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2010年4月 (4)



展覧会も開幕2日目を迎えた4月25日、来日中の本展アシスタントディレクター、フィリップ・フィマーノによるギャラリーツアーが行われました。

ツアーは会場1階からスタート。まず本展のコンセプト構想の経緯、総勢71組の参加作家たちのさまざまな作品には、問題意識や制作方法、素材の共通性があることを紹介。
「黒」を基調とした作品が並ぶ1階ではポスターにも使用されているアトリエ・ファンリースハウトの「ファミリー・ランプ」を始め、作品ひとつひとつを説明。未来の家族のあり方や、動物との関わりの重要性、手をつかったものづくりといった本展のテーマについて解説しました。



階段を降りると、次は「地下ホール」。レザーを用いた作品や動物を模した作品を通して、アニミズム的な自然との繋がりに気付かされます。「ギャラリー1」はナチュラルな色や木、ガラスといった素材、制作過程に即興性を取り入れた作品を中心としたエリア。ちょうど会場を訪れていたアーティストのニコラ・ニコロフ(スタジオ・リ・クリエーション)と、ガラス作家のタニヤ・セーテルが自ら作品を解説する場面も。



彫刻の庭のように構成された「ギャラリー2」には、ものづくりの過程や素材の研究を重視した作品や、未来のテーブルをイメージさせる作品たちが並びます。それぞれの作家の意図を丁寧に説明しながら、ツアーは進みました。フィリップ・フィマーノが宝石箱のようなイメージと語る、メタリックな作品を集めた「アネックス」エリアを抜け、ギャラリーツアーは終了。その後、フィマーノや作家たちに直接参加者から質問をする様子も見られ、展覧会を広く深く知ることができる充実した時間となりました。

ノルウェーでのタニヤ・セーテルによる子どもワークショップの様子
タニヤ・セーテルのフードアート

続いて登場したのは、ノルウェーのアーティスト、タニヤ・セーテル。アイスランドの火山噴火を見て、ガラスがいかに自然な素材であるかを再認識したと言います。ミニマルな表現を追い求めていたセーテルは、ある時機能性に飽き始め、手づくりを懐かしく感じます。子どもの絵からガラス作品を制作したり、フードアーティストとともに吹きガラスの熱を用いた料理に挑戦したり。良いアイデアを他の人と共有することで、より良いものができると語りました。

インドでのカーリン・フランケンスタインの作品

スウェーデンから来日したアーティストのカーリン・フランケンスタインは、窯が与えるセラミックのサイズ制限に不満を感じていました。3年前にインドを訪れた際、現地の伝統的な日干しレンガの技法に出会い、ストレスのない制作活動に入れたと言います。展示作品では、牛糞を用いた荒々しい素材とサロン風の形で、緊張感を表現したというフランケンスタイン。自然とプロダクトとの関わりについて、多くの対話を生み出すプロセスが大切だと語りました。

会場の様子

最後にリー・エデルコートが再び登壇し、ポスト・フォッシル時代の「生きた証」である二人のアーティストに拍手を送りました。希望、愛、想像力、健全な暮らし、視野の広さ、謙虚さ、冒険心、共有の概念を備えた、新しい世紀の新しい作家たち。展覧会のオープンに合わせて来日した7人のクリエーターを、アシスタント・ディレクターのフィリップ・フィマーノがユーモアたっぷりに紹介しました。会場からも、作品のサイズからエデルコートの夢まで興味深い質問が飛び交い、展覧会のオープンにふさわしい熱気に満ちたひとときとなりました。


PART1 「ポスト・フォッシル」が意味するもの
PART2 新世代の作家たち

会場でのリー・エデルコート

「ポスト・フォッシル:未来のデザイン発掘」展の開幕となる4月24日、本展ディレクターのリー・エデルコートと参加作家のタニヤ・セーテル、カーリン・フランケンスタインによるオープニングトークが行われました。
エデルコートはまず、本展の企画のきっかけとなった三宅一生のキーワードを紹介。それは、デザインの次の時代を切り開こう、という願いを込めた「break(ブレーク)」でした。

会場入口に展示されている「ドゥー・ヒット」や展覧会のポスターにもなった「ファミリー・ランプ」など、象徴的な作品を例にあげながら、消費者が制作プロセスに関わり、アートとデザインの境界が消え、新しい家族のあり方が模索される「ポスト・フォッシル」時代のものづくりについて丁寧に解説。
展覧会のタイトルには、「アフター・フォッシル」、「ネオ・フォッシル」という二つの意味を込めたと語ります。

マライン・ヴァンデルポル「Do hit」
アトリエ・ファンリースハウト「Family Lamp」

原始的な素材の可能性に耳を傾け、表現は概して控えめ。人間と自然や動物の関わりを探求し、リサイクル、リユース素材を活かし、即興性を取り入れる。美よりも制作プロセスを重視してプロダクトに魂を吹き込み、人々が愛着を持てるデザイン。

ナチョ・カーボネル「Evolution Collection」(会場写真)

理論と感覚に橋をかけ、手をつかった仕事を再評価し、化石燃料時代の次を担う新世代の作家たち。今年4月のミラノサローネでエデルコートが最も感動したという、ナチョ・カーボネルをはじめとした様々な作品のスライドを上映しながらの説明でした。


PART1 「ポスト・フォッシル」が意味するもの
PART2 新世代の作家たち

ディレクターからのメッセージ

大転換の時代が到来しました。
社会は今や前世紀と永遠に決別しようとしています。今日では問題視されたり疑問が示されたり、破綻をきたしている創造行為におけるさまざまな決まりごと、理論的な諸ルール、さまざまなスティグマ(汚点)を断ち切るために。そして、物質至上主義を脱却し、代わりに、慎ましく地に足がつき、組み立て直された状況を実現するために。

ここ数十年で最悪の金融危機の余波を受けて、流麗華美な、デザインのためのデザインの時代は終わりを告げています。新世代のデザイナーたちは、彼らのルーツをたどり直し、自分たちの地球を今一度清め、時には世の始まりにも遡りながら人類の歴史を研究しています。

このプロセスを通して、彼らは自分たちのデザインを考案し、具体化していきます。素材はまさに自然でサステイナブル(持続可能)なものを中心とし、とりわけ木材や皮革、パルプやファイバー、あるいは土や火を好みながら、現代の穴居人さながらにシェルターやさまざまな道具、手づくりの機械類を新たにデザインし、つくり直しています。また、古代のさまざまな儀式を、より簡素な、しかしながら満ち足りて充実したライフスタイルを創出するべく再解釈しています。明日のフレッド・フリントストーン(*1)のように。

骨格構造は、生物の生長過程に倣った太古の住居や千年来のさまざまな造形物を特徴づけます。また、手吹きガラスや手焼きのうつわが未来の食卓を彩り、いつしか食されなくなっていた野菜や地元で収穫された旬の食べ物が盛られ、さらなるスローフードが提案されることでしょう。

素材は概して地味で慎ましいものとなるでしょうが、しかしながらこの世代のデザイナーたちは、地球が大地に秘める富、すなわち鉱物や合金やクリスタルの利用にも誘なわれ、艶、そして時には輝きまでをも、これら一連のフォッシル(化石)のようなコンセプトとクリエーションに付加します。これらのデザインでは、じきに復活する運命にあるアルテ・ポーヴェラ(*2)の本質に共鳴するところも、時に見ることができるでしょう。
こうした動きの主要素となっているのは"自然"です。ここでは自然はもはや無邪気で情熱的なエコロジー言語の文脈では用いられていませんが、しかし、さらに新しい時代にふさわしい成熟した哲学として用いられています。提起されるべき問題を、提起すること......。


より豊かになるために、より少ないものでやっていけるでしょうか?
デザインは魂を持ち、それゆえ生気に満ちたものとなりうるでしょうか?
人はより意味ある消費の方法を見つけられるでしょうか?
私たちは、過去と決別し、新たな未来を創造できるでしょうか?

リー・エデルコート



*1 アメリカのテレビアニメ「原始家族フリントストーン(原題:The Flintstones)」の主人公。
*2 1960年代後半にイタリアで起こった芸術運動で、美術評論家であるジェルマーノ・チェラントの命名。原義は「貧しい芸術」。セメントなどの工業素材、石や木などの自然の素材を用いた作品が生まれた。

展覧会ポスター