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2017年8月 (1)
泥や絵の具などを用いて、人間と様々な動植物が織りなす絵画の制作で知られる淺井裕介。本展では、東京ミッドタウン内の土を含めこれまでに各地で採取した土を使用して、過去に手がけた作品の再構成を試みました。その制作風景の一部を、21_21 DESIGN SIGHTスタッフがレポートします。(写真:木奥恵三)
「『そこまでやるか』壮大なプロジェクト展」参加作家の一人、淺井裕介は、その完成した作品だけでなく「描き続ける」姿もよく知られます。本展のメインビジュアルで謳われている「連続制作時間96時間」とは、実際に、淺井が2016年にヴァンジ彫刻庭園美術館で展示した作品「生きとし生けるもの」の制作に連続して費やした時間です。
本展では、その「生きとし生けるもの」の再構成を試みた淺井。格子状に分割し、並べ替えた上にさらに泥で新しく絵を描きました。
まず、21_21 DESIGN SIGHT館内に、並べ替えられたパネルが設置されました。新しく描き足す作業は、すべてこの会場内で行われます。元々あった絵に、泥の絵の具が重ねられて、淺井の作品が少しずつ立体的になってゆきます。
テーブルの上には、無数の絵筆とともに、さまざまな色や粘度の土が入った透明のコップがパレットのように並べられ、それぞれ土が採取された土地も記されています。今回は、21_21 DESIGN SIGHTが位置している東京ミッドタウン内の土も、素材として加わりました。
やがて淺井の筆は元のパネルからはみ出し、白い壁にも泥絵が描かれ始めました。あらかじめ終わりを決めずに描き始めるという淺井は、絵画が完成したかと思われた後にも少しずつ描き足し続け、なかなかその手が止まることがありません。制作は、展覧会が開幕する直前まで終わることなく続きました。
本展では、こうして完成した「土の旅」を展示しています。以前描かれた絵に、新たな命が吹き込まれた本作を、ぜひ間近でお楽しみください。