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安藤忠雄 (12)
企画展「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」は、来場者の皆様をデザインミュージアムの"入口"へと誘う展覧会です。
ウェブサイト上の本連載では、会場を離れ、各界で活躍する方々が未来のデザインミュージアムにぜひアーカイブしたいと考える"個人的な"一品をコメントとともに紹介します。
展覧会と連載を通じて、デザインの広がりと奥行きを感じてください。
「安藤忠雄/仕事学のすすめ〜自ら仕事を創造せよ〜」
NHK教育テレビ(Eテレ)
全4回 午後22:25 〜 22:50 毎週水曜日
第1回:3月7日放送、3月14日再放送
第2回:3月14日放送、3月21日再放送
第3回:3月21日放送、3月28日再放送
第4回:3月28日放送、4月2日、5日再放送
番組ホームページ
建築家の安藤忠雄が「混迷の時代にこそいかにして自ら仕事を創造するか」ということについて語り、その仕事を振り返る全4回に渡る番組です。
第3回(3月21日放送、3月28日再放送)の中で安藤は、21_21 DESIGN SIGHTの着想から完成までのプロセスを通して、三宅一生との出逢いを振り返り、そのやりとりから生まれた想いを語ります。
是非ご覧下さい。
4月11日土曜日午後、2回にわたり、建築家 安藤忠雄によるギャラリートークが開催されました。 21_21 DESIGN SIGHT の建築を設計した安藤は、今回の「U-Tsu-Wa/うつわ」展の会場構成も手がけ、展示のみどころについても話しました。
建築の分野に限らずさまざまな世界で活躍している安藤は、都市とは「緑」と「文化」があって成立するものだとの意見。ヨーロッパにみられる都市には活気のある文化施設があり、東京も是非、文化施設を大切にして欲しい。日本を「チャンスのある国」、外国人に対して「開かれた国」にし、誰でもチャンスを求めて日本に来るような「文化の国」にすべきだと語りました。
各回200名程の方にお集りいただき、トークの後にはサイン会も行い、大変にぎわいのある土曜日の午後となりました。
安藤忠雄の会場構成
両掌ですくいあげた、小さな宇宙----三宅一生が3作家のうつわから感じとった「宇宙」の空間表現は、安藤忠雄の手に託されました。それは、かつて自らが出会った感動のかたちを、次の時代の担い手たちに、ガラス越しではなく、直接届けたいという想いからです。
安藤忠雄が描いたのは、「水面に映える夜空の星」。水盤や粉砕ガラスの上に、3作家が持って生まれた星座----ルーシー・リィー(魚座)、ジェニファー・リー(獅子座)、エルンスト・ガンペール(牡羊座)----をなぞるように、うつわを浮かべました。2万8千個のガラス瓶を敷き詰めた水盤が、壁面に設えた滝のかすかな音とともに、会場内に静かな緊張感を生み出しています。子どもの頃に見た川の美しさを、いつか違うかたちで表現したいと考えていた安藤。会場の水の流れに対峙するように、サンクンコートには青々とした麦が生い茂っています。
安藤忠雄のギャラリーツアーが行われました。
ギャラリーツアーは、4月にも予定されています。
安藤建築の中で、会場構成も安藤自身が手がけた「U-Tsu-Wa/うつわ」展。当日はたくさんの方がトークを聞くために集まりました。トークでは、三宅一生の服づくりのコンセプト"一枚の布"から着想を得てつくられた21_21 DESIGN SIGHTの建築についての話を交えながら、今回の会場構成のポイントについて語られました。
今回の会場構成について安藤は、「三作家の高い美意識を際だたせるような演出を考えた」とし、「水」を使った演出にもついても触れました。小さい頃に見た川の美しさが忘れられず、その美しさを違う形に置き換えたいと常々考えていたという安藤。今回の演出では、水を使いながら「視覚だけなく、聴覚にも訴えるものにしたかった」とのこと。壁面に水を流す演出によって三作家の力強くも静謐な世界観を表現したかった、とその思いを語りました。
ルーシー・リィー、ジェニファー・リー、エルンスト・ガンペール。三人のアーティストのつくる〈うつわ〉には、生活文化としてのデザインの可能性が、実に豊かに示されている。
とりわけ、ルーシー・リーの作品は、一つ一つが前世紀の百年を陶芸に賭けて生き抜いた彼女の人生の結晶のようだ。モダニズム造形美の極みともいうべき、優雅に研ぎ澄まされたフォルム。美しさと同時に温かみを感じさせる、微妙でデリケートな陶器の素材感。あの白に輝く器たちの透明感は一体何なのかと、彼女の作品を目にするたび、不思議な感動を味わう。
展覧会では、彼女らのみずみずしい感性がより直接的に伝わるような空間演出を考えた。展示室内に水盤をつくり、その水の上に作品を浮かべる。流れる水という空白を介して、その静と動の狭間で、美しいうつわと対峙するという展示構成だ。訪れる人が、作品を通じて、それをつくった作家の心を感じられるような、展覧会になればと思う。
安藤忠雄
6月6日(金)、皇后陛下が21_21 DESIGN SIGHTをご訪問、『21世紀人』展をご鑑賞されました。
21_21 DESIGN SIGHTの建築を設計した安藤忠雄氏と、本展ディレクターの三宅一生の案内で、約30分間、会場をまわられました。
ひとつひとつの作品をゆっくりとご覧になりながら、時折、ご質問をされる場面も。
イサム・ノグチの《スタンディング・ヌード・ユース》には、特に興味深げに説明に耳を傾けていらっしゃいました。
21_21 DESIGN SIGHT 建築についての安藤忠雄のことばから
...かつて、ポール・ヴァレリイとポール・クローデルが対話し、「世界中の民族の中で滅びては困る民族がいるとしたらそれは日本人だ」と言ったことがあります。私はそれを、日本人の固有の美意識を滅ぼしてはならないということだと解釈しています。美意識には、たとえば責任感とか正義感といったものも含まれます。なかでも人や自然に対する礼儀、生きていくことへの礼儀。あるいは、ものをしっかりと見つめることもそうでしょう。
ところが、1960年代に高度成長期を迎えると、お金が儲かればいい、お金があれば豊かになれるという考えが主流になり、かつての美意識はどこかに消えてしまった。東京の街を見ればわかります。美しさを求めた景観ではありません。経済効率を優先した結果ですよ。
かつてイサムノグチさんとお会いした時、「ニッポンの美意識を取り戻さなければならない」と言われていました。
私と三宅一生さんとのつきあいは、35年くらいになるでしょうか。
「デザインという美意識の中に賭けている」と言っていた田中一光さんと3人で、いつかデザイン・ミュージアムを作ろうと話をしていた、そういった経験が、今に繋がっているという思いもあります。
日本が持つべき顔とは、美意識のある国としての顔ではないか。これを実現するために21_21 DESIGN SIGHTという考え方が必要だと思っています。
...経済効率一辺倒で無計画につくられた日本の都市へのアンチテーゼとして。もっと都市を美しくという意識をもって、私はこの21_21 DESIGN SIGHTに参加しています。
21_21 DEISGN SIGHTは5感を使って「見る」場所
2006年12月4日 東京ミッドタウン内、21_21 DESIGN SIGHTにて収録
構成/カワイイファクトリー 撮影/ナカサ&パートナーズ 吉村昌也
21_21 DESIGN SIGHTの建物は、エントランスを抜けて地下のギャラリーに達すると、外観からは思いもつかないダイナミックな空間が広がっています。ギャラリーは大小あわせて2つ。それを示すサインは照明によってコンクリートの壁面に映し出される、1と2の数字のみ。ギャラリーのほか、サンクンコートあり、秘密めいた通路ありの空間で3月30日から始まる、21_21 DESIGN SIGHTのプログラムにどうぞご期待ください。
2006年12月、竣工間近の21_21 DESIGN SIGHT(以下、21_21)をディレクターが訪れ、ほぼ完成した建物を見学しました。実際の空間を見ながら行なわれた今回のディレクターズ放談は、意気高揚しつつも21_21およびデザインの核心に迫る内容となりました。
安藤建築の魅力は空間を体験することで見えてくる
(一同爆笑)
去る11月12日、京都の宝ヶ池ほとりにある国立京都国際会館において、パネル討論 [ 21_21 DESIGN SIGHT ディレクターズ・トーク ]が実施されました。
この催しは、第22回京都賞(財団法人 稲盛財団主催)を受賞した三宅一生の記念ワークショップ『デザイン、テクノロジー、そして伝統』の一環として行われました。
ワークショップ前半は、三宅が30年余にわたる衣服デザイナーとしての仕事を紹介。山口小夜子ほか数名のモデルによる代表作を着用してのデモンストレーションや映像などが披露されました。その後、彼の最新の活動を伝えるものとしてディレクターズ・トークが行われました。
本題のパネル討論は、京都賞 思想・芸術部門審査委員長で美術史家の高階秀爾が座長を務め、21_21 DESIGN SIGHTを設計した建築家で、第13回京都賞受賞者でもある安藤忠雄、当施設のディレクターである佐藤 卓と深澤直人、同じくアソシエイトディレクターの川上典李子らがパネリストとして登場。21_21とのかかわりについて説明したあと、座長の質問に答えるという形式で進行しました。
21_21に関する主な発言を紹介します。
--このほか、京都でも21_21が何かできないだろうか、デザインって一体なんだろうか、子供も大人もわいわい言って楽しめる場所にしたいなど、それぞれの立場から21_21に対する思いや夢が語られました。
(21_21 DESIGN SIGHT 広報・財団法人 三宅一生デザイン文化財団)
21_21 DESIGN SIGHTの設計を手がける建築家・安藤忠雄氏。氏はこれまで数多くの文化施設設計にたずさわってきましたが、21_21 DESIGN SIGHTの設立には特別な思いがあります。今、なぜ21_21 DESIGN SIGHTなのか、その思いを語っていただきました。
今、必要な日本の顔とは――
仕事柄、世界各地を飛び回っていろいろな方と接していますと、しばしば「日本には顔がない」と言われます。「顔が見えない国」と。経済は顔が見えているどころか、もうずいぶん長い間リーダーシップを取っています。けれども。私はもうひとつ日本の顔が欲しいと思う。
日本は世界でも珍しく大衆文化をしっかりと根づかせてきた国です。江戸時代から続く文楽、歌舞伎、浮世絵、俳句など、そういった文化を支えているのは、生活を楽しむという美意識だと思うのです。
その文化の奥には、日本の自然観がある。生活のなかで、つねに感動をもって春夏秋冬に接してきた。これはヨーロッパなどと比べてもとても珍しい感情で、日本人の感受性の高さを示していると思うんですね。
...かつて、ポール・ヴァレリイとポール・クローデルが対話し、「世界中の民族の中で滅びては困る民族がいるとしたらそれは日本人だ」と言ったことがあります。私はそれを、日本人の固有の美意識を滅ぼしてはならないということだと解釈しています。美意識には、たとえば責任感とか正義感といったものも含まれます。なかでも人や自然に対する礼儀、生きていくことへの礼儀。あるいは、ものをしっかりと見つめることもそうでしょう。
ところが、1960年代に高度成長期を迎えると、お金が儲かればいい、お金があれば豊かになれるという考えが主流になり、かつての美意識はどこかに消えてしまった。東京の街を見ればわかります。美しさを求めた景観ではありません。経済効率を優先した結果ですよ。
かつてイサムノグチさんとお会いした時、「ニッポンの美意識を取り戻さなければならない」と言われていました。
私と三宅一生さんとのつきあいは、35年くらいになるでしょうか。
「デザインという美意識の中に賭けている」と言っていた田中一光さんと3人で、いつかデザイン・ミュージアムを作ろうと話をしていた、そういった経験が、今に繋がっているという思いもあります。
日本が持つべき顔とは、美意識のある国としての顔ではないか。これを実現するために21_21 DESIGN SIGHTという考え方が必要だと思っています。
美意識をもった建築
21_21 DESIGN SIGHTの建築を説明するならば、やはり巨大な一枚の鉄板による造形ということに大きな意味があると思います。日本の高い技術力を象徴するものと言えるからです。
鉄板は膨張と厚さの問題があります。それをクリアして造形する技術、解析する技術の両方が必要です。設計が現実のものとなるのは、高い技術力が現場にあるからこそなのです。
また、工事には欠かせないスケジュール管理、日本人はこの点に優れているのです。たとえば、日本の新幹線はめったに遅れない。私はイタリアでミラノとベニスをよく往復しますが、20分くらい遅れるのは当たり前のことです。でも誰も何も言いません。
スケジュール管理が優れているということは、品質管理が優れているということにもつながる。それらはすべて心、美意識からきているのです。この心を取り戻すために、21_21 DESIGN SIGHTは役立たなくてはならない。
そして経済効率一辺倒で無計画につくられた日本の都市へのアンチテーゼとして。もっと都市を美しくという意識をもって、私はこの21_21 DESIGN SIGHTに参加しています。
2006年6月22日 東京ミッドタウン内にて収録
構成/カワイイファクトリー ポートレート撮影/五十風一晴