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そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す– (7)

企画展「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」の会期中、8月、9月には、毎週月・水・木・金曜日の朝11時から、21_21 DESIGN SIGHTのスタッフによる「めぐり方ガイド」を開催しました。

本展は「『安全な場所』って、どこ?」や「災害をどのように知る?」といった、会場に散りばめられたさまざまな「問い」を通じて、防災や災害について改めて考える展覧会です。展示を通してさまざまな取り組みを知ることや、自分とは違う多様な考えにふれる体験も、大切な「備え」のひとつです。

めぐり方ガイドでは、「問い」を軸とする本展ならではの展示構成や、特設サイトでの回答方法など、展覧会をより深く理解していただくための導入としてご案内しました。対話を通じて理解を深める貴重な機会となりました。

六本木アートナイト2025の開催に合わせ、21_21 DESIGN SIGHTでは開館時間を22:00まで延長しました。9月27日(土)には、企画展「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」の関連プログラムとして、本展ディレクターのWOWの加藤 咲と白石今日美によるギャラリーツアーを開催しました。

作品の解説を行うWOWの加藤(上)と白石(下)。

WOWの二名からは、本展にて紹介しているプロジェクトの内容や防災プロダクトのデザイン、WOWによる作品の制作意図などについて、各作品ごとに丁寧な解説が行われました。参加者はその説明に耳を傾けながら、本展のために用意された特設サイト 「みんなは、どうする?」webにスマートフォンでアクセスし、防災・災害に関する10の「問い」について考えながら会場を巡る様子も見られました。

展覧会の会期も、いよいよ残りわずかとなりました。会場では、これまでの来場者による回答が多数、映像として展示されています。さまざまな視点に触れながら、自分自身にとっての「防災」について改めて考える機会として、ぜひご来場ください。

2025年9月13日(土)、企画展「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」に関連して、「『そのとき』を、みんなで考えよう」を開催しました。

本イベントは二部構成で、第一部を「子どものための防災ワークショップ」、第二部を「大人のための防災セッション」と題して開催しました。本展に学術協力として携わる災害社会学の専門家・関谷直也と、企画協力およびテキストを手がけたデザインライター・角尾 舞が、モデレーターとして登壇しました。

第一部の「子どものための防災ワークショップ」では、小学校と中学校に通う参加者がオリジナルのワークシートを使って、本展で提示されている「『安全な場所』って、どこ?」や「十分な備えって、どのくらい?」などの災害や防災に関する問いに向き合いました。考えた内容は順番に発表し、関谷・角尾との対話も重ねることで、防災に関する知識を深めていきます。

画面奥、左から、関谷、角尾。

「あなたにとって、その後の生活に必要なものはなに?」という問いに関連しては、防災バッグに入れておきたいものをテキストやイラストで自由にまとめました。参加者からは、寝袋・寝巻き・下着・耳栓といった生活に直結するグッズや、iPad・ヘッドフォン・トランプといった娯楽のアイテム、さらには両親の存在など、多種多様な意見が挙がりました。

ワークシートに記入する様子。

関谷は、災害時は必ずしも避難所に避難するとは限らず、たとえば自宅が安全であれば在宅避難をするような場合もあると述べました。その場合に備えて、水や食料、トイレなどの「ないと生活できないもの」を、1週間分を目安として自宅に備えておくことが大切だと呼びかけます。

最後に、自身が記入したワークシートを持って記念撮影をして、第一部の「子どものための防災ワークショップ」は幕を下ろしました。


第二部の「大人のための防災セッション」では、関谷の解説を聞きながら、第一部よりも一歩踏み込んだ内容で災害や防災について見つめ直していきます。

関谷によると、私たち人間には心の平穏を保つための機能として「正常性バイアス(正常化の偏見)」というものが備わっていますが、非常時にこの防御作用が働いてしまうと、本来であれば危険な状態と判断すべき事象を「大きな問題ではない」と誤認する危険性があると言います。その対策として、日頃から災害や防災について考えておくことが非常に重要なのです。

都市においては特に地震火災に気をつけるべきで、火災から逃れるために自宅付近の広域避難場所を把握することが大切であること。災害があったときには気象庁が出す一次情報を確認し、それらの情報を理解して迅速な避難(安全確保)を行うこと。このような、改めて認識しておきたい防災に関するさまざまなトピックスを、本展で提示されている10の「問い」をもとに、関谷・角尾の両名と参加者がコミュニケーションを取りながら紐解いていきました。

セッションの終盤、参加者から寄せられた質問に関谷が答える場面では、災害時のトイレ問題についても改めて触れられました。停電、断水、排水管の破裂などが原因でトイレが使えなくなったときに備えて、たとえば携帯トイレを持ち歩いておくことは非常に有効です。
21_21 DESIGN SIGHTの1Fにあるギャラリーショップ「21_21 NANJA MONJA」では、11月3日までの会期中に、本展オリジナルデザインの携帯トイレ「ぽけっトイレ」を販売しています。名刺サイズで嵩張らず、かばんに一つ入れておくだけでも安心です。

災害社会学を専門とする関谷の知見を交えながら、防災について思考を巡らせた第二部「大人のための防災セッション」も、盛況のうちに締めくくりとなりました。

本展オリジナルデザインの携帯トイレ「ぽけっトイレ」もご紹介。

21_21 DESIGN SIGHTと同じ東京ミッドタウンに位置するサントリー美術館との協力企画として、2025年8月10日に小学生とその保護者を対象とした「サントリー美術館×21_21 DESIGN SIGHT ご近所ミュージアムツアー」を開催しました。

この企画はサントリー美術館の「みんなで楽しむ!サン美まるごとアートフェス2025」のプログラムの一つとして開催されました。企画展「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」にちなんで、サントリー美術館と21_21 DESIGN SIGHTの、建物のひみつをテーマにめぐるツアーです。両施設の建築デザインと防災設備を紹介するほか、もし展覧会鑑賞中に地震に遭遇したら「そのとき、どうする?」を考えてみる時間も設けられました。

ツアーの最後には、普段は通ることのできない21_21 DESIGN SIGHTの非常階段を通って地上に上がることができ、参加した小学生にとって特別な体験となりました。

サントリー美術館でのレクチャーの様子。
「そのとき、どうする?展 -防災のこれからを見渡す-」の会場で、展示されている「21_21 DESIGN SIGHTの防災」のパネルの前で説明を受ける参加者。
普段は通ることのできない21_21 DESIGN SIGHTの非常階段をのぼり、地上に出る参加者。
©田山達之

21_21 DESIGN SIGHTは、日々多くのお客様をお迎えする施設として、災害時の対策を平時から検討しておくことが求められています。これは、21_21 DESIGN SIGHTが位置する東京ミッドタウンのような商業施設全体にも共通する課題です。

企画展「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」では、東京ミッドタウンと連携し、東京ミッドタウンの商業施設の店長に向けて展覧会を紹介したり、防火・防災体験訓練へブース出展したりするなど、業務上、災害や防災に向き合う必要のある方々に向けてさまざまな取り組みを行っています。

8月初旬には7日、8日と2日間にわたって東京ミッドタウンで働く方を対象とした特別鑑賞ツアーを開催しました。終始メモをとられる方や、特設サイト「みんなは、どうする?」webで回答を入力しながら鑑賞される方など、参加者は非常に熱心にガイドに耳を傾けていました。

ガイドツアーの様子。
福島民報社「365日の防災欄」の前でガイドスタッフの説明を受ける参加者。

2025年7月26日(土)、企画展「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」に関連して、トーク「みんなは、どうする?」を開催しました。

本展でディレクターを務めたWOWから大内裕史、加藤 咲、白石今日美の3名が登壇し、21_21 DESIGN SIGHT館長の佐藤 卓とともに、本展の制作背景、全体の構成や展示作品一点一点の紹介、また各々の防災への考え方やこれからの防災について語り合いました。

左から、佐藤、大内、加藤、白石。

本展では、特設サイト「みんなは、どうする?」webにアクセスし、会場内に散りばめられた10の問いに答えていくことで、防災を「自分ごと」として捉えることのできる構成となっています。本トークイベントにおいても、参加者に問いを投げかけるという、本展ならではの仕組みを取り入れました。トークは各問いの順に沿って進行し、展示内容の紹介を中心に展開されましたが、合間で防災に関する4つの質問が参加者に投げかけられます。参加者は本トーク限定のサイトから自身のスマートフォンで回答することができ、回答は、個人が特定されない形でリアルタイムでモニターに投影されます。参加者の考えがその場でビジュアライズされ共有されることで、双方向のコミュニケーションを通じてトークが展開されました。

投げかけられた問いは次の4つです。
・友達と防災の話、したことある?
・どんなときに地震が来たら困る?
・防災アプリ、スマホに入れてる?
・防災バッグ、いつごろ見直した?

2つ目の問いに対して参加者からは、入浴中、旅行中、エレベータの中、地下鉄、美容室、歯医者での治療中、などいろいろな回答が出てきました。人口の多い都市部では、エレベータや地下鉄に閉じ込められ救助されるまで何時間も過ごさなければならないような事態が想像されます。WOWの3名は、本展の準備期間中に各々携帯トイレを購入したと話しました。加藤は、もしもの事態を一回でも想像してみることが心の備えにつながるといい、一度自分自身で考えたという経験をもつことが、大切なのではないかと話しました。

防災バッグ、いつごろ見直した?の質問に対しては、トーク参加者のうち回答した32名中11名が「もっていない!」と回答。

2025年7月4日、いよいよ企画展「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」が開幕します。

自然災害はいつどこで発生するか、確実にはわかりません。しかし災害から目を背けなければ、今やるべきことや、考えるべきことが見えてくるのではないでしょうか。

本展では、そもそも災害とはなにかという視点から、データビジュアライゼーションをはじめとしたリアルな状況把握や、防災に関するプロダクト、災害をきっかけに生まれたプロジェクトなど、人々が直面してきた自然災害とその周辺を広く見つめ直します。そのうえで、改めて向き合いたい、いくつもの「問い」を会場に散りばめます。あらかじめ想像しておけば、未来は少し変えられるかもしれません。

ここでは会場の様子を写真で紹介します。

会場風景(ギャラリー2)
会場風景(ロビー)
会場風景(ロビー)
会場風景(ギャラリー1)
柴田大平「防災グラデーション」
会場風景(ギャラリー1)
siro+石川将也「そのとき、そのとき、」
会場風景(ギャラリー 2)
日本郵便株式会社+寺田倉庫株式会社「防災ゆうストレージ」
会場風景(ギャラリー 2)
バリューブックス「ブックバス」
会場風景(ギャラリー 2)
会場風景(ギャラリー 2)
トラフ建築設計事務所+石巻工房「Maker Made Since 2011.3.11」
会場風景(ギャラリー 2)
WOW「みんなは、どうする?」
会場風景(ロビー)
WOW「みんなは、どうする?」
会場風景(ギャラリー 2)
佐竹真紀子「Seaside Seeds」「風景のつづき」「おばちゃんコーヒーはじめました」
会場風景(ギャラリー 2 出口)
津村耕佑「FINAL HOME」
会場風景(ロビー)
中村至男「21_21 DESIGN SIGHTの防災」
会場風景(サンクンコート)
veig「蒸庭」

撮影:木奥恵三/Photo: Keizo Kioku