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柳 正彦 (3)
21_21 クロストーク vol.3「二人が見た『包まれた凱旋門』」を開催
6月13日から始まる企画展「クリストとジャンヌ=クロード "包まれた凱旋門"」。これに関連して5月11日、柳 正彦と青野尚子による21_21 クロストーク vol.3「二人が見た『包まれた凱旋門』」が開催されました。
21_21 DESIGN SIGHTでクリストとジャンヌ=クロードにフォーカスした展示をするのはこれが3回目になります。2010年の「クリストとジャンヌ=クロード LIFE=WORKS=PROJECTS」の展覧会ディレクターを務めた柳 正彦はクリストとジャンヌ=クロードと長年にわたって協働してきました。オンライントークでは柳に、クリストとジャンヌ=クロードを中心としたグループ展「『そこまでやるか』壮大なプロジェクト展」(2017年)の展覧会ディレクターを務め、柳とともに実際にパリで凱旋門プロジェクトを体験した青野尚子が聞きました。
(文:青野尚子)
「L'Arc de Triomphe, Wrapped, Paris, 1961–2021(包まれた凱旋門)」が実施されたのは2021年9月18日〜10月3日の16日間。もともとは2020年春に予定されていましたが、春は希少な鳥が凱旋門に巣を作ること、またコロナ禍もあって延期されました。実施期間中はコロナによる移動制限もあり、海外でクリストとジャンヌ=クロードとコラボレーションしてきた柳も不安が多かったと言います。
「クリストとジャンヌ=クロードは『作っているプロセスも作品の一部。苦労が大きいほど、喜びも大きい』と言っていました。今回は行くまでのプロセスが大変だった分、それを乗り越えて間近に見た『包まれた凱旋門』には特別の感慨がありました」(柳)
実際に現地で見た「包まれた凱旋門」はどのような様子だったのでしょうか。
「僕は凱旋門が見えるところにホテルをとったので好きな時に見られたのですが、とりわけ日の出と日没時の眺めは素晴らしいものでした。太陽の光が強くなったり弱くなるのにあわせて凱旋門を包んだ布がピンク色や金色に輝くんです。週末にアーチ上部から掲げられる巨大なフランス国旗が風にはためくのもよかった」(柳)
前述したように21_21 DESIGN SIGHTでクリストとジャンヌ=クロードにフォーカスするのは今回で3度目。また「包まれた凱旋門」についてのドキュメントがまとまって展示されるのは世界でも初めての機会になります。その背景には、三宅一生とクリストとジャンヌ=クロードたちの長年の交流がありました。
「あるとき、日本で開かれたレセプションパーティーにジャンヌ=クロードがイッセイ ミヤケのドレスを着てきたんです。ジャンヌ=クロードが一生さんに『これはあなたのデザインしたドレスよ』と言ったのですが、一生さんは覚えがないという。よく見たらジャンヌ=クロードはドレスを上下逆に着ていたんです(笑)。そこで二人で人目に付かないところに行って、直してきたことがありました」と柳は懐かしそうに語ります。
21_21 DESIGN SIGHT企画展「クリストとジャンヌ=クロード "包まれた凱旋門"」では「包まれた凱旋⾨」の実現までの道のりをシネマティックに紹介します。布で包む凱旋門などのプロジェクトとはまた違う側面を見ることができます。クリストとジャンヌ=クロードはプロジェクトの現場でリアルな空気、音、日差しを感じてほしい、と語っていました。「包まれた凱旋門」を始めとするプロジェクトの『リアル』を想像しながら展示をお楽しみください。
世界各地の建造物や自然を巨大な布で"梱包"するプロジェクトで知られる、現代美術家の故クリストとジャンヌ=クロード。
二人が1961年に構想を始めたパリのエトワール凱旋門を梱包するプロジェクト「L'Arc de Triomphe, Wrapped」が、2021年9月18日から10月3日の16日間にわたり実現しています。二人の遺志を継いで60年越しに立ち現れた光景は、公式ウェブサイトで世界中から見ることができます。
これまで21_21 DESIGN SIGHTでは、2010年の「クリストとジャンヌ=クロード展 LIFE=WORKS=PROJECTS」、2017年の企画展「『そこまでやるか』壮大なプロジェクト展」を通して、二人の活動の軌跡を紹介してきました。
そして現在、ギャラリー1&2の1階スペースでは、パリの「L'Arc de Triomphe, Wrapped」プロジェクトチームから受け取った、エトワール凱旋門を包む布とロープを展示しています。本展示は10月15日まで無料でご覧いただけます。ぜひお立ち寄りください。
現地を訪れることが難しい今、少しでも多くの方がこの壮大なプロジェクトに触れる機会となることを願います。
Photo: Benjamin Loyseau
© 2021 Christo and Jeanne-Claude Foundation
「もし何らかの理由でニューヨークに住むことが出来なくなったら、東京に住みたいです。」生前のジャンヌ=クロードがよく口にした言葉だ。世界中の情報が集まる都市に魅力を感じ、また働き過ぎの日本人に自らの姿を重ねての事だったのだろう。その気持ちはクリストも同じだろう。
東京で十数年ぶりに開かれる二人の展覧会が、古くからのファンだけでなく、ものづくりの新しい発信地である六本木に集まる観客の心を掴むことに期待したい。
柳 正彦
クリストとジャンヌ=クロードこそ、現代美術のヒーローとよぶにふさわしい。最初はだれもが、不可能、と思う。それを十数年もの歳月をかけ、徐々に人々に理解させ、賛同者を増やし、ついにはその都市の市長をも虜にし実現してしまう彼らの情熱と魅力。プロジェクトのスケールの大きさはもとより、そこへ到るまでのプロセスも感動的だ。柳正彦さんはじめ、たくさんの協力者の力をひとつに集め、皆で実現へ向けて取り組む姿は、いつも大らかで、希望に満ち溢れている。
三宅一生