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2023年1月 (2)

2021年にパリで実現した「包まれた凱旋門、パリ、1961–2021」では、モニターと呼ばれる約350人もの案内スタッフが作品の周辺でプロジェクトの説明などを行いました。過去のプロジェクトにおいてもクリストとジャンヌ=クロードは常に公共性を重視し、地域住民から政治家まで、その作品を取り巻く人々との話し合いを欠かさずに続けてきました。プロジェクトの準備段階で周りの理解を育むだけではなく、完成後もその作品を囲み、他者と「話し合うこと」で意見交換が生まれることを大切にしていました。

パリでのモニター(案内スタッフ)の様子
Photo: Benjamin Loyseau © 2021 Christo and Jeanne-Claude Foundation

本展でもクリストとジャンヌ=クロードのそのようなフィロソフィーを取り入れ、会場内では「展覧会スタッフ」が来場者と会話をしながら、展覧会やクリストとジャンヌ=クロードのアーティスト活動について説明を行うなど、作品と来場者の架け橋となりました。

展覧会開催前から一般公募で集まった展覧会スタッフは、アーティストや作品に関する特別なレクチャーを受けトレーニングを重ねました。そして会期中には、アーティストや作品の魅力を伝える活動や、来場者と語り合いながら会場を案内する「コミュニケーショツアー」を実施しました。それぞれのスタッフが経験を重ねながら、来場者の質問から話題を発展させたり、自分の好きな作品の前で案内をしてみたりと、展覧会の内容をより深く伝えられるよう工夫しながら取り組みました。

展覧会スタッフの案内を受けた来場者からは、「このように展覧会スタッフと話せる機会は有り難い」といった声や、「作品の内容がより深くわかりました」、「楽しく勉強になりました」といった声が寄せられました。



また、活動を終えた展覧会スタッフからは、「来場者とともに感じた内容を話し合うことで、お互いの考えを整理するようなコミュニケーションを目指して活動しました。」「いろいろな国の方と、クリストとジャンヌ=クロードの作品世界を語り合えるのは幸せなことだと感じました。」という感想があり、来場者だけではなく展覧会スタッフにとっても、発見や喜びを感じられる取り組みとなりました。

国籍や年代もさまざまな展覧会スタッフの活躍により、子どもから大人まで本展を訪れた多くの来場者に、展覧会を通してクリストとジャンヌ=クロードのプロジェクトに対する思いや、壮大な作品の魅力を多角的に伝え、ともに語り合うことができました。

夏のキッズプログラムでは高校生の展覧会スタッフも活躍しました

11月上旬、港区立南山小学校の3年生と4年生が二日間にわたって来館し、企画展「クリストとジャンヌ=クロード "包まれた凱旋門"」を見学しました。

展覧会への理解を深めるため、紙芝居を使用しながら「凱旋門の高さはどのくらい?」「布とロープはどうしてこの色を選んだの?」などのクイズを盛り込んだガイドツアーを行いました。

児童の皆さんにとっては初めての美術館鑑賞となったようですが、非常に熱心に話を聞き、クイズに参加し、映像作品に見入る様子が印象的でした。後日先生からは「クリストとジャンヌ=クロードの『夢を叶えたい』という情熱と、その想いに賛同し作品に関わった方達の輝くような表情から、生き方そのものを学ぶことができた」との感想が届きました。

今回の見学が、今後の美術鑑賞のきっかけとなることを願っています。