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「アーヴィング・ペンと私」 vol.11 高木由利子
9月16日から開催中の「アーヴィング・ペンと三宅一生 Visual Dialogue」展にあわせ、各界をリードするクリエーターの方々に、ペンの写真の魅力について語っていただきます。
自分と真逆だから惹かれる、ペンの写真
──高木さんはご自身の作品集でPLEATS PLEASE ISSEY MIYAKEの服を撮影されていますが、ペンさんの撮り方とは全然違いますね。
高木由利子(以下、高木):
今まで誰にも言ったことがなかったんですけど、実は私、すごく彼の写真を意識していました!(笑)すごくおこがましい話なんですけど、一生さんの服=ペンさんの写真というイメージがあまりにも強かったので、私が撮るんだったら、彼が絶対撮らないであろう写真を撮ってみたいと密かに思っていたんです。
ペンさんの写真には圧倒的なスタイルがあってピーンと張りつめてる感じ。彼の現場には行ったことがないけれど、きっと音も鳴っていない静かな空間で緊迫した空気なんだろうなと思います。逆に私は、服を着ている人の計算されない表情とか空気感をとらえるのが好きなのですが、私が写真を撮るときも実はすべて演出しているので、その中から生まれ出る人や服の自然な動きを捉えようとしています。
今回展覧会で改めてペンさんの写真を拝見して、その計算し尽くされた重みと軽やかさの融合に感動しました。現在の写真や服の傾向とは真逆。今は軽いのが皆好きでしょう。緊迫って言葉も流行らないし、重いものは避けられる。そんな中でペンさんの力強い写真は素晴らしい非日常性を持って、若い人達にも新たなメッセージを送っていると思います。
──ペンさんと三宅さんのコラボレーションでは、お互いに言葉を交わさず作品だけを見て、一切注文もせずにやりとりが繰り返されたようですが、高木さんの場合はいかがでしたか?
高木:一番最初にインドに行く時、一生さんにプリーツを貸して欲しいとお願いしたら、「何するの?」とおっしゃったので、「海外で出会った現地の人にPLEATS PLEASEを着てもらって撮影をしてみたい」とお答えしたところ、「ほぉ、いいんじゃないか」と貸してくださったんです。それは60着。帰国後に一生さんのために会社でスライドショーをしたら、とっても感動してくださって。そこからケニア、中国、モロッコとシリーズで撮影しました。ペンさんの写真もそうだと思いますが、本当に自由に撮っているのを、信頼してくださって、結果の写真だけを見て認めてくださる一生さんは素晴らしいと思います。
──高木さんの最近のお仕事を教えてください。
高木:最近取り組んでいるのは「THREADS OF BEAUTY」というシリーズです。いままで、日本から服を持っていって世界中の人たちに着てもらって撮影していたのですが、そのうちに彼らが普通に着ている伝統的な服の重要性と格好良さに気づかされたんです。イランの遊牧民やインド、中国等12カ国くらいを旅しながら、各国の人たちが日常的に着ている服に着眼点を置いて撮影続行しています。
(聞き手:上條桂子)
高木由利子 Yuriko Takagi
写真家
東京生まれ。武蔵美術大学にてグラフィックデサインを学ぶ。イギリスのTrent Polytechnic にてファションデザインを学ぶ。フリーランスデザイナーとしてヨーロッパで活躍。以後、写真家として独自の視点から衣服や人体を通して「人の存在」を撮り続ける。撮影地は、日本を拠点に、アジア、アフリカ、南米、中近東に及び、現在撮影旅行続行中。
コレクション:東京国立近代美術館、原美術館、神戸ファッション美術館、目黒美術館、横浜美術館、後藤美術館、上海美術館。
出版:Nus intimes(用美社)、Confused gravitation(美術出版社)、IN AND OUT OF MODE(Gap Japan)、Skin YURIKO TAKAGI X KOZUE HIBINO(扶桑社)
http://yurikotakagi.com/