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オンライントーク「ことばの海をおよぐ −翻訳家にとっての『翻訳』とは」を開催

2020年11月18日、企画展「トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう」に関連して、オンライントーク「ことばの海をおよぐ −翻訳家にとっての『翻訳』とは」を開催しました。
トークには、翻訳家の柴田元幸と斎藤真理子、本展ディレクターのドミニク・チェンが出演し、文芸翻訳にまつわる様々なエピソードや思いが語られました。

あなたにとって「翻訳」とは?

ポール・オースター、スティーヴン・ミルハウザー、レベッカ・ブラウンなど数々の現代アメリカ文学の翻訳で知られる柴田は、本展に寄せて、「翻訳」を「快楽の伝達」と定義しました。
この定義について、柴田は「小説や詩など文学の翻訳に対する定義であり、文学そのものの定義といってもよいかもしれない。僕は自分の心が動いた作品しか訳さないし、大切なのは文学による快楽を伝達すること。そのためには、正しく翻訳することだけが価値のすべてではない」と語りました。

一方、韓国で2018年に発表されたベストセラー小説『82年生まれ、キム・ジヨン』など、多くの韓国文学の日本語訳を手がける斎藤は、次のように「翻訳」を定義しました。
「ある作品が、別の地面の上を歩いていくため靴を仕立てること。地質、気候、風土に留意して。」 韓国の歴史や日本との関係性など、言語の外にある文化的背景を意識して翻訳を行うという斎藤は「違う環境に生きている人へ、作品が伝わるための最低条件を整えたい。裸足で歩いていけるかもしれないけど、途中で雨が降るかもしれないし、最後まで伝わらないかもしれない。おせっかいなんです。地名や人名の表記の仕方ひとつにも、たくさんのことを考えます」と、定義に込めた思いを述べました。

トークの後半には、柴田が自身の和訳によるジェームズ・ロバートソンの短編『翻訳の不十分さ』を朗読し、翻訳という行為が困難でありながらも希望を抱く心情を、自らの思いと重ねて解説しました。
続いて、斎藤が朝鮮詩人 李箱の『烏瞰図』と、光州の詩人 パク・ソルメの『もう死んでいる十二人の女たちのために(仮題)』を原語と日本語で朗読し、終わりに視聴者との質疑応答が行われました。
それぞれに異なる翻訳家としての視点を持ちながら、その考え方や方法に共感しあい、多様な翻訳のあり方を提示する本展のテーマにも重なるトークとなりました。