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2013年7月 (6)
2013年7月27日、「カラーハンティング展 色からはじめるデザイン」関連プログラム「想像する色彩」を開催しました。
まず林は本展を「色について考える、なぜこの色なのかに立ち戻る展覧会」と言い、展示作品「ライオンシューズ」を例にとり、環境における色の違いについて、ギリシア彫刻の経年による退色に触れました。そして話は後半に進み、ゴッホをテーマに彼独自の色世界に聞き手をいざないました。ゴッホの作風がめまぐるしく変化したことに対し、彼が純粋に環境の変化を受けとめることによって、色のあり方もその都度変えていたと述べました。
「ゴッホが自身の色のあり方に向き合ったように、展覧会にいらっしゃる方々も、展示作品を通して自分の色のあり方に想いを馳せてほしい」と話を結びました。
NHK Eテレの番組「デザインあ」及び、2013年2月8日 - 6月2日に21_21 DESIGN SIGHTで開催された「デザインあ展」が、第7回キッズデザイン賞 経済産業大臣賞を受賞しました。
撮影:吉村昌也
2013年6月21日より開催中の「カラーハンティング展 色からはじめるデザイン」。参加作家・企業のインタビューなどを通して、展覧会の魅力やプロセスを連載でお伝えします。
「スカイダイアリー」は、ふたつの展示作品からなるプロジェクト名だ。ひとつは藤原 大がカラーハントした365日分の空のカラーチップのインスタレーション。もうひとつは、それらの空の色をコンセプトにつくった本である。
このプロジェクトは展覧会企画の当初から藤原の頭の中にあり、本をつくること、デザインをイルマ・ブーム、編集を太田 佳代子という役割分担も固まっていた。ふたりから快諾も得ていたのだが、多忙なブームのスケジュールが確定し、来日・滞在したのが5月23〜29日。これにあわせてロッテルダムを拠点としていた太田も合流し、集中して本のデザインを行なうことになった。
ブームの来日を前に、藤原は協力企業である株式会社 竹尾(以下、竹尾) の見本帖本店で本のための紙を選んだ。持参したカラーチップに照合しながらの作業で、当初は竹尾があつかうすべての種類の紙からの選択も考えた。だが、メールのやりとりをするなかで、ブームの意見もあり、最終的には「NTラシャ」という単一の紙から空の色に合致するものが選ばれた。
NTラシャは、1949年に開発された日本を代表するファインペーパー(高級印刷用紙)だ。コットンを含む温かな風合いと高級感が羅紗(らしゃ)織に似ているところから命名された。115色というカラーバリエーションの豊富さも大きな特徴で人気を得ている。
さて、5月26日、オランダ王国大使館 大使公邸で「イルマ・ブーム 来日記念トーク」が行われた。トークでは太田佳代子が聞き手となり、ブームが手がけてきた本のデザインやエピソードが語られた。
ブームのブックデザインは、紙やタイポグラフィの選択、コンテンツそのものに関係づける色遣い、小口の処理・ミシン線やエンボスの使用といった仕様のすべてが、機能性と美しさをあわせもつ。トランクに詰め持参したそれぞれの本を、手元のカメラでプロジェクターに映し出しながらのブームの話はウィットに富み、オープンな人柄を滲ませつつ「私は本の限界を探っているのです」とデザイナーとしての信念を語る、素晴らしいものだった。
インタビューはトーク終了後に行われた。太田 佳代子と藤原 大にも同席してもらい、本づくりについて訊いた。
──3人はどのように知り合ったのですか?
藤原:2010年、アムステルダムの熱帯美術館で「カラー・イン・タイム」というイベントがあり、招かれてトークをした時におふたりに初めて会いました。
ブーム:大のトークはカラーハンティングについてでした。今まで知らなかった色の話で、私は新しい友だちを見つけたと思ったんです。
太田:私はロッテルダムにいたのですが、イルマから電話で呼び出され、すぐに電車に乗ってアムステルダムに向かいました。カフェでお会いした藤原さんが、同じプレゼンテーションをしてくださったので感激したのを憶えています。
藤原:おふたりとも、クリエイティブで柔らかい印象で、何か一緒にできたらと思いました。
──その時に空の色の構想があったということですか?
藤原:空の色をとろうと思い、着手したのは2011年の震災の後です。自分が生きているのが、地球上に広がるひとつの空の下であるということを意識するうちに、空の色は最も根源的な色ではないかと思いました。朝から午前中にかけての空の色を毎日とっているうちに、ダイアリーをつくるのがいいかなと思って太田さんに相談したんです。
太田:すぐにイルマにメールを書きました。
──「空のダイアリー」というコンセプトですね?
ブーム:メモリーブックとして考えています。大の365日の記録をかたちにし、それを使う人それぞれの記録や思いが重ねられるようにできたらと思います。最初は、365日分の特別な色を扱う本になるのかと思っていました。でもそうはならなかった。実際は24色を使うことになります。
藤原:NTラシャという紙から、僕がカラーハントした色を選んでいったら24色だったということです。出張などで作業ができなかった日は、白としました。
ブーム:365色ではなく24色。数が少ないのは問題ではあるけれども、逆に面白くもできるはずです。大が24色を選んだことには理由があるのですから、それをどのように彼の考えに近づけて表現するか、その解を見つけるのが私の仕事です。
太田:色という情熱の対象を共有しているおふたりの本を成功させる。それが私の役割ですね。今回は紙のクオリティが重要なポイントとなっていますし、日本の印刷や製本技術を活かしたいというのがイルマの希望です。
インタビューの後、ブームはデザイン案をブラッシュアップする作業を続け、完成した本が会場に展示されている。《空のいろ・日記帳》である。1ヶ月ずつ冊子にまとめられた12冊が蛇腹のように綴じられた体裁で、通常は奥付に入れるすべてのデータが背に刷られている。高度な技術が要求される製本は美篶堂が手がけた。24色の紙にはそれぞれ決められた位置にタブが付けられ、小口となる。表紙にはカラーチップをはさむためのスリットが切られている──使う人が主体的にこの本を変化させていくことで、特別な日記帳になるようにというイルマ・ブームの思いが込められている。(了)
構成・文:
カワイイファクトリー|原田 環+中山真理(クリエイティブ エディターズ ユニット)
2013年7月13日、伊賀公一によるトーク「カラーユニバーサルデザイン」を開催しました。
伊賀はまず、光、目、脳の3つがあってはじめて人が色を認識すること、人類の色の見え方は多種多様であることなど、色覚についての基本を丁寧に解説しました。続いて、色覚や色弱者についての研究を社会に還元するために自身も設立に参画した、カラーユニバーサルデザイン機構の活動を紹介しました。
また、参加者に色弱者の色覚を疑似体験できる眼鏡を配布し、人にはそれぞれ色の見え方に特徴があり誰一人として同じではないこと、カラーユニバーサルデザインの必要性を、身近な事例を通して実感できるトークとなりました。
2013年2月8日 - 6月2日に21_21 DESIGN SIGHTで開催された「デザインあ展」が、ADCグランプリを受賞しました。
現在、受賞作品、優秀作品が一堂に展示される2013 ADC展にて、「デザインあ展」のポスター、会場写真などが展示されています。ぜひご覧ください。
2013 ADC展
2013年7月4日(木)- 29日(月) 11:00 - 19:00 日曜・祝日休館 入場無料
ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)[会員作品]
104-0061 中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル(土曜は18:00まで)
※「デザインあ展」に関する展示はこちらの会場になります
クリエイションギャラリー G8[一般作品]
104-8001 中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル1F
2013 ADC展についての詳細は下記をご覧ください
>>ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)ウェブサイト
2013年6月21日より開催中の「カラーハンティング展 色からはじめるデザイン」。参加作家・企業のインタビューなどを通して、展覧会の魅力やプロセスを連載でお伝えします。
展覧会で紹介されている19の作品はプロジェクトとして立ち上げられ、それぞれの専門家、研究者、教育機関、学生などが参加して制作されたものだ。藤原 大はすべての作品の企画者であり、ディレクションをしている。とはいえその方法や関与の度合いは、プロジェクトによって少しずつ異なる。最初から最後まで、自分の手を動かして制作した場合もあれば、カラーハンティングし、そのままカラーチップを専門家に預け、彼らの制作に委ねた場合もある。この「浜の色音」というプロジェクトは、スペシャリストによる分業制で成功した例といえるだろう。タイトルどおり、色から音をつくるというチャレンジだ。
藤原は昨年の夏、沖縄で46カ所以上におよぶ海水浴場の砂と海の色をハントした。沖縄本島を一周、さらに宮古島、下地島、石垣島、竹富島の11カ所を加え、150のカラーチップをつくった。この旅の間ずっと耳にしていた波の音が強い印象となって残っていたので、集めた色から音をつくれないだろうかと考えた。そして、舞台やイベントの音楽、企業のヴィデオパッケージ、映画、広告など数多くの作品を手がける作曲家、畑中正人に相談したのだ。
「自然の色をハントして、それをもとに音をつくりたいということでした。僕の仕事の前に、まずチップの色から音をつくるという作業が必要なのですが、ものすごく簡単に言うと、色も音も"波動"であることが共通しているので、不可能なことではないのです」
まず、カラーチップをコニカミノルタの分光測色計で測定した。これは物体から反射された光を内蔵された複数のセンサで細かく分光・測定することによって色を数値化し、その波長成分をグラフ化して表示することができる機械だ。すべてのデータとグラフがヤマハに送られ、同社が音に変換した。
「そして僕のところに音が送られてきたわけです。この段階では、それぞれ1秒ほどの、ザーッというノイズでした。さてどうするかと、試行錯誤が始まりました。風の音や波の音など、どこかの場所の音を録音してきて、それをもとに音の情景をつくることはよくあります。でも今回のように、いただいた音をもとにつくりこんでいく仕事は、おそらく初めてじゃないかな」
「送られてきた音源のひとつひとつを、彫刻するように削って音をつくっていきました。たとえばひとつの音源の高音部を残して低音を削る、そんな作業です。展覧会で音を鳴らす時に基になった色を示したいし、動きがないとわかりにくいのではないかと思い、よくご一緒している映像作家のToshi Wakitaさんに声をかけました。カラーチップそのものを映像にして、音と同期させていく方向性が決まったら、あとは一気に進みました」
実際の展示では、畑中の言うとおり、モニターに映るカラーチップの色と音が同時に示される。単音ではじまり、次第に音が重なり、うねり、変化するサウンドスケープに引き込まれていく。安直な癒しの波の音ではなく、緊張感のあるさわやかな印象である。
「今年になってから一番むずかしい仕事でしたね。この色がこの音なんだ、という印象をもちかえっていただけたら嬉しいです」(了)
構成・文:
カワイイファクトリー|原田 環+中山真理(クリエイティブ エディターズ ユニット)