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2023年4月 (1)

2023年3月、企画展「The Original」のオープニングトークを2回にわたって開催しました。オープニングトークvol.1では、本展ディレクターの土田貴宏と会場構成を担当したデザイナー吉田裕美佳が出演し、オープニングトークvol.2では、本展のグラフィックデザインを担当した飯田将平と、プロダクトの撮影を担当したゴッティンガムが土田と共に出演しました。

オープニングトークvol.1 の様子

「The Original」というテーマについて吉田は、Originalに「The」が付くことから、当初は個性の強いプロダクトが並べられると想像していたと言います。しかし、吉田自身「The Original」に当てはまるプロダクトとは何かを考えていくうちに、身の回りの暮らしになじむプロダクトも当てはまるのでは、という気づきを得たと語りました。

会場空間においても、プロダクトを淡々と展示するのではなく、ギャラリー1でのスタイリングを通じた展示や、ギャラリー2でのプロダクトの展示では、暮らしを想起させる空間になるよう意識したと話します。会場では、展示室らしい白い壁ではなく、全体的に生活になじむようなベージュトーンの色が使われています。ベージュだけでも3色ほど使用し、その結果、空間の奥行きを体感したり、展示全体に多角的で幅広い印象を感じたりする効果もあったと語りました。

会場風景(ギャラリー2)
撮影:木奥恵三

土田は、本展の展示プロダクトを選出する「選定会」の詳細についても語ります。当初は300点以上のプロダクトが展示の候補として挙がりましたが、企画原案の深澤直人、企画協力の田代かおる、そして土田の3名が議論を重ね、最終的に約150点ほどのプロダクトに決定しました。
本展には「並はずれた、独創の力。」というキャッチコピーがついていますが、力があれば時代が経ってもつくられ続けるという考えのもと、希少性の高いアートピースのようなプロダクトではなく、現在でも流通しているプロダクトを展示の大半に選んだところが本展のポイントだと土田は語りました。

選定会の様子

その後は、展覧会の順路に沿って展示プロダクトの魅力や見どころを語り、準備段階での裏話もいくつか紹介しました。たとえばレゴ®ブロックについて、1940年代に積木の素材にプラスチックを用いたことと、つけたり外したりという機能を持たせたことが、先見性がありオリジナルではないかと感じた点だと言います。また、課題となっていたその展示方法については、吉田が図案を提案し、会期直前に土田が黙々と組み立てたというエピソードを紹介しました。

ギャラリー2で展示しているレゴ®ブロック
撮影:木奥恵三

また、トーク中に土田から、21_21 DESIGN SIGHTの建築そのものも「The Original」のひとつに含んではどうか、という提案がありました。開幕後、土田が執筆したキャプションを会場内で追加展示しています。ぜひご覧ください。

本展ディレクター土田貴宏によるキャプション

オープニングトークvol.2に出演した飯田将平は、展覧会のポスターやフライヤー、チケットなどの広報用印刷物と、会場内の壁面グラフィックやパネル、キャプションなどのグラフィック全般を担当しました。ゴッティンガムは、それら印刷物のための写真撮影に加えて、会場内の壁面に大きくレイアウトされたプロダクトの撮影も担当しました。

オープニングトークvol.2の様子
会場風景 展示プロダクトの関連性を表すグラフィック(ロビー)
撮影:木奥恵三
会場風景 写真を大きくレイアウトした壁面のグラフィック(ギャラリー2)
撮影:木奥恵三

「The Original」という本展のテーマについて、ゴッティンガムは徐々に解釈が変化していったと語ります。Originalと単数形で表現されていることに着目し、各プロダクト個別の独創性に焦点を当てるというよりも、展示プロダクトや会場のグラフィック、キャプションなども合わさって、展覧会総体が「The Original」なのではないか、と感じるようになったと話しました。

本展では、ポスターやチラシなどの印刷物に加えて、会場の壁面にレイアウトするプロダクトの写真を約50点撮り下ろしています。どのプロダクトを会場の壁面グラフィックに取り入れるかについて、土田は、小さいプロダクトは特に、写真によってディテールを拡大することができるので、詳細な箇所まで見ることができる点で意義があると考えたと語りました。

会場風景(ギャラリー2)
撮影:木奥恵三

また飯田は、実物のプロダクトが会場には並ぶので、写真は違った側面を見せる方がよいと考え、ゴッティンガムと相談し、製品写真のように良いところが引き立つ写真ではなく、あえて手持ちカメラを使用する撮影手法を選んだと語ります。結果として重力を感じない浮遊感のある写真となり、たとえば「プラットナー コーヒーテーブル」など、プロダクトの思いがけない表情を発見できたと語りました。

ウォーレン・プラットナー「プラットナー コーヒーテーブル」(1966、ノル)
PHOTO: UNTITLED (THE FORMS THAT DESIGNERS FIND OUT #152), 2022 © GOTTINGHAM
IMAGE COURTESY OF 21_21 DESIGN SIGHT AND STUDIO XXINGHAM

ゴッティンガムは、全てのプロダクトに対して等価に扱うように意識し、それは撮影手法にも関連したと話します。具体的にはライトや絞りを単一にしたフラットな撮影を行いました。プロダクトに力強さがあれば、どこからどのように撮っても強さや魅力は残るだろうという仮説があったそうです。

ゴッティンガムが手持ちカメラで撮影する様子

オープニングトークでは、出演者それぞれの「The Original」に対する考えや、開催に至るまでの裏話など、幅広く語り合う内容となりました。
会場にお越しの際は、約150点の展示プロダクトに加えて、その魅力を伝えるテキストや写真、グラフィック、会場空間に注目しながらお楽しみください。