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2013年8月 (3)
世田谷美術館 企画展「榮久庵憲司とGKの世界 鳳が翔く」
現在、世田谷美術館では、企画展「榮久庵憲司とGKの世界 鳳が翔く」が開催されています。
榮久庵憲司と、彼が率いる創造集団GKは、戦後の復興期より、数々の製品をデザインすることで、日本人の生活や都市空間の近代化の一翼を担ってきました。その領域は、日ごろ街中で目にする日用品やオートバイから、博覧会場の施設やサイン類、都市のインフラストラクチャーまでと、多岐にわたります。
本展では、製品化されたものやその模型、将来へのプロポーザル、さらに人と自然と道具が美しく共生する世界を具現化したインスタレーション等によって、榮久庵憲司とGKが展開してきた、デザインの世界像が紹介されています。
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三宅一生による企画公演「青森大学男子新体操部」動画公開中
2013年7月18日、21_21 DESIGN SIGHTディレクターのひとりである三宅一生による企画公演「青森大学男子新体操部」が、国立代々木競技場 第二体育館にて開催されました。
演出・振付家として参加したダニエル・エズラロウによるテーマは「舞い上がる身体、飛翔する魂」。地球、生命、人間をつなぐ「水」をモチーフに、大自然の驚異とそこに育まれる生物たちが表現されました。
希望の光を象徴する若者たちの新体操演技と情感豊かなダンスパフォーマンスに、会場は大きな拍手と歓声につつまれました。
現在、ISSEY MIYAKE INC.のウェブサイトで、映像作家・中野裕之による公演のショートフィルム(38分)をご覧いただけます。
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2013年6月21日より開催中の「カラーハンティング展 色からはじめるデザイン」。参加作家・企業のインタビューなどを通して、展覧会の魅力やプロセスを連載でお伝えします。
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肌色のメガネをつくりませんか。本展ディレクター、藤原 大がJINSにこう持ちかけたのが「肌色メガネ」プロジェクトのはじまりだった。
JINSは、パソコン用の機能性メガネ「JINS PC」やデザイン性の高いメガネをリーズナブルな価格で提供することで人気を誇るアイウェアブランドだ。
プロジェクトを担当したデザイナーの赤羽 民とMD(マーチャンダイザー:商品に関する全ての管理を行なう)の伊藤啓子に展示までのプロセスを振り返ってもらった。
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伊藤:このプロジェクトについて初めて聞いたときにはびっくりしました。そして斬新だなと思いました。藤原さんからは、具体的にこれ、というのではなく、彼が語る大きな世界観に対し、こちらが何をしたいかを問われたのだと思いました。言われたとおりにつくるのではなく、一緒に考えることがこのプロジェクトなのだと。大変だけど面白そうだと感じました。
JINSでは肌色のメガネをつくったことはない。思いつくこともなかった。肌色の服はあっても、肌色のメガネは世の中に存在しない。
赤羽:入社以来、売れるものをつくらなくてはという商業的なものづくりの意識でやってきたので、なんて素晴らしい企画なんだと思いました(笑)。藤原さんの話を聞いて純粋にわくわくしました。学生時代に戻ったみたいな感じで、これから何がはじまるんだろうって。もちろん、不安もありました。ほんとうにできるのか。私は期待に応えることができるだろうかと。
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プロジェクトが始まった。肌の色をカラーハンティングする前に、2人は藤原とともに日本人女性の肌色研究を長年にわたって行なっている資生堂に赴き、肌について学んだ。そこで肌の色が個人によって違う理由や、季節によって肌の色の見え方に違いがあるということ、もっとも健康的で美しいとされる肌色とはどのような条件によって決まるのか、などを知ることができた。
伊藤:資生堂さんで肌について勉強させてもらったのは私たちにとっても有意義でした。そこから、今回のプロジェクトでは肌が美しいとされる20代前半の女性の肌の色をカラーハンティングしようということになりました。
赤羽:若い女の子を見つけるなら、原宿がいいねと。休みの日ならたくさん集まってるだろうということで、藤原さんと私、そしてうちのマーケティング室マネージャーとでかけました。
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赤羽:当日は東京がものすごい大雪で。朝からどんどんと雪が積もっていく。原宿に来てみたら、もちろん、街にはだれひとりいなかった(笑)。それで、今日は中止かと思っていたら、藤原さんが遠くの方から歩いてくるんです。雪の中を。近づいたら、ものすごくうれしそうに言ったんです。「最高だね。撮影日和だね」って。回りが真っ白だから肌色がよく映えるっていうことだったみたいです。
もちろん、原宿の通りには人っ子ひとりいなかった。が、駅に行くと晴れ着姿の若い女性が大勢集まっていた。成人式だったのだ。
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東京で大雪が降ったその日は、成人した若者には残念な一日だったかもしれない。が、赤羽たちにとってはチャンスだった。3人は会場になっている渋谷公会堂へと移動した。そこで何人かに声をかけ、その場で肌をカラーハンティングさせてもらい、最終的にひとりの女性、MOMOKAさんにモデルをお願いすることにした。
赤羽:今思うとよくあんなことできたなと思います。写真をとって、連絡先を聞かずに別れたんですよ。式が終わるのをまって、入り口で探したんです。とにかく逃しちゃいけないという必死な思いです。
伊藤:成人式の取材をする人たちがいっぱいいるなかで、「すいません、肌色とらせてください」というギャップが面白くて。あのときのことを思い出すたびに笑ってしまいます。
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Photo: 木奥恵三
こうして「肌色メガネ」の色が決まった。この色をMOMOKAさんの肌色メガネとして、質感の違う18種の素材に取り込んだ。加えて、季節によって肌色が変化する、という資生堂の研究とMOMOKAさんの肌色から藤原が発想した市松模様のプリントを施したメガネも制作した。
同時に、来場者の試着用に資生堂で得た肌色のデータを使った肌色メガネも126点制作することにした。
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メガネをつくる工場にデザインを持って行くと、職人たちは見たこともない、やったこともないメガネに難色を示した。高度な技術が必要な点もネックだった。が、試行錯誤を続けるうちに職人たちも次第にプロジェクトに引き込まれていった。
伊藤:最初は何これ?みたいな反応だったのが、一緒にやっていくうちに楽しくなってきたのか、彼らから提案してくれるようになったのです。それはすごくうれしかった。
赤羽:肌色メガネなんて......みたいな感じだったんですが、つくっていくうちに私もみんなも意識が変わっていきました。
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展示用の撮影では資生堂ビューティクリエーション研究所のメーキャップアーティスト、大久保 紀子がヘアメークを担当した。顔だけではなく、メガネ自体にもメークを施してほしいという藤原の要望を受け、多種多様なメーク道具を持ち込んでの撮影となった。撮影に立ち会った赤羽は、見ていて鳥肌が立ったという。
赤羽:新しい試みをやってみようよ、というのがうまくいってすごく面白かったですね。撮影を見ていて、これは未来のメガネだという確信みたいなものを感じました。
伊藤:この「肌色メガネ」は資生堂さんと藤原さんとJINSの3者で肌色をテーマにしたらこうなったということですね。まさに藤原さんマジックだと思いました。
できてみるまでは想像もつかなかった肌色メガネは、新しい価値をつくるためのものづくりについて一石を投じている。(了)
構成・文:
カワイイファクトリー|原田 環+中山真理(クリエイティブ エディターズ ユニット)