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「アーヴィング・ペンと私」 vol.16 ジャスパー・モリソン

現在開催中の「アーヴィング・ペンと三宅一生 Visual Dialogue」展にあわせ、各界をリードするクリエーターの方々に、ペンの写真の魅力について語っていただきます。


加工が盛んな現代だからこそ際立つ、銀塩写真の力


──アーヴィング・ペンさんの写真との最初の出会いは、いつ頃ですか?

ジャスパー・モリソン(以下、モリソン):
1976年前後に『Worlds in a Small Room』が出版された直後、家族の誰かがその写真集を買って来ました。それがペンの写真との初めての出会いで、その本に感銘を受けました。私自身、写真に興味を持ち始めたところだったので、非常に印象深かったのです。ペンの写真はどれもごまかしが一切なく、美しい真実だけがそこにありました。

──ペンさんの写真について、どのようにお考えですか?

モリソン:彼の写真は、今でも力を完全に保っていると思います。ひょっとするとPhotoshopなどのソフトウェアによる写真の加工が盛んな現代の方が、インパクトが強まっているのではないでしょうか。彼の静物写真が特に好きで、実はスチールブロックを撮影した写真を1枚買ったばかりです。

──何か具体的なエピソードはありますか?

モリソン:アーヴィング・ペンには知り合いのような強い親近感を覚えますが、会ったことは一度もありません。こうしたエピソード以外に特筆すべきものが、ひとつだけあります。それは21_21 DESIGN SIGHTで「アーヴィング・ペンと三宅一生 Visual Dialogue」展のオープニングに参加したことです。そこで私は、真実性、ユーモア、天性のビジュアルセンス、独創性というペンの作品の特徴を、強く再認識しました。

──最後に、最近のお仕事について教えてください。

モリソン:『Jasper Morrison au Musée』というタイトルの小さな本が、近々完成します。ボルドー装飾芸術美術館での展覧会に関する本で、17~18世紀のアンティークコレクションに私がデザインしたプロダクトを組み込むという企画でした。様々な作品をそれらの「先祖」と組み合わせるという試みは、素晴らしい経験でした。今は普段どおり椅子のプロジェクトを4~5件手がけている他、靴やテレビや鋳鉄製の鍋など、様々なプロダクトの仕事にも取り組んでいます。



Jasper Morrison
Photo: Suki Dhanda

ジャスパー・モリソン Jasper Morrison

デザイナー
1959年ロンドン生まれ。ロンドンにあるキングストン美術学校のデザイン科を卒業した後(1979~82年。デザインで文学士号取得 )、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)大学院に進学(1982~85年。デザインで修士号取得 )。1984年に奨学金を得てベルリン芸術大学に留学。1986年、ロンドンで自身のオフィスOffice for Designを設立。
Jasper Morrison Ltd.は現在3箇所にデザインオフィスを構えており、ロンドン本社の他、パリと東京にもオフィスがある。テーブルウェア、キッチン用品から家具、照明、衛生陶器、電子機器、電化製品に至るまで、多岐にわたるデザインを提供。最近は腕時計や時計もデザインしている。また都市計画プロジェクトにも、随時取り組んでいる。2005年に深澤直人氏と共に「Super Normal」プロジェクトを立ち上げる。2011年にオンラインショップJasper Morrison Limited Shopをオープンした。



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