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「建築家 フランク・ゲーリー展」
フランク・ゲーリーのQ&Aセッション(後編)

現在開催中の企画展「建築家 フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"」のプレスプレビューでは、フランク・ゲーリーのQ&Aセッションが行なわれました。
日本文化から受けた影響、建築の道を選ぶまでの経緯、近年の活動などを熱く語るゲーリーの素顔をぜひお楽しみください。

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プレスプレビュー当日の様子(Photo: 木奥恵三)

──ゲーリーさんが建築家になられた背景や日本との関わりについてのいろいろなお話、エピソードをありがとうございました。そして、代表作や近年の作品、最新作などは展覧会会場でご紹介させていただいておりますが、ゲーリーさんの今後のプロジェクト、これからどのようなことをされていきたいかということをお伺いしてよろしいでしょうか。

「さぁ、わかりません(笑)。ただ私には、建物を建てることに対する中毒症状があると思っています。オフィスの若いメンバーと仕事をするのも好きですし、息子も建築家になるということを決めました。孫娘は1歳になります。韓国系の血が入っているので、みなさんとある意味で近くなったとも思っています。これからなにをしたいかという話になるとまた何時間も必要になるのですが(笑)、私は最近慈善活動に熱心に取り組んでいます。カルフォルニア州には小学校が100校ほどあるのですが、小学校を卒業できずに中途退学してしまう児童がおよそ50%いると言われています。統計的に、ドロップアウトした児童は高い確率で犯罪に手を染め、刑務所で過ごしてしまう。そして皮肉なことに刑務所は児童を受け入れるために準備をしているわけです。こうした状態を受けて、われわれはファースト・レディのミシェル・オバマとともに『TURNAROUND ARTS』というプログラムを立ち上げました。アート系の先生方を学校にいる子どもたちのもとに送り込んで一緒にいろいろな作業をするプログラムで、子どもたちは自分の手でものをつくるということに熱心に取り組むものです。このプログラムは数カ月でかなり成果を上げています」

──幼少期におばあさまと遊ばれた経験は、建築家としてのお仕事に結びついてますでしょうか。

「一緒に床に座ってブロック遊びなどをしていました。祖母がどこまで深く考えていたのかは今となっては分かりませんが、遊びを通して、先入観なしにアイデアを模索し、自分の直感に従って何かをつくりあげていくということを学べたような気がします。祖母の例ではありませんが、私は生徒に教えるときに、まず彼らにサインを書かせているんです。書いてもらったサインをデスクの上に置いて見ると、書く人によって美的な側面がそれぞれ異なっていることが分かります。これは、生徒たちが何かに捉われて意図的に書いたものではなく、自身の手で直感的につくったもの。彼らには『直感を信じる感覚を忘れないで』ともよく話していますね。どこに向かっていくかというような確信を探すのではなく、直感を信じてアイデアを模索するということです。もちろん建物を立てるにあたっては、場所の法規制、現場やエンジニアリングの制約条件等に打ち当たりますが、先入観なしに直感に従いアイデアを模索することの大切さを、祖母がブロック遊びを通して教えてくれたのかもしれません」

──「やりたいのは、新しいアイデアを生むことだけ」とありますが、嫌になる瞬間が必ず来るにも関わらずアイデアを生み続けていくご自身のモチベーションはどこからやって来るのでしょうか?

「そうですね、どこから来るんでしょうね(笑)。私の友人でもある三宅一生さんは布でプリーツをつくりましたが、私はこれについて、布で人間性を表す試みであるように感じています。大きなもの、小さなもの、様々な領域にアイデアを当てはめて行った結果、最終的に、美しく、着心地の良い服に辿り着いたのだと思います。アイデアは様々な領域にどんどん進化して展開していきますが、だからといって、もともとあった『人間らしさ』を服で表現することで人々に届けるというアイデアの根にあるものは全く変わりません。その結果として、私のようなファッショニスタでも何でもない人間にとっても着心地が良いと思えるような美しい服をつくりあげることができたのだろうと思っています。進化のなかにも一貫性を持ち続けることが、例えば三宅一生さんの服でしたら、人間性が表現されていて、楽しくて、人々の手に届きながらも誰も真似できない、美しくユニークな服を可能にするのではないかと考えます」