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2016年8月 (5)
台湾・台北の松山文創園區 五號倉庫で開催中の21_21 DESIGN SIGHT企画展 in 台北「単位展 — あれくらい それくらい どれくらい?」に関連して、2016年8月20日、中村至男と鈴野浩一によるトークが開催されました。
本展では、2015年に21_21 DESIGN SIGHTで開催した「単位展」に引き続き、中村は展覧会グラフィックを、鈴野は会場構成監修を担当しました。
トークの前半は、二人がこれまでに手がけてきた仕事をそれぞれ写真や映像とともに紹介。その後、東京と台北の「単位展」について語りました。
まずは中村が、企業の社内デザイナーとして働いていた当時にデザインした自宅の引越しを知らせるポストカードに始まり、佐藤雅彦と協働したゲームソフトや「勝手に広告」シリーズ、近年出版された絵本まで様々な仕事を説明。
つづいて鈴野は、禿 真哉とともにトラフ建築設計事務所を設立するきっかけとなったホテル「クラスカ」の客室や、ひとつづきの空間が屋根の高低でゆるやかに区切られた住居、さらには「空気の器」や結婚指輪までを紹介しました。
二人の、自身の肩書きから想像される枠を超えた幅広い活動と、その根底に通じる独特の発想に、会場からは驚きの声があがりました。
トークの後半では、「単位展」におけるそれぞれの仕事を解説しました。途中、本展のメインビジュアル完成に至るまでに生まれた別のデザイン案も紹介するなど、企画秘話も。
鈴野は、展覧会の構成や展示作品が確定する前に完成した中村によるメインビジュアルが、会場構成や什器デザインのアイディアに繋がったといいます。企画チームのメンバーが、自身の担当を超えてつくりあげた本展ならではのエピソードが語られました。
21_21 DESIGN SIGHT企画展 in 台北「単位展 — あれくらい それくらい どれくらい?」は、2015年の東京での「単位展」展示作品に、台湾の企業や作家による作品も加わり再構成されています。
9月16日までの会期中、より多くの人々が本展を訪れて新しいデザインの視点を持ち帰ってくれたら、という二人のメッセージで、トークは締めくくられました。
Photo courtesy of FuBon Art Foundation
2016年8月27日、建築設計事務所の403architecture [dajiba]による「つんでみる!アーチ橋ワークショップ」を開催しました。
このワークショップでは、403architecture [dajiba]が「土木展」に出展している作品「ライト・アーチ・ボリューム」のミニチュアを工作し、古くから利用され橋の仕組みの基礎として知られるアーチの構造をより身近に体験します。
まずはじめに、403architecture [dajiba]が、アーチ橋の基本的な構造を解説します。平らな橋とくらべて、アーチ橋がどのような特徴を持っているのか学んだら、さっそく工作に取り掛かります。最初は、橋のパーツの展開図に絵をつけるところから。組み立てた時どことどこがつながるのか、橋の表面になるのはどの部分か、考えながら思い思いの絵を描いていきます。
次に、展開図の線に沿って、パーツを切り抜いていきます。このアーチ橋に必要なパーツは全部で7つ。組み立てた時に安定するよう、線から逸れないように丁寧に切ります。
パーツが切り出せたら、今度は点線に沿って紙を折り、キューブ状にしていきます。立体の糊づけが難しく、はじめは苦戦した人たちも、だんだんコツを掴んで次々とパーツが出来ていきます。
すべてのパーツが出来上がったら、いよいよ橋の組み立てです。展示作品「ライト・アーチ・ボリューム」と同様に、端に固定した「基礎」に向かって一列に並べたパーツを押し寄せると、みごとにアーチ状に立ち上がりました。出来上がった橋の上にいろいろな文房具を置いて強度を試してみたり、絵柄がきれいに並ぶようパーツの順番を入れ替えてみたり。自分でデザインした橋を、思い思いに楽しみました。
毎日なにげなく渡っている橋も、自分でつくってみると、普段はみることのない角度から観察することができます。私たちの日常にあたりまえのように存在する「土木」を、改めて意識する機会となりました。
開催中の企画展「土木展」は、生活環境を整えながら自然や土地の歴史と調和する土木のデザインについて考える展覧会です。
本展に向けて、実際の「土木」を訪れたり、自らの手で「土木」のスケールを体感したりしながらすすめられたリサーチの様子を一部ご紹介します。
2016年6月に開通したスイスのゴッタルドベーストンネル。スイス大使館の協力のもと、「土木展」展覧会ディレクターの西村 浩と21_21 DESIGN SIGHTスタッフが本展リサーチのために現地を訪れ、AlpTransit Gotthard社の広報 マウラスさんに案内を受けながら、見学しました。
ゴッタルドベーストンネルは、スイスの美しい山脈を通り抜け、鉄道が走るトンネルとして世界最長の57kmを誇ります。開通前は、標高1km以上を登って荷物を運んでいましたが、ゴッタルドベーストンネルは標高差がなだらかであるため、より少ないエネルギーで多くの荷物を運べるようになりました。
訪問したのは開通前の4月でしたが、すでに見学コースは完成していて、多くの現地の学生が訪れていました。
鉄道が通る本線を掘るために、材料を運んだり従業員が往来していたトンネルを、見学用のトンネルとして活用しています。足元には、施工中に使われていた線路の跡がありました。現在は、見学用トンネルとなったので埋められています。
トンネルを掘っていた当時の迫力ある写真や、構造を解説するパネル、本線の実物大の再現などの展示を通って見学コースを進むと、コースの最終地点では、厚いガラスの向こうに鉄道が通る本線を見ることができます。
ゴッタルドベーストンネルでは、このような見学コースを建設当初から計画していたといいます。「土木を身近に感じて欲しい」と本展の準備を進めていく中で、日本ではあまり体験したことのないトンネル見学に、驚きに近い感動を覚えました。
エルストフェルト駅近くにはインフォメーションセンターがあり、歴史的背景やトンネルを掘るシールドや重機のミニチュアなどの展示あり、更に詳しく知ることができます。その中で、地質断面図の展示と実際の地質(石や土)の展示がありました。「地質が柔らかいと崩れてきて掘るのが大変でした」という解説に、改めて土木の技術力と壮大さを感じました。
この展示を見て、西村は「トンネルを掘る、という行為ひとつとっても地質の調査から始まり緻密で長い時間をかけて完成するのが土木。そして、豊かな自然と対峙するのが土木」と改めて感じたそうです。そして、その思いが、トンネル地質断面図の展示作品「青函トンネルの断面図」、「ゴッタルドベーストンネルの断面図」へとつながっていきました。
21_21 DESIGN SIGHT 企画スタッフ
開催中の企画展「土木展」は、私たちの快適な日常生活に必要不可欠でありながら、その存在を実感される機会の少ない「土木」に焦点を当てた展覧会です。
展覧会ディレクター 西村 浩は「土木への"他人事"感を払拭し、自分のことだと思ってもらうには、こどもの頃から考えることを習慣にしてもらわなくては」と言います。
本展では、土木の行為を体験する参加型作品や、親子で楽しめるオリジナルグッズなどを通じて、こどもたちにも「土木」を楽しく、わかりやすく伝えています。
さらに8月23日は「おやこで!どぼく」と題し、通常火曜日は休館のところ、夏休みのこどもたちのために特別に開館。中学生以下のお子様をお連れの保護者の方は、入場料500円でご入場いただけます。その他の方も通常料金でご入場いただけます。
当日は、有志の学生たちが、もっと土木に詳しくなれるワークシートや、親子で楽しめるギャラリーツアーを用意してお待ちしています。ギャラリーツアーは、11:00と14:00の2回開催します。事前予約は不要ですので、親子で、大人同士で、お気軽にご参加ください。
また同日、東京ミッドタウン ガレリア3階のサントリー美術館では、「まるごといちにち こどもびじゅつかん!」を開催しています。ぜひこの機会に、二つの展覧会を親子でお楽しみください。
特別開館「おやこで!どぼく」
8月23日(火)10:00-17:00(入場は16:30まで)
*こども向けの解説ツアーを11:00、14:00の2回開催
*中学生以下のお子様をお連れの保護者の方は入場料500円(その他の方は通常料金)
同日開催
サントリー美術館 企画展「オルセー美術館特別協力 生誕170周年 エミール・ガレ」
夏休み特別イベント「まるごといちにち こどもびじゅつかん!」
*小・中学生とその保護者は無料
*大人(高校生以上)のみでの入館はできません
お問い合わせ:03-3479-8600(サントリー美術館)
>>サントリー美術館ウェブサイト
Photo: 木奥恵三
企画展「土木展」の展示「日本一・世界一」では、日本の青函トンネルとスイスのゴッタルドベーストンネルを通して、日本と世界の土木技術の粋を紹介しています。2016年8月11日、青函トンネルからは鉄道建設・運輸施設整備支援機構の秋田勝次、ゴッタルドベーストンネルからはAlpTransit Gotthard社のレンツォ・シモーニを迎え、本展ディレクターの西村 浩、テキストの青野尚子とともにトークを開催しました。
まず、秋田より青函トンネルのプロセスについて紹介がありました。この全長53,850mの海底トンネルは、1923年の構想にはじまり、その後工事期間24年を経て、1988年に在来線開業、2016年には新幹線開業となっています。世界に類を見ない、最長の海底トンネルとしての誕生までの道のりには、水平先進ボーリングや緻密な注入施工など、優れた海底部掘削技術が活かされ、それが国際的な信用を得ることにつながったと語りました。
次に、シモーニよりゴッタルドベーストンネルのプロセスについて紹介がありました。このトンネルは全長57,072mあり、現在世界最長となります。シモーニはプロジェクトの概観、掘削、鉄道技術の応用、試運転のフェーズについて語りました。青函トンネルが海底にあるのに対し、ゴッタルドベーストンネルは山脈に位置するため、土かぶりなどの事故を防ぎつつ作業を行う必要があります。シモーネは、800mの深さのシャフトを掘るほか、アクセストンネルを設えることにより、災害に備えるなどといった技術を語りました。
トークは、西村、青野を交えた質疑応答に移ります。両トンネルの開通の様子や、工事中の作業員が現場に向かうまでの道中、作業中の出水などのアクシデントにどのように対応するかなどが語られ、プロジェクトの達成にむけて勇敢に立ち向かうさまが紹介されました。日本とスイスの土木が、会場でそれぞれの培った技術を分かち合う、またとない機会となりました。