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「建築家 フランク・ゲーリー展」
フランク・ゲーリーのQ&Aセッション(前編)

現在開催中の企画展「建築家 フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"」のプレスプレビューでは、フランク・ゲーリーのQ&Aセッションが行なわれました。
日本文化から受けた影響、建築の道を選ぶまでの経緯、近年の活動などを熱く語るゲーリーの素顔をぜひお楽しみください。


プレスプレビュー当日の様子(Photo: 木奥恵三)

──みなさまこんにちは。本日は「建築家 フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"」にご来場いただきありがとうございます。これより、開催に合わせてご来日いただきましたフランク・ゲーリーさんによるQ&Aセッションを始めたいと思います。まずはゲーリーさんから一言お願いいたします。

「ハロー」

「一言ということでしたので(笑)。この21_21 DESIGN SIGHTのディレクター三宅一生さんとは長年の友人であり、建築家の田根剛さんには今回の展覧会ディレクターを務めていただきました。そしてこの展覧会を、同じく古い友人である安藤忠雄さんの建築のなかで行なうことができることをとてもうれしく、光栄に思っています」

「私はとても日本を愛しています。建築の歴史、音楽や文学などの芸術の歴史が好きで、若い頃は多くのものに触れ、多くのことを学びました。私は雅楽をやります。『イーン、クリン、クリン』の『クリン、クリン』のパートをやっているんです(笑)。このパートを完璧に演奏するためには呼吸をどのようにすればいいのか、日本の師が私に教えてくれました。日本にも、世界中のほかの国にも、建築や芸術の歴史は遺産として根付いています。そしてわれわれは遺産とまったく同じ創造を繰り返すのではなく、現代という時代の文脈のなかで、新たな作品をつくりだしていこうと考えているわけですが、そこに遺産のコピーではない人間的な新たな建築、街を築いていこうとすることが大事だと思います。残念ながら、アジア各国や、アメリカ、イギリス、フランスや世界のどこへ行っても、モダニストの作品のなかにはそういうアプローチをなかなか見ることができません。それがどのような理由からなのかは私にはわかりません。ですが、歴史を理解し、人間性を感じられるような建築を復興させたいと思っています。それはつまり、コピーではなく、現代における新しい言語を探していくということです」

──21_21 DESIGN SIGHTでは、本展を「建築家 フランク・ゲーリー展」と銘打っております。「建築の展覧会である前に、建築家の展覧会であるからだ」と、ディレクターの田根さんはおっしゃっていますが、ゲーリーさんが建築家になられたきっかけと、これまでたどってこられた建築家としての道のりについてお話をお聞かせいただけますか。

「それについては、4時間ほどお時間をいただいてもよいでしょうか(笑)。小さい頃は気がつきませんでしたが、いまから振り返ると私の父、母、私が置かれていた時代の状況は、なにかものをつくることへのヒントに溢れていた時代だったと思います。幼年時代は貧しく、困難な時代でした。私はあるとき、ロサンゼルスでトラックの運転手をしていました。そのときは、ユニヴァーシティではなく、ロサンゼルス・シティ・カレッジの夜間に通っていて、数学や科学をはじめ、とにかく当時興味を持っていたコースを受けていました。しかしながら、なかなか成績は上がりません。一度、興味を持って勉強していたコースで『F』(落第点)をとったがあって、とにかくそのことに頭にきたのでもう一度同じコースを履修して、今度は『A』をとりました。そのコースをとったのが、建築家になることになる、最初のひとつのレンガだったと思います。友人のひとりにラジオ・アナウンサーがいて、なんだかおもしろそうだなあと思って、私もラジオのアナウンサーになろうとしたのですが、声質がダメだったのですね。結局この夢はあきらめました」

「あるときカレッジで製図のコースをとりまして、これについてはかなり上手くて成績もよく、先生がさらに続けたらどうかと励ましてくれました。これが2つめに積んだレンガでした。この段階ではまだ建築を学ぶには至っておらず、夜学を続けながら、次に陶芸のコースをとりました。恥ずかしくてその頃の作品をお見せすることはできませんが。先生だって恥ずかしく思っていたはずです(笑)。ただ、先生は私のことを気に入ってくれて、スチューデント・アシスタントになったらどうかと誘ってくれました。先生は清の時代のとても美しいセルリアンブルーの陶器をつくることができる人でした。あるとき、先生が器を釜に入れて焼いて仕上がった作品がとてもきれいで、どうやってこの器をつくったのか、偶然じゃないのかと聞いたところ、『これからは偶然できたとしても自分がつくったと言いなさい』と言われました。そういう教えややりとりが鮮明に思い出されます。」

「この陶芸の先生は自宅をカリフォルニアの建築家であるラファエル・ソリアーノに依頼して建てていました。ソリアーノにはミニマリスト的素養があり──安藤忠雄さんにも通じるところがあると感じますが──美しい建築をつくる建築家です。建設現場で彼に会って話をしていたときのことですが、彼は私に『フランク・ロイド・ライトは好きになるなよ』と言うんです。そこで数時間作業を見ていたら、今度は陶芸の先生から『君は建築のコースをとったらどうだ、いいアイデアだろ』と勧められました」

「その後私は南カルフォルニア大学の夜間コースに移り、毎週月曜日に開かれているプロジェクトに参加しました。成績が良かったものですから、2年生をスキップさせてくれました。2年目の最初の学期が終わったときでした。大学の建築コースの先生が私をオフィスに呼んでこう言いました。『フランク、私には君がなにになるべきかわからないけれども、建築家にはなるもんじゃないぞ』。それでも私はその後大学を卒業し、建築の世界のなかに留まりました。先生とはその後時折顔を合わせることがありましたが、先生は『わかっている、もうなにも言うな』と言いました(笑)」

「第二次大戦が終わる頃、アメリカのGIや建築家が伊勢神宮や桂離宮などの日本の建築を見て、たいへん感銘を受けていました。1950年代のロサンゼルスは、木造のトラックハウスが戸建住宅の代わりになっていて、粉末石膏を塗ったような外観のトラックハウスが何マイルも続く風景をつくっていました。そういう時代にアメリカは日本の古建築の美しさに出会ったわけです。スキー事故で惜しくも亡くなったゴードン・ドレイク(Gordon Drake、1917−51)や、ハーウェル・ハミルトン・ハリス(Harwell Hamilton Harris、1903−90)などが現代的な木造建築を遺していますが、ここにも日本の影響が見られます」

「木造建築における日本建築の影響は、個々の魅惑的な作品のレベルを超えて存在しており、私の初期の作品を含めて、かなり日本風のものと感じられる作品がたくさんあったのです。フランク・ロイド・ライトやチャールズ&ヘンリー・グリーン(Charles Sumner Greene、1868−1957/Henry Mather Greene、1870−1954)、バーナード・メイベック(Bernard Ralph Maybeck、1862−1957)などの『マスター・アーキテクト』と呼ばれる建築家の作品にはやはり日本の建築から派生したスタイルを感じます」

「日本の国宝を展示するロサンゼルス・カウンティ美術館でデザインをしたことがあるのですが、このときも私は日本の文化からの影響を感じていました。例えば葛飾北斎や歌川広重の木版画、江戸時代の陶器や屏風、侍たちの装束、日本文学など、これまでにかなり深く日本文化を学ばせてもらいました」

「その後《フィッシュ・ダンス》(1987)というレストランを神戸に設計しました。私としては魚の形そのものだったり、ヘビを模したような建築をやりたいとは思っていなかったのですが、このときはコミュニケーションが崩壊し、クライアントと私の意思の疎通がうまくいかずに、誤解によって建物ができてしまうという奇妙な経験をしました。ベストを尽くしたかったのですが、それが適わなかった。いつかだれかドキュメンタリーをつくってくれたらいい(笑)。私は辞めたかったのです。日本の文化についてはもちろんみなさんのほうがご存知なのですが、私が『辞めたい』と言ったとたんに現場では、それはたいへんだ、面目がつぶれる、そうなればなんて恥ずかしいことかと、かなり騒ぎになったのですが、日本側の建築監修の方々がとても優しく、また私も彼らを傷つけたくない思いで進めました。《フィッシュ・ダンス》は外側から光をあてて街のひとつのオブジェとしようという意図があったのですが、数カ月後に神戸に戻ってきたらなんと内側から照明があてられ、ゴールドに塗られ、目まで描かれているんですよ(笑)。この一件があったから、その後日本から建築設計依頼がこないのかなあと思っているんです。悲しいストーリーでした(笑)」

>>後編へつづく

DOCUMENTS | 「私の一品」Vol.18 本城直季(写真家)
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「私の一品」Vol.18 本城直季(写真家)

企画展「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」は、来場者の皆様をデザインミュージアムの"入口"へと誘う展覧会です。
ウェブサイト上の本連載では、会場を離れ、各界で活躍する方々が未来のデザインミュージアムにぜひアーカイブしたいと考える"個人的な"一品をコメントとともに紹介します。
展覧会と連載を通じて、デザインの広がりと奥行きを感じてください。

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