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中村勇吾 (6)

こんにちは、本展のテキスト執筆を担当しましたドミニク・チェンと申します。中村勇吾さんがディレクションを務め、コーネリアスの新しい楽曲に対して9組の映像作家が作品を新規に制作するというアイデアを聞いた瞬間にワクワクしてしまい、急な依頼だったにも関わらずすぐに引き受けました。リアルタイムで作家の方々の作品制作が進行する中、オンラインでデータを共有して頂き、各作家のコンセプトを汲み取りながら作品の紹介文、そして展示全体のコンセプト文を執筆しました。それらの文章は、会場で配布しているリーフレットに掲載され、一部会場内でも掲示されていますが、本展に関しての考えはそこに全て込めてあるので、ここでは展示が始まってから考えさせられたことについて書いてみます。

Photo: Atsushi Nakamichi (Nacása & Partners Inc.)

本展の面白いところは、共通のお題に対するそれぞれの作家の応答によって構成されているというところでしょう。通常の美術展やデザイン展示では、新作ももちろんありますが、ほとんどの場合は旧作やその再構成がほとんどを占めています。その意味では、今回はメイン楽曲から映像まで全てが新作という点でも画期的ですが、この方式は日本文化に脈々と流れる「連」の系譜を喚起します。連とは共同制作のために、通常の社会的なヒエラルキーを越えた人々の集いを指します。最も有名なのは松尾芭蕉が弟子たちと行った俳諧の「連句」でしょう。発句を起点にして、一定のルールを守りながら、次々に連想が繋がっていき、挙句に収斂される形式ですが、これは人々が集まった場そのものが協働制作をしているようなかたちを取ります。前の人の句に続けることを付句と呼びますが、互いに付句をする時にはお互いの創作の成分が相互に浸透しあうわけです。

本展は連句のように、一人から次の人へバトンを渡す方式ではなく、コーネリアスの楽曲がお題になって映像作家が応答する、いわば大喜利方式を採っています。制作過程も、連句のようにすべてがリアルタイムで互いに開示されていたわけではなく、それぞれが自分の表現を突き詰めていった結果、どれも互いに視覚的なテーマが重複し合わない作品に仕上がったのは、ひとえに中村さんのディレクションの妙といえるでしょう。

その意味では本展の構造=アーキテクチャそのものがまた、中村勇吾の作品だと言えるでしょう。私も大学の学生との研究開発で使用している、中村勇吾さんが開発に関わるFRAMEDというデジタルディスプレイがあります。それはインターネットを介して誰でも自分の作品を配信したり、他者の作品を表示したりして、アニメーションや静止画、インタラクティブな作品を楽しむためのインテリア機器なのですが、今回の展示構成のなかで8つの小部屋で映像作品が分かれている様子はまるでFRAMEDの理念が会場で顕在化しているようにも見えました。だから、本展もFRAMEDも、中村勇吾という、自身も卓越した表現者でありながら他の優れた表現者への好奇心が溢れ出てしまう「数寄者」でもある人が、「こんな光景を見てみたい!」という欲望を実現するために作り出した「器」であると言えるでしょう。

本展を見て、おそらく多くの表現者が同じ様な欲望を喚起されたのではないでしょうか。アーキテクチャという用語は、私が専門とする情報社会学のなかではインターネットを始め、情報がどのように生成され流通するかを規定する技術基盤を意味する概念です。インターネットのもたらした書き換え可能(Read/Write)な文化的なリアリティが宿っている本展の構造は、それ自体が参照され、違うかたちに継承されていくフォーマットとして見て取ることができるでしょう。

ドミニク・チェン

どみにく・ちぇん:
博士(学際情報学)。2017年4月より早稲田大学文学学術院・准教授。メディアアートセンター NTT InterCommunication Center[ICC] 研究員を経て、NPOコモンスフィア(クリエイティブ・コモンズ・ジャパン)理事/株式会社ディヴィデュアル共同創業者。2008年 IPA未踏IT人材育成プログラム・スーパークリエイター認定。企画開発したアプリ「Picsee」と「Syncle」がそれぞれApple Best of 2015と2016を受賞。NHK NEWSWEB 第四期ネットナビゲーター(2015年4月〜2016年3月)。2016年、2017年度グッドデザイン賞・審査員「技術と情報」「社会基盤の進化」フォーカスイシューディレクター。著書に『謎床:思考が発酵する編集術』(晶文社、松岡正剛との共著)など多数。訳書に『ウェルビーイングの設計論:人がよりよく生きるための情報技術』(BNN新社)、『シンギュラリティ:人工知能から超知能まで』(NTT出版)。

2018年6月29日、いよいよ企画展「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」が開幕となります。

私たちが普段なにげなく親しんでいる音楽は、音色や音域、音量、リズムといった要素によって緻密にデザインされた構築物(アーキテクチャ)であると言えます。しかし日常の中でその成り立ちや構造について特別に意識する機会は少ないのではないでしょうか。

本展では、ウェブ、インターフェース、映像の分野で活躍する中村勇吾を展覧会ディレクターに迎え、ひとつの「音楽建築空間」の構築を試みます。ミュージシャンの小山田圭吾(Cornelius)が書き下ろした新曲『AUDIO ARCHITECTURE』を、気鋭の作家たちがそれぞれに解釈した映像作品を制作。展覧会のグラフィックデザインは、北山雅和(Help!)が手掛けました。

Wonderwall 片山正通がデザインしたダイナミックな空間、音楽、映像が一体となった会場で、音楽への新鮮な視点を発見してください。

Photo: Atsushi Nakamichi (Nacása & Partners Inc.)

土木の専門家ではない人も含め、たくさんの人が関わっている「土木展」。その中には、ウェブやインターフェースのデザインで知られる中村勇吾も名を連ねています。彼がなぜ「土木展」に? その背景には本展ディレクターの西村 浩との意外な関係がありました。
構成・文:青野尚子

僕がなぜ土木展のクレジットに入っているのか、その話をすると長くなるんですが(笑)。もともとは建築を目指していたんです。高校のとき、ガウディの作品集を見て建築に興味を持ったのがきっかけでした。そこで有名な建築家の出身校を調べたら東京大学を出た人が多かったので、僕も東京大学に入ったのですが、東京大学工学部では1、2年次の成績で専攻が決まるんですね。僕は落ちこぼれだったので(笑)人気のある建築学科には入れず、土木工学科に進むことになったんです。そこの先輩に、今回の土木展のディレクターである西村 浩さんがいました。

土木科では篠原 修先生の景観研究室に入りました。当時は土木構造物にも景観的な配慮が大切だ、とようやく言われ始めた頃で、景観研究室もちょうど出来たばかりのタイミングでした。


「タウシュベツ川橋梁」(北海道上士幌町)西山芳一

その研究室のとある課題で「水辺のデザイン」「水辺空間」といったことについて考える機会がありました。僕は造形志向が強かったので、堰の形をこんなふうにするとかっこいい、というように形から入っていましたが、どうも手応えがありませんでした。そんな時、先輩の一丸さんが、構造物の形ではなく「水の表情」をデザインしてはどうか、と提起していたことを覚えています。たとえば浅くて底がゴツゴツしているところを流れる水は白く波立ってレースのようになる。深いところを流れる水は透明でゆったりとした動きを見せます。構造物の形そのものをデザインするのではなく、「水の表情」という人工と自然のインタラクション(相互作用)の現象それ自体をデザインする。そのようなデザインの捉え方があるのか、と非常に感銘を受けました。

もうひとりの先輩の福井さんは、建築に関する法規制と街並みの形態の関係について研究をしていました。建物には北側にある建物に日が当たるよう南側より北側を低くする「北側斜線制限」、建物はこれより低くすることという「高さ制限」などの法規制があります。これらの法規制をコントロールすることで、間接的に街並みの形成過程に関与していくことはできないか、という研究です。法律という「コード」によって生ずる現象として街並みを捉える、というアプローチは非常に新鮮に感じました。

私の卒論のテーマは日本の城の石垣でした。篠原先生からいきなり割り当てられたお題で、最初はしぶしぶと進めていたのですが(笑)、徐々に熱中し、自然と人工の関係について考えはじめる最初の機会になりました。今ならコンクリートなどで大きな塊をつくって擁壁をつくることができますが、昔はそんな大きな塊をつくることができないので、石を下から少しずつ積み上げていくしかなかったわけです。崩れてこようとする土の圧力に対抗してバランスよく効率的に石を積んでいく先人の知恵に感動しました。研究の過程でいわゆる「扇勾配」と呼ばれる弓なりにそった石垣の形状は、効果的に土を抑えられる構造的合理性も備えていることもわかってきました。「扇勾配」は中国から移入された様式だというのが一般的な説ですが、その優美な形の裏には見た目のスタイルだけでない、ある種の構造デザインが含まれていたのではないか、という仮説を提示することができました。

卒業してからは橋梁を設計する会社に入りました。でも僕は30歳でなにかしらの形で独立したいと考えていたんです。大学院を卒業して入社したのが25歳のときだったので30歳まで5年しかない。でも土木は時間のかかる仕事なので、5年やそこらで一人前になるのは絶対に無理、と言われました。そんなことはないはず、と思っていたのですが、やってみると本当に無理なことがわかりました。一方で仕事の合間に趣味として、その頃黎明期だったウェブのデザインやプログラミングなどをやっていたのですが、それがけっこう評判がよくなって、顔も見たこともない海外のアーティストの依頼でサイトをつくっていたりしていたんです。そのうち自分でもこちらのほうが向いてるのかな、と思って橋梁の会社は辞めてウェブの仕事を始めました。


「白水ダム」(大分県竹田市)西山芳一

結果的に僕は土木とウェブという、二つのまったく関係のない分野を体験することになりました。でも先に行ったような大学の研究室や設計会社で見たものや考えたことからは、今でも強く影響を受けていますね。たとえば「白水ダム」という昔のダムがあるのですが、ちょっとした傾斜とダムの側面や底面の凸凹の加減で美しい水の波紋ができるんです。ダムの形と水の物理的な特性のインタラクション(相互作用)からそういった現象が生まれて、それを見る僕たちの心が動かされる。それは僕が今やっている、プログラムを記述することでさまざまな現象を生みだしたり、人々のいろいろな反応を引き出したりするようなデザインと通じるところはあると思います。

ダムの形と水の物理的な特性のインタラクション(相互作用)からそういった現象が生まれて、それを見る僕たちの心が動かされる。それは僕が今やっている、プログラムを記述することでさまざまな現象を生みだしたり、人々のいろいろな反応を引き出したりするようなデザインと通じるところはあると思います。


「土木の行為:ためる」ヤックル株式会社(Photo: 木奥恵三)

「土木展」でも会場に来た人が水をせきとめたり、力を加えることでアーチ橋をつくれるコーナーがあります。ちょっとした力の違いなどがどのような結果を生むのかを確かめながら、楽しんで欲しいと思います。

なかむらゆうご:
ウェブデザイナー/インターフェースデザイナー/映像ディレクター。1970年奈良県生まれ。東京大学大学院工学部卒業。多摩美術大学教授。1998年よりウェブデザイン、インターフェースデザインの分野に携わる。2004年にデザインスタジオ「tha ltd.」を設立。以後、数多くのウェブサイトや映像のアートディレクション/デザイン/プログラミングの分野で横断/縦断的に活動を続けている。主な仕事に、ユニクロの一連のウェブディレクション、KDDIスマートフォン端末「INFOBAR」のUIデザイン、NHK教育番組「デザインあ」のディレクションなど。主な受賞に、カンヌ国際広告賞グランプリ、東京インタラクティブ・アド・アワードグランプリ、TDC賞グランプリ、毎日デザイン賞、芸術選奨文部科学大臣新人賞など。

NHK Eテレの番組「デザインあ」及び、2013年2月8日 - 6月2日に21_21 DESIGN SIGHTで開催された「デザインあ展」が、第7回キッズデザイン賞 経済産業大臣賞を受賞しました。

>>キッズデザイン賞について詳細はこちら

撮影:吉村昌也

2013年2月8日 - 6月2日に21_21 DESIGN SIGHTで開催された「デザインあ展」が、ADCグランプリを受賞しました。
現在、受賞作品、優秀作品が一堂に展示される2013 ADC展にて、「デザインあ展」のポスター、会場写真などが展示されています。ぜひご覧ください。

2013 ADC展
2013年7月4日(木)- 29日(月) 11:00 - 19:00 日曜・祝日休館 入場無料

ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)[会員作品]
104-0061 中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル(土曜は18:00まで)
※「デザインあ展」に関する展示はこちらの会場になります

クリエイションギャラリー G8[一般作品]
104-8001 中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル1F

2013 ADC展についての詳細は下記をご覧ください
>>ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)ウェブサイト

「デザインあ展」会場写真/Photo: 吉村昌也

2月8日より、「デザインあ展」を開催します。

ごく自然に私たちの日常に溶け込み、人の営みと切り離すことのできないデザイン。それだけに「デザインマインド」をどう育むかは、今後さらに重要な課題となることでしょう。NHK E テレの番組「デザインあ」が展覧会に発展します。デザインマインドをテーマに構成された会場で、子どもも大人も、身体感覚でデザインを感じてください。

撮影:吉村昌也