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パスカル・ルラン (5)

2022年11月3日(木)、企画展「クリストとジャンヌ=クロード "包まれた凱旋門"」の関連プログラムとして、ワークショップ「包まれたほにゃらら」を開催しました。

何かを包むことで新しい造形をつくり出し、いろいろな視点で「包む」ことを考えるワークショップです。 本展のグラフィックデザインを手がけた野間真吾を講師に迎え、作品をつくる様子と完成した作品を撮影して、オリジナルの小さなポスターを制作しました。

ワークショップでは、まずはじめにジュニアガイドを使いながら、クリストとジャンヌ=クロードと彼らのプロジェクトについて紹介。凱旋門を包む様子の映像と、実際にプロジェクトで使われたものと同じ布とロープの展示を鑑賞しました。

ギャラリー2にて、ジュニアガイドを活用したガイドの様子

つぎに、クリストの初期の作品について紹介。 クリストは初めから景観を変えるような大きなプロジェクトに取り組んだのではなく、初期には空き缶や椅子、道路標識や車など身の回りのものを包んだ作品を手がけていたことを紹介し、ワークショップでの制作のヒントを示しました。

制作を開始する前に、講師の野間から、私たちの生活に身近な「包む」ことについてレクチャーがあり、子どもたちは真剣に「包む」ことを考え始めました。

野間による「包むこと」を考えるレクチャーの様子

本ワークショップは午前と午後の2回開催され、小学校低学年から中学生まで合計11組が参加しました。 布やシートを丁寧に折りたたんでみたり、大きなオブジェを勢いよく覆ってみたりと、個性を光らせながら自由な方法で制作していました。


自由に制作する様子

一人でいくつもの作品に挑戦する子や、親子で協力したり、友だち同士で相談しながら作ったりと、それぞれの感性や発想を活かして、熱心に作品と向き合う様子がうかがえました。

親子で協力しながら制作

最後に、ポスター制作のため、講師の野間が完成した作品を撮影。 野間のアドバイスを受けながら、作品の向きや持ち方など、細かなところまで気を配り、1つしかない記念のポスターが完成しました。

作品の撮影風景

参加者の作品で制作したオリジナルポスター

ワークショップを通じて、見たことのないような新しいものを作る楽しさや、試行錯誤して完成したものがポスターとして形になる達成感など、さまざまな体験を得られる機会となったことでしょう。


参加者と講師の野間とのコミュニケーションの様子

2022年9月1日(木)から27日(火)まで、企画展「クリストとジャンヌ=クロード "包まれた凱旋門"」に関連して、ISSEY MIYAKE KYOTOのKURAにて、KURA展 特別展示「写真家ウルフガング・フォルツがみた『クリストとジャンヌ=クロード "包まれた凱旋門"』」を開催しています。

©️ ISSEY MIYAKE INC. Photography: Keiji Okubo

写真家のウルフガング・フォルツは50年以上前からプロジェクトの写真を撮り続けています。またフォルツは写真家としてだけではなく、いくつかのプロジェクトではディレクターもつとめ、実現における重要な役割を担いました。21_21 DESIGN SIGHTにて開催中の本展で展示されている写真の多くも、フォルツによるものです。

©️ ISSEY MIYAKE INC. Photography: Keiji Okubo

クリストとジャンヌ=クロードの友人であり、二人からの熱い信頼のもと、短い期間しか存在しないプロジェクトの全てを記録することを託されたフォルツがみた「包まれた凱旋門」をご覧ください。

会期:2022年9月1日(木) - 27日(火)
会場:ISSEY MIYAKE KYOTO(京都府京都市中京区柳馬場通三条下ル槌屋町89)
お問い合わせ:075-254-7540(ISSEY MIYAKE KYOTO)

下記ショップではKURA展と連動した特別展示を開催します。
2022年9月15日(木)から me ISSEY MIYAKE / AOYAMAにて
2022年10月1日(土)から ISSEY MIYAKE SEMBAにて

詳細はISSEY MIYAKE INC.の公式サイト(外部サイト)をご覧ください。
https://www.isseymiyake.com/ja/news/9692

フランスの国家を代表するナショナルモニュメントであり、世界的に有名な建造物の「エトワール凱旋門」を布とロープで包んだプロジェクト「L'Arc de Triomphe, Wrapped, Paris, 1961–2021(包まれた凱旋門)」を紹介する企画展「クリストとジャンヌ=クロード "包まれた凱旋門"」では、プロジェクトの制作過程や、実施中の風景をインスタレーションで展示しています。街の音や凱旋門のスケール感、そしてクリストとジャンヌ=クロードの出会いからのストーリーなどを通じて、会場全体がパリを舞台にした映画のようにも感じられるかもしれません。

会場風景(撮影:吉村昌也)

このようにフランスとの関わりの深い内容でもある本展は、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本の後援を受け開催しています。

本展が開幕して間もなく、フィリップ・セトン駐日フランス大使夫妻が来場されました。夫妻は、本展ディレクターのパスカル・ルランや、特別協力のクリスト・アンド・ジャンヌ=クロード財団より来日していたヴラディミール・ヤヴァチェフ氏、ロレンツァ・ジョヴァネッリ氏らの説明を受けながら、時間をかけて展示を鑑賞されました。

左からパスカル・ルラン、フィリップ・セトン駐日フランス大使夫妻、ヴラディミール・ヤヴァチェフ氏(撮影:吉村昌也)
左からパスカル・ルラン、ロレンツァ・ジョヴァネッリ氏、フィリップ・セトン駐日フランス大使夫妻(撮影:吉村昌也)

アンスティチュ・フランセ日本は、2012年にフランス大使館文化部と東京日仏学院、横浜日仏学院、関西日仏学館、九州日仏学館が統合し誕生したフランス政府公式機関です。日仏の文化交流活動のほか、フランス語講座を開講し、フランス発の文化、思想、学問を発信しています。

2022年7月、フランスの文化を学ぶクラスから講師と生徒20人が来場し、本展を鑑賞しました。展示を通じてクリストとジャンヌ=クロードの情熱に触れただけではなく、講師のセドリック・リヴォー氏自身が実際に体験した「包まれたポン・ヌフ、パリ、1975–85」の感動を伝えるなど、フランス人、フランス文化を学ぶ人、それぞれの視点から感じることを語り合う時間となりました。

2022年6月23日、企画展「クリストとジャンヌ=クロード "包まれた凱旋門"」に関連して、オープニングトーク「『包まれた凱旋門』の実現とこれから」をオンラインで開催しました。

本プログラムには、本展特別協力のクリスト・アンド・ジャンヌ=クロード財団から、ディレクターでありクリストの甥のヴラディミール・ヤヴァチェフ氏と、同財団ディレクターのロレンツァ・ジョヴァネッリ氏、展覧会ディレクターのパスカル・ルラン、モデレーターとして21_21 DESIGN SIGHT アソシエイトディレクターの川上典李子が出演しました。
クリストとジャンヌ=クロードの人生と、2021年にパリで実施された「包まれた凱旋門」について、また本展をつくり上げるプロセスや見どころについて語り合いました。

まず川上が、「包まれた凱旋門」プロジェクトの背景についてヴラディミールに問います。
「包まれた凱旋門」のプロジェクトの構想は、1961年にクリストが作成したフォト・モンタージュから始まり、60年の時を経てプロジェクトは実現しますが、驚くことに2017年に動き出したその認可の進行はとてもスムーズだったと説明しました。それは、1985年のパリでの大規模なプロジェクト「包まれたポン・ヌフ」が非常に素晴らしい記憶としてパリの人々に残っていたからだといいます。
続けて、実施にあたり乗り越えなければならなかった課題はどんなことだったのか、川上は問いました。
ヴラディミールは「世界的に有名なモニュメントを包むことは、価値を付けられないほどの重みがあった。また、2020年に他界したクリストが現場にいなかったため、その喪失感で気持ちを維持していくことが困難だった。」と述べました。

スタジオで「包まれた凱旋門」のドローイングを描くクリスト、ニューヨーク、2019年9月21日
(Photo: Wolfgang Volz ©2019 Christo and Jeanne-Claude Foundation)

次に、川上からロレンツァへ、活動を記録し、整理して伝えるアーカイブの仕事について尋ねました。
ロレンツァは2016年に実施されたイタリア・イセオ湖でのプロジェクト「フローティング・ピアーズ」に2014年から参加し、現場で活動する楽しさを知っていることに触れ、クリストとジャンヌ=クロードの作品の特性でもある"期間限定であること"が、美しさや素晴らしさをより一層濃厚にしてくれると語りました。
また、自身が担当しているアーカイブの重要性については、「作家や作品の情報はもちろん、アーティストの人生や、手がけてきた芸術を理解するための手がかりにもなる。今後の研究においても極めて重要な価値のある資料にもなり得る。」と述べました。そして本展では、本来知ることが難しい、プロジェクトに関わる人々の姿をきちんと伝えることが出来ていると続けました。

凱旋門の外壁の前面に布を広げている様子
(Photo: Benjamin Loyseau ©2021Christo and Jeanne-Claude Foundation)

最後に本展ディレクターのパスカル・ルランから、展覧会をつくりあげるプロセスを説明しました。本展への参加が決まった際にパスカルがまず行ったことは、クリスト・アンド・ジャンヌ=クロード財団から手に入れることのできる資料をすべて集め、それらに目を通すことでした。「パリの規模や包まれた凱旋門のスケール、制作のプロセス、またプロジェクトに関わる人々の技術を、説明文ではなく、視覚的に伝えられる展覧会構成を目指した。」と述べました。

会場風景(撮影:吉村昌也)

トーク終盤では、視聴者から三者への質疑応答も実施されました。今後の展望として、アラブ首長国連邦の砂漠に41万個のドラム缶を積み上げるという、1977年から進行中のプロジェクト「マスタバ」についても触れました。「包まれた凱旋門」プロジェクトと今後の二人の活動の紹介を通して、クリストとジャンヌ=クロードが大切にしてきたことをもうかがい知ることのできる、貴重な機会となりました。

2022年6月13日、企画展「クリストとジャンヌ=クロード "包まれた凱旋門"」が開幕しました。

開幕日である6月13日は、クリストとジャンヌ=クロード二人の誕生日です。クリストは1935年6月13日、ブルガリアのガブロヴォで生まれ、ジャンヌ=クロードは同年同日にモロッコのカサブランカで、フランス人の両親の元に生まれました。
本展は二人のパリでの出会いに始まり、「包まれた凱旋門」の構想から実現までの長い道のりをさまざまな手法で展示します。

長い年月をかけ、さまざまな困難を乗り越えて実現へと向かう、ポジティブで力強い姿勢。また、そのような二人の強い思いの元に集まってきた仲間たちの存在があるからこそ、今までだれも見たことのない作品を生み続けることができるのです。
激動の時代のなかにあってもなお状況を切り拓き、喜びをもたらす創造の大きな力そのものに目を向けます。

会場風景(ロビー)
会場風景(ギャラリー1)
会場風景(ギャラリー2)
会場風景(ギャラリー2)
会場風景(ギャラリー2)
会場風景(ギャラリー2)

撮影:吉村昌也/Photo: Masaya Yoshimura