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土木の持つ圧倒的な迫力は現代美術に匹敵する、という21_21 DESIGN SIGHTディレクターの佐藤 卓。とくに、環境と土木との関係について興味があると言います。「土木展」の開幕を控えて、彼が一番楽しみにしているポイントを聞きました。
構成・文:青野尚子
土木はあたりまえの日常生活を支える、重要な構造であり土台です。橋やトンネルのように目に見える土木もありますが、人里から離れたところにあるダムや、地下で土木構造物を支える大きな基礎など、そのほとんどは目に見えません。これまでデザインの視点からは取り上げられたことがあまりないこの土木という領域を、デザインの切り口から捉えてみようという意図からこの展覧会は企画されました。
私自身はこのテーマが決まる前から土木にはとても興味を持っていました。巨大な造形物としての土木には現代アートをも超える圧倒的な迫力があります。構造、機能、経済効率、環境、どの面から見ても優れていて、しかも審美性を兼ね備えている。その土木が生み出す景色には常に圧倒されます。
土木と環境とのあまり知られていない関係も面白いと思います。たとえば東京湾を横切るアクアラインは海に柱を立てているため、環境に悪影響を及ぼすのでは、と思われがちです。しかし柱をつくるとそこに魚が集まり、魚礁になるという事実もあるそうです。この話を聞いたときから私の中で土木に対する考え方が変わり、すべての工事現場を見る目が変わりました。
この「土木」をデザインの施設で取り上げること自体に意味があると思っています。21_21 DESIGN SIGHTではこれまでも、「水」や「単位」など、通常デザインという認識がないものごとに対してデザインという視点を投げ掛けてきました。21_21 DESIGN SIGHTで土木というと一見、意外な組み合わせと思われるでしょうが、「土木展」もその意味で、21_21 DESIGN SIGHTらしい展覧会だと思います。この展覧会が私たちの日常を支えている「土木」というものに少しでも目を向けてもらうきっかけになれば幸いです。