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企画展 リー・エデルコート ディレクション 「ポスト・フォッシル:未来のデザイン発掘」展
ディレクターからのメッセージ
大転換の時代が到来しました。
社会は今や前世紀と永遠に決別しようとしています。今日では問題視されたり疑問が示されたり、破綻をきたしている創造行為におけるさまざまな決まりごと、理論的な諸ルール、さまざまなスティグマ(汚点)を断ち切るために。そして、物質至上主義を脱却し、代わりに、慎ましく地に足がつき、組み立て直された状況を実現するために。
ここ数十年で最悪の金融危機の余波を受けて、流麗華美な、デザインのためのデザインの時代は終わりを告げています。新世代のデザイナーたちは、彼らのルーツをたどり直し、自分たちの地球を今一度清め、時には世の始まりにも遡りながら人類の歴史を研究しています。
このプロセスを通して、彼らは自分たちのデザインを考案し、具体化していきます。素材はまさに自然でサステイナブル(持続可能)なものを中心とし、とりわけ木材や皮革、パルプやファイバー、あるいは土や火を好みながら、現代の穴居人さながらにシェルターやさまざまな道具、手づくりの機械類を新たにデザインし、つくり直しています。また、古代のさまざまな儀式を、より簡素な、しかしながら満ち足りて充実したライフスタイルを創出するべく再解釈しています。明日のフレッド・フリントストーン(*1)のように。
骨格構造は、生物の生長過程に倣った太古の住居や千年来のさまざまな造形物を特徴づけます。また、手吹きガラスや手焼きのうつわが未来の食卓を彩り、いつしか食されなくなっていた野菜や地元で収穫された旬の食べ物が盛られ、さらなるスローフードが提案されることでしょう。
素材は概して地味で慎ましいものとなるでしょうが、しかしながらこの世代のデザイナーたちは、地球が大地に秘める富、すなわち鉱物や合金やクリスタルの利用にも誘なわれ、艶、そして時には輝きまでをも、これら一連のフォッシル(化石)のようなコンセプトとクリエーションに付加します。これらのデザインでは、じきに復活する運命にあるアルテ・ポーヴェラ(*2)の本質に共鳴するところも、時に見ることができるでしょう。
こうした動きの主要素となっているのは"自然"です。ここでは自然はもはや無邪気で情熱的なエコロジー言語の文脈では用いられていませんが、しかし、さらに新しい時代にふさわしい成熟した哲学として用いられています。提起されるべき問題を、提起すること......。
より豊かになるために、より少ないものでやっていけるでしょうか?
デザインは魂を持ち、それゆえ生気に満ちたものとなりうるでしょうか?
人はより意味ある消費の方法を見つけられるでしょうか?
私たちは、過去と決別し、新たな未来を創造できるでしょうか?
リー・エデルコート
*1 アメリカのテレビアニメ「原始家族フリントストーン(原題:The Flintstones)」の主人公。
*2 1960年代後半にイタリアで起こった芸術運動で、美術評論家であるジェルマーノ・チェラントの命名。原義は「貧しい芸術」。セメントなどの工業素材、石や木などの自然の素材を用いた作品が生まれた。