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『イメージメーカー展』レポート第6回
舘鼻則孝とフォトグラファーハルの表現世界

展覧会ディレクターのエレーヌ・ケルマシュターは、舘鼻則孝のことを「伝統と未来を見据えてものづくりを行う作家」と、フォトグラファーハルを「カップルをモデルにイメージをつくりあげ、"予想不能"なコンポジションに"愛"を表現するイメージメーカー」と表現する。『イメージメーカー展』では、ふたりの作品が同じ展示室に並べられた。前編と後編の2回にわたる今回のレポート。前編では、それぞれのコメントから2人の表現を紹介する。

展示室に足を踏み入れると、まず目に入ってくるのが石膏による足が林立するインスタレーション。かつて舘鼻則孝が、1枚の皮革から足のフォルムをかたどったブーツを手がけたことがあり、それを石膏で何足も複製することによってこのインスタレーションは生まれた。人の足の構造をリサーチする標本のようでもあり、また、ロダンなど西洋の近代彫刻家たちによる体のパーツの習作が集積した様子も連想させる。

ファッションデザイナーを目指すときにまず日本のファッションを勉強したという舘鼻は、「自分のルーツにあるのは日本のファッションへの関心であり、そこから展開する前衛的で新しいものづくりを追求している」と語る。「今回はほとんどが新作なんですが、ファッションアイテムである靴と、中庭のサンクンコートに展示されたかんざしがモチーフの大きな彫刻作品、その中間であるインスタレーションやオブジェ、という3つのセクションで構成しています。ここに展示したヒールレスシューズは、日本の下駄にインスパイアされて生まれた作品です。その関係性を見せるために、学生のころにつくり始めた下駄を展示しました。東洋の美術として生まれた日本の靴といえます。日本文化に西洋からの文化が影響を与え、融合することで現在の日本文化が生まれたわけですが、そのような西洋と東洋の対比や、古典と現代表現のつながりを常に意識しています」
足が地面よりも高いところに置かれる日本の下駄を工芸の技術によって洗練させた作品。そしてその対比として、伝統的な技術にインスパイアされ、東洋と西洋の融合を現代のモードに昇華したヒールレスシューズ。舘鼻は日本の花魁を研究することで着物や下駄の文化を知り、最新の表現へと展開させるために、ルネサンスや近代彫刻などの西洋芸術も学んだ。身にまとうものを手がけるために、身体性の研究にも余念がない。多様な表現を行いながら、根底にあるのはひとつの意識だということが展示から伝わってくる。
「日本の文化を世界の人に知ってもらいたい、というのが制作の大きな動機です。それをより現代的で新しい形で行うには、どのような技法や素材を用いるのがいいか。美術にも工芸にも歴史的な時間軸があるので、それを横並びで見て、重なり合う部分を説明しながら紐解いているのが自分にとっての制作活動であり、今回の展示でやりたかったことです」

舘鼻の作品と対面する形で、壁面にはフォトグラファーハルの写真作品が展示されている。色鮮やかな画面に写されているのは、布団圧縮袋に真空パックされたカップルの姿。「カップル2人の距離感がどれだけ近づいてひとつになることができるか、それを表現したい」と、ハルはこれまでのすべての作品に通じる制作動機について語る。「袋の上に寝転がってもらって、関節の位置や体のバランスなどを考えながらカップル2人と私との3人でディスカッションして構図を決めます。そのときに、私が俯瞰でそのフォルムが美しいかどうかを考えますし、実際に袋に入って掃除機で空気を抜くことで予期していなかった構図が生まれもします。1分か2分かけて徐々に空気が抜けていき、最終的に顔にピタッとビニールが貼り付いた時点で呼吸ができなくなるので、そこから10秒カウントダウンしながら、袋をグッと引っ張って服の細かいシワを直したり、腕や足の位置を動かしたりして、1回シャッターを切るわけです。そして、シャッターを切ったと同時に袋を開ける。息ができないので時間との勝負です。完璧にコントロールして同じ構図の真空状態をつくることは二度とできませんし、10秒間という限られた時間でその瞬間を画面に切り取ることに、写真というメディアを使う必然性があると思っています」
画面構成を想定し、カップルとの共同作業で被写体をつくりあげる作業が非常に重要な位置を占める。そうして生まれた作品から、新たにイメージが広がり次の作品のアイデアが生まれるという。圧倒的なインパクトを持つ画面は、その構図とディテールの結びつきによって見るものの目を釘付けにする。
「今回展示した7点のうち、1点は『Flesh Love』という2010年の作品で、もう6点は『Zatsuran』という2012年と2013年に撮影した作品です。カップルの2人と、彼らが普段使っているものや家にあるものを一緒に真空パックしています。2人の持ち物が2人に吸い寄せられた貼り付いている様子を撮影することで、 ふたりが引かれ合うパワーがより高次元で表現できると考えたわけです」

記事の後編では、それぞれが考える日本的な表現や、『イメージメーカー』という展覧会としての独自性などについて語った、舘鼻とハルの対談をレポートする。

構成・文:中島良平
写真:木奥恵三

プロフィール/
舘鼻則孝:1985年、東京生まれ。15歳のときから独学で洋服や靴の制作を始める。東京藝術大学に進学して絵画や彫刻、染織などを学び、やがて花魁に関する研究に着手し、友禅染めを用いた着物や下駄を制作。2010年、自身のブランド「NORITAKA TATEHANA」を設立。全工程を手作業で完成させる靴が、LADY GAGAなどに愛用されていることでも知られている。

フォトグラファーハル:1971年、東京生まれ。東海大学工学部機械科卒業。2004年に写真集「PINKY & KILLER」発表後、カップルを被写体に撮影を行っている。2011年、2013年にニコンサロンで個展を開催し、海外のグループ展にも参加。写真集に「Pinky & Killer DX」「Couple Jam」「Flesh Love」ほか。並行して広告カメラマンとしても活動を行っている。

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DOCUMENTS | 「私の一品」Vol.18 本城直季(写真家)
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「私の一品」Vol.18 本城直季(写真家)

企画展「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」は、来場者の皆様をデザインミュージアムの"入口"へと誘う展覧会です。
ウェブサイト上の本連載では、会場を離れ、各界で活躍する方々が未来のデザインミュージアムにぜひアーカイブしたいと考える"個人的な"一品をコメントとともに紹介します。
展覧会と連載を通じて、デザインの広がりと奥行きを感じてください。

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