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「建築家 フランク・ゲーリー展」事前企画 第2回
「フランク・ゲーリーってどんな人?」後編

21_21 DESIGN SIGHTでは、2015年10月16日より企画展「建築家 フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"」を開催します。
展覧会開幕に先駆け、21_21 DOCUMENTSでは、本展企画協力の瀧口範子による連載企画を開始。第2回は、人々をあっと驚かせて魅了するゲーリーのユニークな仕事の数々をたどります。フランク・ゲーリーってどんな人?


ビルバオ・グッゲンハイム美術館(スペイン・ビルバオ 1997年)
FMGB Guggenheim Bilbao Museoa, 2015 (Photo: Erika Barahona Ede)

フランク・ゲーリーの名前を世界に知らしめることになった、スペイン・ビルバオのグッゲンハイム美術館とはどんな建物なのだろうか。

この建物は、バスク地方の首都であるビルバオの再建を目指してコンペが開かれて実現したものである。旧市街の端、ネルヴィオン川沿いに位置して伸びやかに建つこの建築は、何と言っても踊るような動きのある金属の外観が特徴だ。金属に光が反射する様子や、ガラス、石といった多様な素材との組み合わせが、目を飽きさせない。

驚きは内部でも待っている。高さ約50メートルのアトリウムでは、白い壁やガラス壁面が彫刻のようにうねり、未知のアートへと誘う入口になっている。また、それぞれの展示室や通路は、従来の美術館とはかけ離れた動的で躍動感のある空間になっている。

この美術館体験を一度でいいから味わいたいと、1997年の竣工以来多くの観光客がビルバオへ押し寄せた。建築によって町おこしが成功するという「ビルバオ効果」という言葉まで生まれたほど、人々にショックを与えた建物だ。

ゲーリーには、こうした大きな驚きを与えた建物作品がいくつもある。ウォルト・ディズニー・コンサートホール(ロサンゼルス)、エクスペリエンス・ミュージック・プロジェクト(シアトル)、そして最近竣工したフォンダシオン ルイ・ヴィトン(ルイ・ヴィトン財団美術館)(パリ)などがそうだ。これらの場所では、音楽やアートを伸び伸びと楽しむための空間のあり方を体感できるだろう。


ウォルト・ディズニー・コンサートホール(アメリカ・ロサンゼルス 2003年)
Image Courtesy of Gehry Partners, LLP

ルイ・ヴィトン財団(フランス・パリ 2014年) Photo: Iwan Baan

その一方、研究のための場のデザインもある。マサチューセッツ工科大学(MIT)のスタータ・センター(ボストン)、シドニー工科大学(UTS)チャウ・チャク・ウィング棟などは、研究環境の可能性を模索して、人々の関係性や、物理的、視覚的な空間の広がりなどを考察した例である。

社屋も設計している。DZ銀行(ベルリン)、インターネット会社のIACのビル(ニューヨーク)があり、またFacebook本社(シリコンバレー)では、延床面積4万平米という、広大で平らなユニークな仕事空間を生み出した。

他にも高層住居、個人邸など、手がけるプロジェクトは多様である。だが、どれにおいても緻密なプログラム検討から始まり、手作業による無数の模型製作を経て、高度なコンピュータのプラットフォームを用いて、竣工にいたるまでデザイン、コスト、工期、建設がコントロールされていくという、ゲーリーが生み出した特異なプロセスが共通している。

アイデア、手作業、生のイマジネーション、感触のある素材、そして高度なコンピュータ・テクノロジー。これらが合体しているのが、他にはないゲーリー建築の大きな特徴である。

文:瀧口範子

>>第1回「フランク・ゲーリーってどんな人?」前編
>>第3回「田根 剛ってどんな人?」