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21_21放談 vol.3 三宅一生×深澤直人 「地上333メートルから見えてくる、東京、デザイン・ものづくり」 前編

21_21 Image Photo


21_21 DESIGN SIGHT ディレクターによる放談シリーズ、第3回目をお届けします。三宅一生と深澤直人が、東京タワーの大展望台から東京の街を眺めながら、都市、文化、デザインについて対話します。

エッフェル塔と東京タワー


三宅
東京タワーに昇るのは、実ははじめてなんです。長年東京に暮らしていて、近くまでは来るんだけど、なんか照れくさいっていうかね。
深澤
僕は今回で2回目位です。あんまり来ないですよね。
三宅
そうですね。高いところに上がるということなら、高層ビルと同じだろうと思っちゃって、意外と来ないものですね。
深澤
東京タワー、どんな感じですか。僕はノスタルジックな感じがしますけど。あとは、なんていうのかな、非日常的な東京というかね。
三宅
たしかにね。僕の場合、高いところに昇りたくなるのは、日本にいたくない、でも外国に行くのはいや、という時(笑)。そういう気分になると、東京の高層ビルの上の方に昇ったりします。
東京タワー
写真左:展望台から東方向を見下ろす。増上寺が見える。
写真右:展望解説ボードを見る深澤(左)と三宅(右)。ボードには東京の景観説明や建物の説明などがタッチパネル形式であらわれる。


深澤
東京タワーができたばかりのころって、ご存知ですか。
三宅
僕は高校の時に上京したんだけど、そのときはちょうど建設中だったのかな。このタワーは1958年にできているんですよね。
深澤
58年ですか。僕が生まれてすぐだな。
三宅
その当時は、パリのエッフェル塔のような高い鉄塔が建ったんだということで、もの凄く話題になっていました。こうして上ってみると、エッフェル塔とはずいぶんと趣が違いますが。
深澤
パリのエッフェル塔を参考にしたのは確かでしょうね。
三宅
そうですね。やっぱり、日本の文化そのものが元来、どこかから発想を引っぱってきているというところがありますよね。最近の例ですと、自由の女神をお台場にもってきたりとかね。
深澤
外来文化の歴史が長いから、日本人にはそういう発想がしみついているのかもしれませんね。とはいえ、やはり公共のものとなると、個人資本でつくるにせよよく考えないと、とんでもない問題になります。
公共にひらかれた建造物が良いものになれば、住む環境も文化的に高まるような気がします。けれども、回りをみてみますと、どうも日本は遅れをとっているような感じがしないでもない。三宅さんご自身は、21_21 DESIGN SIGHT(以下、21_21)を立ち上げる際に、そういった東京の街への影響をどのように考えていらしたんですか。
三宅
日本では欧米に比べると、とりたてて文化がどうとか、美がどうとかはあまり言いません。そもそも文化や美というのは日本人にとってはいわずもがなというか、暗黙の了解の上に成り立っていたものだと思うのです。戦後は、社会がどんどん制度化され、高度成長などもあって、文化や美は時代に応じて都合のいいように解釈されて現在に至っているという気がします。だから、21_21ができることで、われわれだけでなく、みんながそういったこと、つまり文化や美の今と昔の違いなどに意識的になれるとしたらいいなと思いますね。
東京らしさ、イコール、ローカル?インターナショナル?


深澤
日本が鎖国していた時代について考えてみると、国自体で完結しようという、その知恵みたいなものはかなり発達していたんでしょうね。自分なりに思うのですが、都市や文化やデザインをはじめ、いろいろな考え方というのは、非常に高いレベルで完成していたような気がします。それが文明開化の波にさらされたり、戦争があったり近代化が促進するうちに崩れてしまい、カオスになった。今また、当初の完成された地点に戻ろうとしているんだろうけど、かなり難しいと思います。
三宅
そうですね。日本人が戦後の荒廃から立ち直るために、オリンピックやら万博やら、いろいろなことをやってきて今に至ったのだと思うけれども、やっぱり、どこかちぐはぐです。日本独特の、なにか大切なものを失いつつあると思うんです。
21_21 は、生活を楽しむことにも、生きることにも、デザインはつながっているということを伝える場所になればいいなと思います。オブジェをつくったり、ものをつくったりというのは同時進行的におこなわれるけれども、それだけじゃないんだということです。広く社会のことなども考えていけるといいですね。
深澤
外国で仕事をしていると感じるのですが、いま世界中が均一化してきている気がします。単純に考えると、僕らがパリに行けばパリらしくあってほしいし、ミラノに行けばミラノらしくあってほしい。逆に外国の方が日本に来れば日本らしくあってほしいって思うんじゃないでしょうか。けれども実際は、日本に住む人たちは逆を望んでいる。日本はパリらしくミラノらしくニューヨークらしいみたいな(笑)。インターナショナル化するということを誤解しているような気がするんです。僕自身は、もっとローカルな魅力みたいなものをつくっていければいいと思うのです。最近、外国の仕事が増えれば増えるほど感じるのですが、いわゆる京都・奈良的な日本というだけの解釈ではなく、東京なら東京らしさみたいなものをもっと考えていく必要があると思います。
三宅
僕なども、西洋的なというか、グローバライズされたものの対極にあるもの、日本的なものが面白いと思いますね。

放談vol.3 後編へつづく