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建築家 フランク・ゲーリー展"I Have an Idea"「田根 剛によるギャラリーツアー」を開催
2015年10月17日、「建築家 フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"」開幕を記念して、展覧会ディレクター 田根 剛によるギャラリーツアーを開催しました。2年前、展覧会企画チームがはじめてゲーリー事務所を訪れたときのこと、「オレのマニフェストを知っているか」と切り出したゲーリーは、1枚の紙をとりだし読み上げました。このマニフェストから全てが始まった「建築家 フランク・ゲーリー展」。ギャラリーツアーでは、そんな展覧会の見どころを、完成までの裏話や数々のエピソードを交えながら紹介していきました。
ツアーの始まりは『ゲーリーのマスターピース』。ここでは、ゲーリーの3つの代表作を紹介します。安藤建築の壁面にゲーリー建築が映し出されます。田根が指摘するように、ゲーリーと安藤、2人の建築家による「対話」が、21_21 DESIGN SIGHTに新たな空間を生み出します。
続いて向かうのは『ゲーリー・ルーム』。ゲーリー事務所の雑多な雰囲気をイメージしたこの空間に足を踏み入れると、卓上に並べられた数々の「アイデアの原石」が目に入ります。見る人によってはただの石のように思えても、ゲーリーにとってはそばに置いておきたい大切なもの。ゲーリー事務所には、そんな宝物の数々が所狭しと並べられています。
壁面に広がる『ゲーリー・コレクション』では、写真や本を通して、ゲーリーの人柄や関心について紹介しています。田根も意外であったと話すのは、ゲーリーの興味が古典に向いていること。ひとつの例にバロック芸術の巨匠ベルニーニへの関心が挙げられますが、聖人が纏う衣服のドレープの美しさは、確かにエイト・スプルース・ストリートと重ねることができるでしょう。
ギャラリーの中を進むとゲーリー事務所を俯瞰できる大きな写真作品の展示にぶつかります。広々としたオフィスには模型がずらり。約120名のスタッフはこの模型と模型の間で、日々アイデアを練り続けています。出勤してきたゲーリーがオフィスをぐるりと1周まわると、プロジェクトの進行状況が一目でわかるようになっているとか。事務所の構成ひとつを取っても合理的につくられていることが伺えます。
合理的といえば「ゲーリー・テクノロジー」。1989年、ヴィトラ・デザイン・ミュージアム設立の際、完成した螺旋階段のカーブに納得がいかなかったゲーリーは、航空産業に目をつけ、ジェット機を設計するソフト『CATIA』を建築に応用すべく、新しいシステムを構築しました。3次元の模型をそのままデジタルのデータに置き換え図面化する仕組み、これがゲーリー・テクノロジーのはじまりです。また、どんなに小さなネジであっても、いつまでにどれくらい必要なのかを正確に割り出すことができるこの仕組みは、工事にかかる時間とお金の無駄を徹底的に排除できます。田根は、ゲーリー建築は「時間」を加えた「4次元」で建築をデザインするところまで進化していると話しました。
誰にも真似できないゲーリー建築の原点は「人が何かにやさしく包まれること」、田根はそのように考えます。やさしく包み込まれるような、ゆっくりと安心させるような、そんな建物をつくろうと、試行錯誤した結果に生まれた空間には、ゲーリーが好む雅楽のように「始まり」も「終わり」も存在しません。代わりに残るのは、時間と空間と人間が一体になるような感覚。田根はゲーリー建築の魅力をここに見出しました。
「アイデアの時代が始まった。」田根 剛はそう話します。ゲーリーはアイデアによって世界を変えた建築家、自らの建築を通してアイデアの持つ大きな力を社会に証明した人物です。強くポジティブな意思によってアイデアを生み出すゲーリーの姿勢は、世界が新しいアイデアを必要としているいま、私たちに大きなヒントを与えてくれるはずです。