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2008年8月 (2)

8月17日、「祈りの痕跡。」展ディレクターの浅葉克己によるスペシャルガイドツアーが行われました。ツアーは、居庸関のハタキで頭の埃を払うことから始まります。最初のコーナー「痕跡」では、棟梁であった神前弘が80歳から毎日つくり続けた『おじいちゃんの封筒』約700点や、ポスタービジュアルにもなっている大嶺實清の『家 〜風の記憶シリーズ〜』、木田安彦『不動曼陀羅』などに出会います。人に「怒った顔が不動明王に似ている」と言われたことから、余った絵具で自画像のつもりで描き始めたという木田の「増殖する絵画」は650点。作家は、1000点できたらまた1から描き始めようと考えているそうです。

次のコーナー「文字の世界」では、まず、浅葉が日常の出来事やアイデアスケッチを書き留めた『浅葉克己日記』を鑑賞し、7年分の日記から、浅葉の創造の軌跡を辿ることができます。杉浦康平『文字の靈力(れいりき)』では、「春」という文字を着る小袖や「福」という文字を飲む酒器など、一風変わった文字を楽しみながら、その豊かな広がりを感じられます。浅葉が吉村作治の協力で古代エジプト王の名前を重さ1トンの御影石に刻んだ『ヒエログリフ』、同じく楠田枝里子協力の『ナスカ・パルパの地上繪』などで、古代人のコミュニケーションに思いを巡らせた後は、「アジアは文字の宝庫」という浅葉が17年間中国の奥地、麗江に通い続けて研究したトンパ文字の新作『トンパ教典「黒白戦争」』が登場します。世界で唯一の「生きている象形文字」から、数千年間手書きでのみ伝えられてきた物語を読み解きます。また、今では失われたカードもあるという『トンパタロット』や、浅葉の貴重なコレクションである『トンパ教典』も、その秘められたエピソードが聞き逃せない展示品です。

この他にも、円空の「護法神」、長さ13mもある江戸時代の万能守「九重守」など、最後の展示品である服部一成『おみくじ』まで、見どころたっぷりの本展を、ディレクター自らによるユーモアあふれる解説でめぐるスペシャルガイドツアーに、参加者は大満足の様子でした。次回のスペシャルガイドツアーは、9月7日(日)を予定しています。ぜひ、ディレクター自身の解説を体験してみて下さい。

8月3日(日)、東京ミッドタウンホールにて、「知の編集者」松岡正剛と「地球文字探険家」浅葉克己によるスペシャルトーク「動く文字、定める文字」が開かれました。

浅葉克己×松岡正剛


「文字はいつも体の動きと対応している」という松岡は、文字の身体性についての考え方を披露し、「人は常に"跡"を残している。その"跡"を大事にして行くかどうかによって、文化は変わってくる」と語りました。また、「一本の線で地球を表していきたかった」という浅葉は、22歳の頃、1mmの中に10本の線を引くことに成功した秘話を公開し、「書いていると発見することがある」と、日課である書や制作日誌を紹介しました。
トークの後半では、中国の殷墟(インキョ)で発見された甲骨文字から、漢字の成立に大胆な解釈を加え、21世紀の文字の世界を切り開いたと言われる漢字学者の故白川静博士のビデオを鑑賞。300人を超える来場者は、「文字とは命がけのもの」という漢字の源流に思いを馳せました。松岡と浅葉がこれからのデザインについて議論し、手旗信号で締めくくられたトークは、大きな拍手につつまれました。

また、トークの後には、「祈りの痕跡。」展 特別関連冊子「魂跡抄(コンセキショウ)」の発売記念サイン会が行われました。松岡と浅葉がディレクションし、出展作家をはじめとした古今東西の人びとによる多様な痕跡をあつめた「魂跡抄(コンセキショウ)」は、限定1000部の発行です。ぜひ会場で、手にとってご覧ください。

魂跡抄 魂跡抄