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クリエイターズトークvol.5 森山明子 × 小野 栞を開催

2023年11月 2日 16:30Material, or,デザイン,トーク

2023年10月27日(金)、企画展「Material, or 」に関連して、閉館後の館内にて、デザインジャーナリストの森山明子と、本展参加作家の小野 栞によるトークをを開催しました。モデレーターは本展企画チームの山田泰巨が務めました。

企画展「Material, or 」会場風景(ロビー) 撮影:木奥恵三/Photo: Keizo Kioku

「Material, or 」で展示している小野の作品「Muse」は、金属のワイヤーを手編みした縦5 × 横4 mの作品です。21_21 DESIGN SIGHTの吹き抜けの一番高い場所に吊られ、昼はサンクンコートから降り注ぐ陽の光に煌めき、夜は照明に照らされてさまざまな表情を見せています。小野が「透明な幕に見える素材を探していて出合った」という、通常は精密機器などに使われる0.06 mmのステンレスワイヤーを、8ヶ月かけて一般的な編み棒で編んだ本作品は非常に繊細なため、すぐには存在に気づかない人もいるほど。金属工芸やテキスタイルデザインを学び、糸から衣服を制作してきた小野は、博士課程で彫刻に触れることにより、空間との関わりを考えるようになったと言います。風や光も意識する中で、「透明」をつくることを模索しました。本作品を編むにあたり、ワイヤーが細すぎて見えなくなってきたり、金属疲労のために折れそうになるなどの、素材の難しい性質と向き合いながら完成させたと語りました。

デザインジャーナリストの森山明子は、「Material, or 」のテーマを最初に聞いた時から思い浮かべたという特別な「布」を紹介しました。だれも見たことのない布を探求してきた、世界的テキスタイルプランナーの新井淳一によるポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルムを用いた生地。その実物を特別に持参した森山は、トーク参加者たちの前や上に広げることで、この布の軽さや手触りも披露しました。

「物質自体がなろうとする自分になるよう、呼吸を合わせるのが仕事」という新井淳一のものづくりの考えが、小野の作品づくりや、「Material, or 」のテーマに通じていることから、「もの」やそれを取り巻く「産業」への眼差しへと話は発展しました。

モデレーターの山田からは、「布」はとても身近なものであると同時に、人によって思い描くものが違うのではないかと問いかけ、トーク参加者がそれぞれ「自分にとっての布」を語る時間を設けました。展覧会の感想も合わせて語り合った1時間半。最後に、参加者からの「どうやったらものと対話する力が養えるのか?」の質問に、小野は「よく観察し、細かく見て、予想しながら動く。そしてものだけでなく地域や産業を見てほしい」と答え、和やかなトークは終了しました。

左から、小野、森山、山田。