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2018年5月19日、企画展「写真都市展 −ウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち−」に関連して、参加作家の一人、石川直樹によるトーク「極地都市 POLAR CITY」を開催しました。

石川直樹は本展で「極地都市」と題し、南極大陸や北極圏など人の営みから遠く離れた"極地"に都市が形成されつつあるさまを捉えたシリーズを展示しています。サウンドアーティストの森永泰弘との協働により実現した本展展示作品では、地球という一つの惑星に点在する都市の騒めきを体感することができます。

石川直樹+森永泰弘「極地都市」展示風景(写真:吉村昌也)

このトークの10日前にネパール・ヒマラヤから戻ったばかりの石川。前日までは、北海道・知床にいたと言います。世界を飛び回る石川は20歳のときに初めての高所登山、デナリに挑み、その後も冒険家たちの本を読んで極北の地に憧れ、旅を繰り返すようになりました。

そうして訪れた場所で石川は「撮影しておかないと無かったことになってしまうもの」を写真に撮っていると語ります。そこで見た、忘れてしまうような些細なことも思い起こさせるのが、写真の記録性であると言う石川は、南極大陸や北極で撮影した写真を紹介しながら、そこにまつわるエピソードを語りました。

石川が使うカメラはレンズ交換式ではなく、自分が動かなければズームアップすることもできません。「近寄りたいけど近寄れない距離をそのままに写す」「遠くのものは遠くにしか写らない」そのカメラを、自分の目に近いものとして愛用していると、石川は語ります。現地で遭遇した動物や出会った人々を撮った写真には、石川と、動物たちや人々との距離がそのまま表れています。

石川直樹「Illuissat, Greenland / 2007」

トークの後半では、参加者に呼びかけて質疑応答が行われました。石川自身の写真表現やカメラについて、旅を志したきっかけやこれまでに訪れた土地について、さらには精力的に移動しながら活動し続ける石川の体力づくりの秘訣まで、途切れることなく続く会場からの質問に、石川も一つ一つ答え続けました。

その中で「都市」という言葉について問われた石川は、「極地には"都市"といわれる規模の有機的な集合体はまだないかもしれない。ただ、その芽、その兆しがある」と答えました。
本展ディレクター 伊藤俊治が展覧会に寄せて語るように、石川の写真表現から22世紀の都市の姿と写真の未来が思い描かれるトークとなりました。