野裕之監督ノンフィクションフィルム。テアトル新宿、シネマ・ツーに続き、テアトル梅田での上映が決定しました。
このフィルムは、中野裕之監督のカメラが、公演の準備段階から本番当日までの3ヶ月にわたる青森大学新体操部の挑戦の日々を捉えた作品です。たった一度だけの公演に向けて、選手たち、そしてコーチ陣が、何を考え、何を感じ、何に悩みながら日々練習に取り組んで来たか、プロジェクトの舞台裏が中野監督の目を通して描かれています。ぜひご覧ください。

プレミア・スクリーニング

日時:2013年12月14日(土)- 12月19日(木)10:30-
場所:テアトル梅田

東京での上映情報と詳細は、>>公式ウェブサイトをご覧ください。

三宅一生が企画・コスチュームデザインを行なった「青森大学男子新体操部」公演(2013年7月18日/国立代々木競技場第二体育館で開催)のノンフィクションフィルムが完成しました。
このフィルムは、中野裕之監督のカメラが、公演の準備段階から本番当日までの3ヶ月にわたる青森大学新体操部の挑戦の日々を捉えた作品です。たった一度だけの公演に向けて、選手たち、そしてコーチ陣が、何を考え、何を感じ、何に悩みながら日々練習に取り組んで来たか、プロジェクトの舞台裏が中野監督の目を通して描かれています。ぜひご覧ください。

ワールドプレミア・スクリーニング

日時:2013年11月30日(土)- 12月6日(金)10:00-
場所:テアトル新宿

スペシャルイベント・スクリーニング

日時:2013年12月12日(木)19:30-
場所:シネマ・ツー
出演:中野裕之監督+スペシャルゲスト

>>公式ウェブサイト

山中 有による予告映像で、「カラーハンティング展 色からはじめるデザイン」展示作品や会場の様子をご覧いただけます。ぜひご覧ください。

国立新美術館「カリフォルニア・デザイン1930-1965 -モダン・リヴィングの起源-」展との共同企画として、"ハウス・オブ・カード"を使ったワークショップを、2013年4月27日「デザインあ」展の会場内で開催しました。

"ハウス・オブ・カード"(House of Cards)は、ミッドセンチュリーの代表的デザイナー、チャールズ&レイ ・イームズが1952年にデザインした組み立てて遊ぶカードで、糸巻きやボタンなど身近なモティーフをカラフルなパターンとしてとらえているのが特徴です。

ワークショップでは、カードのアイデアを元に、ご来場のみなさまがつくった「デザインあ展」のオリジナル"ハウス・オブ・カード"をつかって、本展参加作家の岡崎智弘と寺山紀彦(studio note)が家をつくりました。

映像制作:岡崎智弘

トム・ヴィンセント、山中 有による映像作品の一部と西部裕介による会場写真で、「テマヒマ展〈東北の食と住〉」の様子をご覧いただける予告映像です。会期中、東京ミッドタウン内で放映されています。

現在開催中の「アーヴィング・ペンと三宅一生 Visual Dialogue」展にあわせ、各界をリードするクリエーターの方々に、ペンの写真の魅力について語っていただきます。


シンプルでパワフルなアートの力を実現した、二人の希有なコラボレーション


── 展覧会のご感想をお聞かせください。ご自身の作品が実際に動いているのをご覧になっていかがでしたか。

マイケル・クロフォード(以下、クロフォード):
本当に感動しました。こんなに素晴らしい展覧会は見たことがありません。私は30年間風刺画家として仕事をしてきましたが、自分の作品は常に紙の上の静止画です。それが初めて大きなスクリーンで動いているのを見て、大変興奮しています。動画にしてくださったパスカルさんは素晴らしいですね。

── マイケルさんは、本展のアニメーション作品の原画ドローイングをお描きになられましたが、作品の制作プロセスを教えてください。

クロフォード:最初に北村みどりさんから、方向性をきちんとディレクションしていただきました。スケッチなどを見せていただき、一生さんとペンさんのコラボレーションのプロセスがとても良くわかったので、それから3ヶ月は一人でひたすらドローイングを描きました。そして、でき上がったドローイングをパスカルさんに渡し、しばらくしたら彼からDVDが届いた。それを見た時は驚きましたね。私の描いたスケッチに命を吹き込まれたような感じで、非常に生き生きと動いていた。私たちは一度も同じ部屋で仕事をしていないというのにです。

── ペンさんと一生さんもお会いすることなく、コラボレーションをしました。

クロフォード:そうですね。今回の展覧会の素晴らしさは、まさにそこにあると思います。ペンさんと一生さんが「一緒に」作ったものではないというところに面白みがあると思います。

── プロジェクションの展示はいかがでしたか。

クロフォード:昨日、一緒に来日した子どもたちと見たのですが、皆で感動しました。イメージそのものも美しいのですが、大ききさやシークエンスの間などが素晴らしかった。一生さんの服もそうだけれど、ペンさんの写真は「スカルプチャー」。私にとってこれらの作品は、服ではなく彫刻なのです。
私自身も絵を描くからわかるのですが、アートの世界でペンさんと一生さんのようなコラボレーションが出来るケースはなかなかないと思います。ペンさんは、一生さんの作品から強烈なインスピレーションを受けられて、シンプルでパワフルなアートの力を実現されていると感じました。

── 最後に、クロフォードさんの最近のお仕事をお聞かせください。

クロフォード:私の風刺漫画に関しては、出来るだけシンプルに面白く作るように心がけています。「ニューヨーカー」のドローイングも、なるべくひと言でおかしみを出せるように描いています。シンプルにすればするほど良い作品に仕上がるし、それが私の求めていることなのです。
ペインティングは、もう20~30年描いていて時期によってテーマは変わります。ひとつのテーマをある程度突き詰めて描くと、また次のテーマに挑戦したくなるのです。現在は、アメリカ合衆国の地図を中心に仕事をしています。アメリカの地図に少しアイロニーを込めて、人々が良く知っているアメリカの地図とは、少し違った体験をしてもらうペインティングです。

(聞き手:上條桂子)



Michael Crawford
Photo: Carolita Johnson

マイケル・クロフォード Michael Crawford

カートゥーニスト
1945年アメリカニューヨーク州オスウェーゴ生まれ。69年トロント大学を卒業、英文学専攻。70年代後半にイラストや風刺漫画を売り始めるまで、教職や建設業に多く携わる。81年に『ニューヨーカー』に最初の風刺漫画を売って以来、定期的に寄稿を続けている。その他、『ニューヨーク・ タイムズ』、『ニューヨーク・マガジン』、『スパイ』、『パリ・マッチ』、『ハーバード・マガジン』、『アトランティック』、『フォーブズ』、 『エンクワイアラー』、『グルメ』など、多数の出版物に作品が掲載されている。また、『The New Yorker Book of Baseball Cartoons』のボブ・マンコフ氏の共同編集者としても活躍している。ニューヨーク市、ボストン市、及び、ニューヨーク州ハドソン市のグループ展では、絵画作品が展示されてきた。
http://www.michaelcrawford.org

マイケル・クロフォードによる「Irving Penn and Issey Miyake: Visual Dialogue」のためのドローイングより
Copyright © 2010 by Michael Crawford


「アーヴィング・ペンと私」一覧リストを見る

Gallery 2
会場風景(撮影:吉村昌也)

本展の見どころの一つに、ギャラリー2での写真の大型プロジェクションがあります。31mの長い壁面を生かし、6画面を連動させて画像を投影しています。このようなかたちでアーヴィング・ペンの写真が展示されることは初めてです。
今回の展示においては、キヤノンの最新プロジェクターを使用して実現しました。

使用されているプロジェクターは「WUX4000」。
ヨーロッパでは一昨年発表され、国内での大規模な使用は初めてという、最新モデルです。

最大の特徴として、WUXGA対応反射型液晶パネル(LCOS)が挙げられます。
16:10のWUXGA(1,920×1,200ドット)の反射型液晶「LCOS(Liquid Crystal On Silicon)パネル」の採用により、スライドのようになめらかな描写性能と高解像度化を実現しています。今回の展示では、6画面相当のフルHD映像を高精細に映写しています。

また、レンズが交換可能で、幅広い設置環境に対応できます。
「上下左右電動レンズシフト機能」や「電動ズーム・フォーカス機能」により、リモコンを使用しての調整が可能です。本展では、プロジェクターを天井から吊って設置していますが、このため設置後の微調整を行うことができます。実際には6画面を連動させるため、緻密な調整が重ねられています。

迫力の映像表現を、是非会場でお楽しみください。

http://cweb.canon.jp/projector/lineup/wux4000/index.html

WUX4000

9月16日から開催する「アーヴィング・ペンと三宅一生 Visual Dialogue」展にあわせ、各界をリードするクリエーターの方々に、ペンの写真の魅力について語っていただきます。


明朝体のような繊細で力強い表現


──中野さんがアーヴィング・ペンさんを好きになったきっかけを教えてください。

僕は古いヴォーグの写真がすごく好きで、最初に買った写真集がアーヴィング・ペンの作品集で、一番影響を受けている人だと思います。同時代の写真家としてリチャード・アヴェドンがよく引き合いに出されてるんだけど、僕はアヴェドンは力強くてタフなゴシック体、ペンは繊細で流麗な明朝体というイメージを持っています。映像をやり始めた頃、どうやったらペンの写真のような映像が撮れるのか、試行錯誤しましたが、なかなか同じようなカットは撮れませんでした(笑)。

──ペンさんの写真の魅力はどこにあると思いますか?

まずは、一回見た写真は忘れられない、構図の面白さとインパクトの強さがあります。一瞬を選び取る取捨選択能力というか、決意というか、一生さんとの仕事にしても、洋服のディテールと文脈を熟知して、見せるポイントをすべて押さえた上で、強烈な写真を撮る。一生さんとのお仕事は、ペンさんが70歳くらいの時に撮影されたものだそうですが、それもよくわかります。若い時からずっと第一線で写真の仕事をしてこられて、50歳を過ぎる頃からだんだんと仕事がスローペースになり、シャッターを切る回数が減っていく。そして人生の熟成時期に入って、さらに新しく面白い写真に挑戦する。それには一生さんの服の影響もあると思います。こんなに刺激的な服を与えられたら、それをどう撮ろうかと考えるのが愉しくてしょうがなかったでしょうね。お二人の仕事を見ると、その楽しさがひしと伝わってくるんです。

──中野さんが最近取り組まれている仕事を教えてください。

9月17日、18日にせんだいメディアテークで開催される「仙台短編映画祭11」のプロジェクト「311仙台短編映画制作プロジェクト作品『明日』」に参加しています。40人の映画監督が3分11秒の短編映画を撮るもので、僕は三ヶ月くらい悩んで『明日』という作品を撮りました。ぜひご覧ください。

(聞き手:上條桂子)

2011年9月23日に21_21 DESIGN SIGHTで開催された展覧会関連プログラムに中野裕之が出演しました。
トークの様子は動画でお楽しみいただけます。
トーク「 操上和美さんに聞いてみたかった」の動画を見る



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中野裕之 Hiroyuki Nakano

映画監督、映像作家
音楽的な映像表現で知られ、これまでに国内外の有名アーティストのPVを数多く手がけている。映画「SFサムライフィクション」プチョンファンタスティック映画祭グランプリ、短編『アイロン』カンヌ国際映画祭国際批評家週間ヤング批評家賞。現在、美しい地球を収めた最新作「美しい惑星」が発売中。

「明日」

「アーヴィング・ペンと私」一覧リストを見る

川上典李子のインサイト・コラム vol.3

「日本は技術で成り立っている国なので、世界の最先端の技術を追求するのが製造現場の役目。『日々、革新』というと格好良すぎだが、技術の革新、ブラッシュアップを続けている」と帝人ファイバーの工場長。シーンは変わり、布地の適度な柔らかさを実現するべく糸の撚りが細かく調整されている。「日本は人件費も高く、こういう商品をやらないと生き残れない」と、福井の企業、畑岡の技術開発担当者......。

本展作品のひとつに25分のドキュメンタリー映像があります。Reality Lab Project Teamの活動を軸として、展覧会全体を貫くテーマを追った作品『再生・再創造 その先に、何が見えるか』。ドキュメンタリー映像作家の米本直樹と平野まゆに浅葉克己が加わり、本展のために制作されました。カメラを携え、松山、大阪、福井、石川など、全国の製造現場にも足を運んだ米本に、作品完成後、改めて話を聞きました。

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再生ポリエステル繊維の製造現場。長年の研究により、半永久的に再生可能な糸が生み出された。
画像は映像作品から


今回の映像制作を通して考えたことについて、米本はこう語ります。「普段、私たちが目にしている身近なものについてどれほど考えたことがあるか、と自らに問いました。三宅一生さんが読まれたという惑星物理学者、松井孝典さんの本を私も読み、たとえば食卓に載る食べ物がどこから来たのか、魚介類はもしかするとアフリカからか、穀物はアメリカから、野菜は中国から......と、目では見えない世界について考えるようになりました」

「衣類も同様です。私にはこれまでただ身に着けるものとしてしか見えていませんでしたが、誰が、どんな素材を使って、どういう加工をして、どんな思いを込めてこの服に至っているのか、そこに思いを馳せる必要性を知りました。情報が氾濫している今の時代だからこそ、その先にある見えないものにまで目を届かせなければならない......今回の映像では、そんな思いを多くの方々に伝えたいと思ったのです」

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製織の現場。加工法が一から検討され、最適な風合いが出るまで幾通りもつくり直された。
画像は映像作品から


本展のタイトルにある「再生、再創造」「REALITY LAB」とは、まさにものづくりに対する姿勢を示す言葉、と米本。

「今回の展覧会に参加したことで『ものづくり』について、改めて深く考えさせられました。私は映像制作というかたちでものづくりに関わる人間ですが、どちらかというと感性だったり、観念という部分でクリアできてしまうところがあります。ところが、衣服など実用的なものはそうはいかない。使いやすさ、品質、美的価値、あらゆる側面での実用性が重視されます。決して『自分が良ければいい』というものではありません」

「また、この映像に登場していただいた方々がデザインにどれほど深い想いを込めてきたのか、取材を通してそのことも伝わってきました。再生・再創造、そしてリアリティ・ラボというキーワードは、まさにその『ものづくり』に必要とされる大切な姿勢を示す言葉だと思います。同時に、実に普遍的なメッセージだと思いました。私が関わるドキュメンタリー映像も、やはり現実の再創造ですし、その意味では現実化の研究を積み重ねなければならないと考えているところです」

そのうえで、日本のものづくりをどう見ていくのか。「映像の副題にもつけましたが、やはり『その先に、何が見えるか』ということが課題だと思う」と米本は強調します。

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染織の現場。 黒に深みを増すため微妙に差し色 が加えられる。 最良の風合いを求めて検討が繰り返された。
画像は映像作品から


これまで海外にも何度も足を運び、様々な人々の取材を重ねてきた経験もふまえて、こうも語ってくれました。

「僕はまだ若造ですが、若いなりに現在の日本を見ていると、近視眼的にものごとが進んでいくことに危機感を覚えます。政治も外交も、経済もしかり......原因はやはり、島国ゆえの安心感のようなものなのだと思います。目先を見ていれば自己完結できてしまう気分が、日本にいるとどうしてもあるのではないでしょうか。取材で世界各地を見てきた感覚で日本に改めて目を向けると、その点は否めません」

「現在の日本の、支持を得るためならどんな公約でもする、諸外国に批判されるとすぐに方針を変える、売れるためならいくらでも安さを追求する......これでは先行きは不安です。ただし、そのなかでも可能性が、たとえば世界でも類を見ないこだわりの姿勢、仕事への緻密さ、協調性と思いやりの精神などに宿っていると思います」

「今回、『132 5. ISSEY MIYAKE』のシリーズが実現されたことは、まさにこうした可能性のシンボルと言えるのではないでしょうか。次なる『132 5.』となる活動を、今度は、私たちひとりひとりが行っていかなければならないのだと実感しています」

日常、環境、社会とつながるデザインの意味を改めて考えながら、私たちひとりひとりがこれから先に一体、何を見ていくのか。展覧会のテーマをより深く理解していただけるのが、映像作品「『再生・再創造』その先に、何が見えるか」です。制作の現場を目にできる貴重な映像であることはもちろんのこと、登場人物ひとりひとりの想いが込められた言葉にも、注目ください。

文:川上典李子


vol.1 「132 5. ISSEY MIYAKE」開発ストーリー
vol.2 新しい立体造形を探る、 コンピュータサイエンティスト
vol.3 ドキュメンタリー映像作家米本直樹が考える「再生・再創造」

サマースクール「デザインのコツ」:技術 「映画衣装における汚しの技術」



7月20日、サマースクールの第一日目の授業を開講しました。
この日の1時限目「技術」の講師は、映画衣装デザイナーの黒澤和子。
父親である故・黒澤明監督とのエピソードも交えながら、映画界における衣装デザインの仕事について語りました。
衣装デザインは、時代考証、キャラクターのバックグラウンドや、好きな色、スタイルなどに加え、その服はどのくらいの年数着ているものなのか等、詳細な設定から始まります。「汚し」と呼ばれる技術は、元々新品として仕立てた衣装をわざと色褪せさせるなどして、衣装に「時間軸」を表現して雰囲気を出すものです。また、衣装デザインにおいては主要キャラクターだけでなく、エキストラの雰囲気がむしろ大事、との話も。そのような細かい設定を骨として、映画全体の雰囲気を監督と一緒につくりあげ、衣装が出来上がったときにはとても達成感を感じると話します。監督やスタッフとのコミュニケーションを楽しむことも、映画のイメージにより忠実な衣装をつくるための大切な要素です。

普段の生活では極力避けたい毛玉を、「汚し」のために逆に一生懸命に作っている。そんな作業も、夢中になることのひとつなんですと楽しそうに語る黒澤の話からは、映画の世界観を表現するための骨格の大切さがうかがえました。

クリエイターズトーク3 「バーチャルな骨」



3回目になる今回のクリエイターズトークでは、展示作品を飛び越えて3人のクリエイターとナビゲーターに中谷日出を迎えて行われました。

設計会社で働いていたことのある中村勇吾は、橋や建築の構造やヴィジョンを考えると「物のある状態の可能性が見える」といいます。「ある状態」とはものの限界、壊れる様子であり、構造解析プログラムを組んだ展示作品「CRASH」へと繋がっていきました。

本展出展作品「CRASH」(THA/中村勇吾)より

携帯電話のプロトタイプを見せながらトークを始めた緒方壽人は「(プロトタイプでも)作り込まないと本物を使っている気にならない」といいます。それは限りなく本物に近いプロトタイプを使うことによって、より精度の高い実験となるのです。プロダクトからインターフェース、プロモーションの仕事に関わる中で、ソフトとハード両方に携わりたいと語りました。


五十嵐健夫が開発した形状操作インターフェースがモニターに映し出されると、可愛らしいぬいぐるみがモチーフのイラストに、会場からは笑いがこぼれました。画の枚数を重ねて動きを表現する従来のアニメーションとは違い、2Dのビジュアルそのものが指定した支点で動く様子は、今回の展示作品「another shadow」の仕組みの元にもなっています。
本展出展作品「another shadow」(緒方壽人+五十嵐健夫)

トーク終盤にはデザインやものづくりにおいて、気をつけていることや心掛けていることに話が進みました。「プレゼントをつくるような気持ちで」と緒方がおもてなしについて話す一方、五十嵐からは「新しいこと、誰もやっていないようなこと」という研究者らしい答えも。中村は「ない。(ものの)存在理由を考える」と独特の考えを語りました。

トーク後の質疑応答では専門的な説明から、最近気になっているものや情報収集の仕方、日々の趣味まで様々な質問にあふれる楽しい時間となりました。
森山開次・串田壮史


11月8日、「セカンド・ネイチャー」展に映像作品「REINCARNATION」で参加している、ダンサー/振付家の森山開次と、映像作家の串田壮史によるデザインレクチャー「魂と身体」が行われました。進行を務めたのは、本展企画協力の一人でデザインディレクターの岡田栄造です。

サッカーのゴールキーパーの姿を見て身体に興味を持ったという串田と、センターバックを務めていた森山の二人は、初めて会ったときから、互いの仕事がリンクしていると感じたそうです。ダンスで自由に変化する森山の体を見て「魂を表現するのにぴったり」と考えた串田は、森山の身体を魂に、赤い布を肉や血に見立て、「死んでから生まれるまでの美しい瞬間」(串田)、輪廻を表現しました。赤い布の試行錯誤には時間をかけ、時には液体に、時には塊に見せられるよう、最終的に3-4種類の布が混ぜられたそうです。

「REINCARNATION」には、森山が激しく踊るシーンが登場します。このシーンは、暴れているように見えて、実は冷静に布の動線を見ながら、最後にその布をつかんで投げるクライマックスを持ってくるなど、緻密な計算と設計のもとに振付けられています。その他にも、メーキングのプロセスが詳細に語られ、「CGで表現するのは簡単なのに、意外と手作業が多い」(森山)映像制作の舞台裏が明かされました。

展覧会のテーマ「セカンド・ネイチャー」と作品との関わりについて、「体も自然の一部。踊ることで自然の中に自分がいることを感じられる」と話す森山と、「輪廻とは、人が死ぬという絶望的な自然現象に対して、人が生まれるという希望を込めた、人間の想像力から生まれたストーリー」であると語る串田。老人になったらもう一度「REINCARNATION」に挑戦したいという二人に、会場からは大きな拍手がわきおこりました。

好評開催中の「21世紀人」展が、NHK教育「新日曜美術館アートシーン」で紹介されます。三宅一生の考える未来のものづくりとは? それぞれの作品に込められた作者たちの思いとは? スケール感たっぷりの美しい映像で語られる、21世紀人たちの物語をお楽しみに!放送予定は、6月15日(日)午前9:00~、再放送は同日午後8:00