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雑貨展 (18)
21_21 DESIGN SIGHTウェブサイトでは、建築内部やこれまでに開催した展覧会の一部を、パノラマツアーで紹介しています。360度見回すことができる写真や動画で、館内の様子をお楽しみください。
>> 企画展「コメ展」
会期:2014年2月28日 - 6月15日
展覧会ディレクター:佐藤 卓、竹村真一
>> 企画展「単位展 ― あれくらい それくらい どれくらい?」
会期:2015年2月20日 - 5月31日
企画:中村至男、鈴野浩一(トラフ建築設計事務所)、稲本喜則(AXIS)、岡本 健、菅 俊一、寺山紀彦(studio note)、前村達也(21_21 DESIGN SIGHT)
>> 企画展「雑貨展」
会期:2016年2月26日 - 6月5日
展覧会ディレクター:深澤直人
2016年5月22日、展示作品「12組による雑貨」の出展者、小林和人(Roundabout, OUTBOUND)と、小林 恭・マナ(設計事務所ima)、たかはしよしこ(S/S/A/W)によるトークを開催しました。
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生活日用品を扱うRoundaboutはその名の通り、様々なものが行き交う交差点のような場所になればと考えてはじめたという、小林和人。自身が運営するもう一つの店、OUTBOUNDも含め、機械生産のものから手仕事のものまでジャンルを問わず扱っていながら、そこには、「ものには、機能と作用の両方が備わっている」という考えが通じています。雑貨とは、皮をめくっていくうちに消えてしまうらっきょうのようなものではないか、と例える小林和人は、それが雑貨かどうかは、そのものの置き方によっても決まると自身の「雑貨観」を述べました。
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小林 恭・マナも、普段、設計事務所imaとして「ものを、雑貨を、どのように置くか」を考える仕事をしています。そこに置かれるものを出発点とした、展示空間や店舗など国内外での事例からは、つくり手と選び手がその生活感を共有するという、雑貨の一面を見ることができました。また、本展出展作品「ケンセツザッカテン」では、二人の専門である建設の専門道具から、雑貨"とも言える"ものを集めたと語りました。
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フードデザイナー たかはしよしこは、本展出展作品で、会場に自身のアトリエ「S/S/A/W」を再構築しています。料理を専門とするたかはしにとって、「S/S/A/W」の名の通り、季節は大事な要素であるといいます。本展のために会場に運び込まれた雑貨にも、共通して自然の素材を使ったものが集まりました。この、雑貨を集めてアトリエを再構築するという行為を通じて、たかはし自身、自分の好きなものを捉え直すことになったと語りました。
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異なる分野で活躍する三者がそれぞれの世界観を語り、来場者と共有する、和やかなトークとなりました。
2016年5月14日、企画展「雑貨展」ショップ監修の山田 遊と、Sumallyの代表を務める山本憲資によるトーク「欲しいもの、持っているもの」を開催しました。
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本展展示作品「雑貨展のWANT or HAVE」では、会場に展示された雑貨の一部をウェブサービスSumallyを通して紹介しています。このサービスでは、それぞれのユーザーが、Sumally上に紹介されているモノに対し、「want it」もしくは「have it」のいずれかを選択することで、他のユーザーとモノの情報を共有できます。雑貨展では、公式Sumallyアカウントを設け、それぞれのユーザーが展示された雑貨の情報を共有できるようになっています。
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トークは雑貨展の展示内容と、雑貨展コンセプトショップ「雑貨店」の関係性に触れられつつ進行しました。現代の情報の在り様と、そこから派生するモノの選び方と買い方。時代の動きの中で、なぜウェブサービスSumallyを生み出したのか。そして今、人々はどのような手段を使って情報を得て、モノを自分の生活の中へ取り込むのか。モノを売る人、情報を扱う人、それぞれの視点で語られました。これからどのようにモノと付き合っていくのか、その未来像が浮かび上がる内容となりました。
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2016年4月28日、21_21 DESIGN NIGHT 特別企画「『何に着目すべきか?』」を開催しました。雑貨展企画チームの橋詰 宗が、加藤孝司、木村稔将、古賀稔章とともに行なう不定期イベント『何に着目すべきか?』。今回は雑貨展に合わせ、本展の参加作家や出展者を交えた3部構成の特別バージョンとなりました。
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本展参加作家の菅 俊一、野本哲平を迎えた[第1部]「雑貨の発見」、[第2部]「雑貨整理学」。何気なく使っている道具や日用品が、いかにして雑貨となるのか、さまざまな空間にあふれる雑貨をどのように整理整頓すればよいのか、などを議題に、菅や野本の作品に触れつつトークを行ないました。
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そして、[第3部]「雑貨な音楽」では、本展出展者の小林和人(Roundabout, OUTBOUND)を迎えるとともに、彼の持参したレコードをBGMに、21_21 DESIGN SIGHTが架空のラジオスタジオに変身。ゴールデンウィークのはじまりに相応しい、賑やかな一夜となりました。
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2016年4月23日、「雑貨展」出展者がそれぞれの視点から「雑貨」を語るトークシリーズの第一弾、「雑貨展 出展者によるトーク1」を開催しました。誰もがどこかで見たことのあるようなアイテムを一堂に集めた作品、『愛のバッドデザイン』を出展しているプロダクトデザイナーの清水久和と、昭和30年代から続くパッケージコレクション、『キッチュな生活雑貨パッケージ』を出展する庶民文化研究家の町田 忍。バックグラウンドは異なれど「雑貨」に精通するふたりの目利きが、「雑貨」にまつわる熱い想いを語りました。
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鉛筆削りの内側はどうなっているんだろう...?身の回りにある機械を分解し、中身を見ないと気が済まなかったと子ども時代を振り返る清水。手掛けたデザインについて「どれが本業で?」と尋ねられるほどに多様なその作品群も、自身の中で常に一貫していると話します。共通して根付いているというのが、鉛筆削りの内側を覗いたときの感動のような、いわば取るに足らない小さな記憶。デザインリサーチ活動『愛のバッドデザイン』も、そんな記憶の延長線上にあることを語りました。
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自身のコレクションの原点が、幼少期に仲間と戦って勝ち取った「めんこ」にあると話す町田。『キッチュな生活雑貨パッケージ』も同様、子どもの頃に集めていた「めんこ」のように、展示している一点一点に強い想い入れがあることを語ります。初めてオレンジジュースを飲んだときのこと、東京オリンピック観戦に行ったときのこと、町田のコレクションも自身の記憶と深く結びつき、それぞれのモノに潜む歴史を知る楽しさ、モノをきっかけに広がる会話の面白さに加えて、「雑貨」を通じて生み出される一連の「ドラマ」こそに大きな魅力があることを強調しました。
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2016年3月26日、企画展「雑貨展」の展覧会企画チームより、井出幸亮、中安秀夫、橋詰 宗、熊谷彰博、荒井心平(NAOTO FUKASAWA DESIGN)、山田 遊(method)、前村達也(21_21 DESIGN SIGHT)が登壇し、トーク「雑貨展企画チームによる雑談」を開催しました。
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展覧会準備の初期段階で、各々がイメージしていた「雑貨」をそれぞれ語るとともに、展示作品「雑貨展の雑貨」のモノたちにまつわるエピソードを交えつつ、本展のグラフィックや会場などが出来上がっていくさまを語りました。
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本展に対し、「雑貨という答えのないゴールに、それぞれどう登ったのか、垣間見られるのが面白い」と橋詰が語ったように、「雑貨」のもつ多様性や魅力を、企画チーム、参加作家、出展者がどのように向き合ったのかを垣間みることのできる、バラエティに富んだ雑談となりました。
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開催中の企画展「雑貨展」で、展覧会ディレクターを務めたプロダクトデザイナーの深澤直人と、展覧会グラフィックを手掛けたグラフィックデザイナーの葛西 薫。分野は異なれどデザインに通じ、「雑貨」に深い関心を持つ二人が、展覧会オープン前日の会場をともに回りました。
会場に並ぶ数々の雑貨や作品をきっかけに、二人が「雑貨」への思いを語る様子を紹介します。
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深澤:最近、自宅のキッチンとリビングに綺麗なデザインの棚を置いたんですけど、そこにどういう順番でモノを置いていくかということが最初はなかなか決まらないんです。だけど生活し始めて、何か一個のモノを置くと、それがひとつの定義付けとなり、次に置くモノが決まって。その繰り返しの中で、「これはこっちに移動しなくては」とか、そこに置くモノや配置がどんどん変わってきて、だんだん収まってくるようになる。砂を振るうと大きな粒と小さな粒とに分かれるように。コーヒーカップとティーカップだとか、それぞれのモノに力関係があるんですよね。そこに磁力のようなものを感じることがある。
葛西:僕も最近引っ越したので、よくわかります。可動棚をつくることになって、棚を置く位置を決めなきゃいけないんだけど、まだモノがどのように置かれるのかがわからないから、なかなか決められなくて。それで先日、ひとつの枠だけにあえて絵を入れたんです。そうするともう他のモノを置けないから、本はあまり置かなくなってしまって。結果、そこがステージになりましたね。一種の神棚的な雰囲気が出てきました。
深澤:何も置いていない棚は綺麗でも、そこに本をびっしり入れすぎちゃうと、棚は消えて「本の壁」になっちゃいますよね。でもそこに1冊2冊だけ本を置いて、隣に何か違うものを置くと、棚はステージになる。こういうところに雑貨の「美」があると思うんです。例えば、絵を置いたら、その絵を入れるフレームだったり、その隣に置いてあるペットボトルだったり灰皿だったり、そこにひとつのストーリーが自然にできてしまう。
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葛西:生活する内に、どんどん好きなものとか必要なものが増える中で、それらのモノには「間」みたいなのもあって。並べていくと何となく優先順位があるんですね。これは役に立たないけれども手元に置いておきたい、とか。無意識の判断なのかもしれません。上手く言えませんが、「そこにあると落ち着く」という、適切なポジションみたいなものがある。ただ、それは人それぞれの感覚であって。この展覧会を見ても、それぞれの人にその人なりの素晴らしい世界があって、個人個人で違うことははっきり分かりますね。「いいなあ」と思ったりもするけれどやっぱり「僕ではないなあ」みたいな。お互いさまだよなあと思ったりします。
深澤:並べ方によっても、印象がまったく変わりますからね。今回の展示では『松野屋行商』の荷車のような、まさに「雑多」なものを一気に凝縮して集めた部分と、お店のように雑貨をきちんと一個一個、綺麗に並べているような部分とがあって、そこにはまた違った味がある。そのコントラストこそがこの展覧会の面白さ。ある意味では来場者を困惑させながらも、納得させるものがあるんじゃないかと思っているんです。
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構成・文:井出幸亮
写真:大谷宗平/NACASA&PARTNERS, Inc.
開催中の企画展「雑貨展」で、展覧会ディレクターを務めたプロダクトデザイナーの深澤直人と、展覧会グラフィックを手掛けたグラフィックデザイナーの葛西 薫。分野は異なれどデザインに通じ、「雑貨」に深い関心を持つ二人が、展覧会オープン前日の会場をともに回りました。
会場に並ぶ数々の雑貨や作品をきっかけに、二人が「雑貨」への思いを語る様子を紹介します。
葛西:子どもの頃、文房具屋に行くのが好きだったんですよね。ちまちましているものが好きで(笑)。今でもそういうところがあって、必要もないのに買ってしまうんですけども。昔、僕が中学生とか高校生とかのころに。セーラーの万年筆で「セーラー・ミニ」というのがあったんですよ。閉じると短くなってて、かっこ良かった。
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深澤:サイズが小さくなると、急に魅力的になったりしますよね。実は今回の展覧会で、僕が台湾で見つけてきた、サントリーのウイスキーの角瓶の小さいのを展示しているんです。雑貨展の企画が始まるときに、頭の中で「雑貨、雑貨」と思いながら歩いていたときに見つけまして。なんかかわいいんですよね。これは台湾のコンビニで売るためにこういうサイズになったもので、デザイン的な観点で小さくしたわけでないんでしょうけれど。
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葛西:僕も今日、自分なりの「雑貨」を持参してきました。これは僕がデザイナーになろうと東京に来てはじめて買った色鉛筆。これはよくできていて、40数年使っていてまだ使い切らないんです。あとこれも1970年代くらいのもので、伊東屋で手に入れたテープカッター。テープがさっとつかめて、今も愛用していています。復刻販売して欲しいですね。これはただ土産物屋で買ったんですけど、パーカーのインクの入れ物。こっちは本の装丁用の道具。僕は自分で束見本を作るときに、糊をつけてぎゅっと締めて使う。なかなか実用的なんです。
深澤:葛西さんが持っているからこそ雑貨になった、というモノたちですね。とても面白い。
葛西:僕にとっての雑貨は「たわし」みたいな、実用的なモノの中にあるんだろうな。ただ、ひとつひとつのものの魅力とは別に、それらをこうして並べていくことで、また違った見え方をするのが面白いですね。
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構成・文:井出幸亮
写真:大谷宗平/NACASA&PARTNERS, Inc.
開催中の企画展「雑貨展」で、展覧会ディレクターを務めたプロダクトデザイナーの深澤直人と、展覧会グラフィックを手掛けたグラフィックデザイナーの葛西 薫。分野は異なれどデザインに通じ、「雑貨」に深い関心を持つ二人が、展覧会オープン前日の会場をともに回りました。
会場に並ぶ数々の雑貨や作品をきっかけに、二人が「雑貨」への思いを語る様子を紹介します。
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葛西:深澤さんはご自分の作品が雑貨として一緒に並べられるのは嬉しいと仰っていましたけど、そうではない人もいるでしょうね。
深澤:そう、「自分のつくったものは"雑貨"じゃないよ」という人もいるかもしれない。僕もその気持ちが分からないわけではないんです。矛盾してますよね。でも、この展覧会では出展者の方それぞれが自分の好きなもの、気持ちが良いと思うものが集まっているわけだから、その中に自分のつくったものが置かれることはやっぱり嬉しい。彼らは「モノの魅力に対するこだわり」の頂点にいるような人たちですけれども、そのこだわりとは常に「比較すること」でもあるわけで、色々なモノの中から「こっちの方が何となく好きだな」と選びとっていく作業の結果ですから。
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葛西:誰でも、無意識なレベルで「かたちフェチ」みたいなところがあって、モノを見たり触ったりする中で「このカーブが何だかいいぞ」みたいに、生理的にグッとくることがあるんですよね。理屈では説明できないんですが。そういう、僕たちデザイナーができないこと雑貨たちはやってくれるんですよ。意表を突かれて驚かされたり。あと、洗練され過ぎてないというところも重要ですよね。僕自身、デザイナーになりたての頃は、ビシっとした冷たいイメージが好きで憧れていましたが、今は変わりましたね。
深澤:そう、僕もずっと「寸分も間違いのない綺麗な線が引きたい」と思っていましたが、それよりも人間味をもって崩すほうが難しいですよね。雑貨のカテゴリーの中に入るモノを意図してつくろうとするのはとても難しい。
葛西:例えば、職人が仕事で使う道具って、木の堅さや重さだとか、素材の持つ機能や質感に素直に従ってつくられていたりしますよね。そうやってできたモノに対して、すごいショックを受けることがあります。「デザイナーなんていらないんじゃないか」って思わされるというか。雑貨にもそれと似たものを感じることがありますね。もちろんデザイナーが悪いというわけではありませんが、デザインって「後から生まれるもの」なのかなと思ったりします。
深澤:実際、デザイナーというのが「つくる」側から「選ぶ」側になってきているような面もありますね。いわゆる「目利き」。選んで、編集する。今回の展覧会ではそうした側面も強く感じられると思います。
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構成・文:井出幸亮
写真:大谷宗平/NACASA&PARTNERS, Inc.
開催中の企画展「雑貨展」で、展覧会ディレクターを務めたプロダクトデザイナーの深澤直人と、展覧会グラフィックを手掛けたグラフィックデザイナーの葛西 薫。分野は異なれどデザインに通じ、「雑貨」に深い関心を持つ二人が、展覧会オープン前日の会場をともに回りました。
会場に並ぶ数々の雑貨や作品をきっかけに、二人が「雑貨」への思いを語る様子を紹介します。
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葛西:『雑貨展』という言葉を聞いた瞬間に、何となくすぐ雰囲気が分かったんですよ。高級すぎず下品でもない、だけど大切なもの、という感じがパッと分かったので、わりとあっという間に展覧会タイトルのレタリングができたんです。これが「大骨董市」とか「江戸の銘品」とかだとしたらそう簡単にできなかったはずで。だけど今回は最初の打合せの段階で、すぐにある輪郭が見えてきましたね。
深澤:お互い違う分野のデザイナーですけれども、ものが生み出される時ってそういう感じですよね。議論して決めていくということはない。葛西さんはいつも色々な要素を凝縮して結晶化させるような仕事をされているから、このレタリングの中にも雑貨というもののエッセンスが入っている。だから観る側も「これ、雑貨だよね」とすぐにピンと来るし、そのレタリング自体が「雑貨だと感じるもの」を何でも投げ込める枠のようになったというか。
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葛西:この字は正方形の紙に鉛筆で文字を描いてカッターで切った「切絵字」なんですよ。
深澤:染色工芸家の芹沢銈介は型紙を切っていくとき、下書きの線の通りには切らないらしいんですよ。むしろ少しズレてしまったほうが良いと言うんです。
葛西:僕も切る瞬間には「こっちかな」と探りながら、あえて鉛筆の線からズラして切っています。そういう作業を通して生まれる、偶然のバラつきが楽しいんですよね。
深澤:これを見た瞬間、「ああ! 雑貨だ」と。雑貨って「雑」ゆえに均一なグリッドに収まらないものですよね。だけど、結局自然界にあるものはみんなすべて形がバラバラなわけで。雑貨とはそんな風にすべてを飲みこんでしまう言葉なんですよね。先日、海外のメディアからこの展覧会について取材を受けたときに、先方から「"雑貨"は哲学的な概念であるように思いますが」と聞かれたんですが、確かにそうなのかも知れないなと。
葛西:そう、「雑貨」ってすごく曖昧な概念だし、それぞれのモノが「言葉にならない何か」を醸しているようなものですからね。
深澤:僕はプロダクトデザイナーなので、常にそうした感覚は切り離せないんです。雑貨と呼ばれるようなモノが放っている魅力とは何か?ということはいつも考えていて、それらと自分が創りだすモノの魅力が同じレベルまで到達しているかというのを、ひとつのメジャーにしているようなところがあります。実は今回、展示された雑貨の中にも自分がデザインしたプロダクトが入っていて、それを客観的に見ることができたんですが、自分が全然いままで感じたことのない感覚というか、展示した人自身の生活観みたいなものがそこに含まれているのを感じました。とにかく、マックス・ビルの世界の名品のスツールも、エットレ・ソットサスも、こうやって生活の中で使われる雑貨と一緒に並べてみると、みんな同じ「雑貨」になってしまう。こんなことが許されるんでしょうか(笑)。
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構成・文:井出幸亮
写真:大谷宗平/NACASA&PARTNERS, Inc.
2016年2月28日、オランダから本展のために来日した参加作家「WE MAKE CARPETS」によるトークイベントを開催しました。これまでにも世界各地でその土地の文化を汲み取りながら、生活を取り巻く様々な日用品を用いて作品を制作してきたWE MAKE CARPETS。本展開催にあわせて約3週間日本に滞在し、日本の雑貨で美しいカーペットを完成させた今回のプロジェクトについて、普段は明かさないという舞台裏を語りました。
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「雑貨展」の会場で一際目を引くカラフルな作品『Hook Carpet』。その美しい模様にじっと目を凝らすと、カーペットをかたちづくるパーツのひとつひとつがS字フックであることに気がつきます。サンクンコートに並べられるカラフルなフックの総数は、なんと8千個。ストローや絆創膏、洗濯バサミからパスタまで、様々な日用品を使ってカーペットを制作し続けてきた彼らは、今回S字フックを材料として選んだ理由として、屋外展示に強いプラスチック製であることや、大量生産による安価な値段など、展示に必要な条件が合致することに加え、カーブを描くかたちの美しさを挙げました。
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Photo: 大谷宗平/Nacasa&Partners, Inc.
カーペットの材料がフックに決まると、展示場所の面積をもとに必要となる個数を割り出して、取寄せ作業に移っていきます。今回のプロジェクトでは制作時間が限られていたために一括購入はできず、都内の100円ショップ20店舗から2日間で8千個のフックを掻き集めることとなりました。そこで役立ったというのが商品についているバーコード。在庫情報が瞬時に分かるこの数字列に彼らは、生活を取り巻くモノの流通について深く考えさせられたと話します。店舗から8千個のフックを集められたということは、それだけの数が社会に流通しているということ。今回のプロジェクトが彼らにとっても驚きの連続であったことを強調しました。
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大量のフックが集まるといよいよカーペットの制作が開始。サンクンコートを大きなキャンバスに、フックで模様を描き出していきます。興味深いのは、彼らが制作のために図面等を一切用意しないということ。3人で協力しながら手探りで組み立てます。大事にしていると話すのが「Intuition(直感)」と「Symmetry(対称)」という2つのキーワード。浮かんだアイデアを互いに共有し、全員が納得できたら細部をコピーし合い、カーペットづくりのために編み出した共通言語や、スマートフォンのカメラ機能を上手く利用しながら、カーペットを左右上下対称に拡張していくことを説明しました。
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私たちの多くは普段、大量生産され、流通している日用品を定められた用途に沿って使います。しかしながらWE MAKE CARPETSは、S字フックに「掛ける」という機能以外の側面を見出しました。誰も注意を向けることのない機能重視の雑貨が「アートワーク」に変わる瞬間です。どれくらいの人数で、どれくらいの時間をかけて、どうやってつくり上げたのか、WE MAKE CARPETSの3人は、「雑貨展」の来場者に、想像しながらカーペットを見てほしいと話します。『Hook Carpet』を通して、私たちを取り巻く「雑貨」に思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。
2016年2月27日、企画展「雑貨展」展覧会ディレクター 深澤直人と、本展参加作家のD&DEPARTMENT ナガオカケンメイによるオープニングトーク「雑貨の領域」を開催しました。「雑」という字が示すように、曖昧にして捉えどころのない「雑貨の領域」を、雑貨に対して異なる意見をもつ二人が語りました。
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Photo: 大谷宗平/Nacasa&Partners, Inc.
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いよいよ明日より開催となる「雑貨展」。展覧会の開幕に先駆け、会場の様子をお届けします。
私たちの生活空間に寄り添い、暮らしに彩りを与えてくれる欠かせない存在、たくさんの「雑貨」たち。探す、選ぶ、買う、使う、飾る、取り合わせる......多様な楽しみ方を通じて「モノの持つ力」を再発見できる「雑貨」を、本展では、世界的にもユニークなひとつの文化として改めて俯瞰し、その佇まいやデザインの魅力に目を向けていきます。
展覧会ディレクターの深澤直人をはじめ、企画チームが各々に持ち寄り、議論を重ねて選出した「雑貨展の雑貨」。デザイナーやスタイリスト、店主など、分野を跨いだ12組の出展者がそれぞれの世界観を表現する「12組による雑貨」。日本の歴史や文化を背景に人とモノの結びつきを見つめるイントロダクションや、19組の参加作家による雑貨をテーマにした作品群など、「雑貨」を考える上での数々のヒントで溢れる会場にぜひ、足をお運びください。
Photo: 大谷宗平/Nacasa&Partners, Inc.
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2016年2月26日より開催となる企画展「雑貨展」。
本企画では、展覧会ディレクター 深澤直人をはじめ企画チームや参加作家、出展者がリサーチを重ね、展覧会をつくりあげていく様子を一部ご紹介します。
2016年2月上旬、「雑貨展」参加作家のWE MAKE CARPETSが本展のために来日しました。WE MAKE CARPETSは、オランダで活躍する3名のユニット。ストローや絆創膏、洗濯バサミなどといった日用品を使って、数々の美しいカーペットを制作する彼らが、「雑貨展」では、日本の雑貨を使って新作を発表します。
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3人は2日間かけて、都内のディスカウントストアや百円ショップの大型店舗、ホームセンター、かっぱ橋道具街などを巡りました。店頭に並ぶ数々の「日本の雑貨」の中から、新作の材料となるものを選ぶのです。気になるアイテムは手にとり、大きさや重さ、色のバリエーションまでを見比べて、3人で相談しながら検討をすすめます。
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2日間で出会った無数の「雑貨」の中から、3人が最終的に選んだ材料とは? 21_21 DESIGN SIGHTの中庭に、どのようなカーペットが敷き詰められるのでしょうか。
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2月28日(日)には、3人が登壇するトーク「WE MAKE CARPETS, the making of -雑貨からカーペットへ-」を21_21 DESIGN SIGHT館内で開催。WE MAKE CARPETSのこれまでの活動から、本展のリサーチ、制作のプロセスまでを多数の写真とともにご紹介します。できたてのカーペットとあわせて、ぜひお楽しみください。
>>第1回 雑貨展キックオフ会議
>>第2回 深澤直人と企画チームによる雑貨選定会
>>第3回 『松野屋行商』制作レポート
2016年2月26日より開催となる企画展「雑貨展」。
本企画では、展覧会ディレクター 深澤直人をはじめ企画チームや参加作家、出展者がリサーチを重ね、展覧会をつくりあげていく様子を一部ご紹介します。
2016年1月、「雑貨展」参加作家の寺山紀彦(studio note)が、同じく本展参加作家で荒物問屋の松野屋を訪れ、共同制作するインスタレーション「松野屋行商」の打ち合わせをしました。
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松野屋のバックヤードに広げられた荒物の数々。荒物とは、ほうき、ちりとり、ざるなどの日用品で、明治時代にはこれらを山のように積んだ荷車を引き、街中へ売りに出る行商がいました。本展作品「松野屋行商」ではそんな行商の荷車を、現代の暮らしにあわせてつくられた松野屋の荒物で再現します。
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荷車を引く行商 <横浜開港資料館所蔵>
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明治時代の写真を参考に選んだ道具を並べて、ボリュームを確認したり、荷車への積み方をシミュレーションしたり。展覧会を1ヶ月後に控え、作品がかたちになりつつあります。
「雑貨展」では、会場1階にコンセプトショップ「雑貨店」がオープン。展覧会テーマや参加作家にまつわる雑貨を販売するほか、出展者による期間限定のポップアップショップも予定しています。展覧会開幕となる2月26日(金)からは、「松野屋」ポップアップショップが登場しますので、作品とあわせてぜひお楽しみください。
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※「松野屋」ポップアップショップは3月28日(月)までの出店になります
>>第1回 雑貨展キックオフ会議
>>第2回 深澤直人と企画チームによる雑貨選定会
>>第4回 WE MAKE CARPETS 来日リサーチレポート
2016年2月26日より開催となる企画展「雑貨展」。
本企画では、展覧会ディレクター 深澤直人をはじめ企画チームや参加作家、出展者がリサーチを重ね、展覧会をつくりあげていく様子を一部ご紹介します。
2015年12月、21_21 DESIGN SIGHTの館内で「雑貨展」で展示する雑貨の選定会を行ないました。
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実際の会場を想定して設えた台の上に、これまでのリサーチで集めてきた雑貨がずらりと並びます。展覧会ディレクター 深澤直人と企画チームのメンバーは、これらを用途別に分けてみたり、並べ方を変えてみたりしながら、展示の方針を固めていきました。
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中には、一見しただけでは何に使うものなのかわからないものも。それぞれの「雑貨」を見つけてきたメンバーが、それが何なのかを説明します。
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つくられた国も目的も様々なモノが集まると、不思議とそれらを選んだ人の姿が浮かび上がります。その様子からは、深澤の「『雑貨』には、モノをつくった者だけではなく選んだ者の意志が現れる」という言葉が思い出されるようでした。
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>>第1回 雑貨展キックオフ会議
>>第3回 「松野屋行商」制作レポート
>>第4回 WE MAKE CARPETS 来日リサーチレポート
2016年2月26日より開催となる企画展「雑貨展」。
本企画では、展覧会ディレクター 深澤直人をはじめ企画チームや参加作家、出展者がリサーチを重ね、展覧会をつくりあげていく様子を一部ご紹介します。
2015年12月、「雑貨展」企画チーム、参加作家、出展者が集合してキックオフ会議が開かれました。これまで個別に打ち合わせを重ねてきた関係者が初めて一堂に会し、各々の展示内容や進捗を共有していきます。
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展覧会ディレクターの深澤直人も出席し、自ら持参した「雑貨」を紹介。「デザインもアートもつくる者の意志によって生じるが、定義することが難しい『雑貨』というジャンルでは、そのモノを選んだ者の意志が現れる。本展では、それを来場者と共有したい」と本展に込める想いを述べました。
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会議の後半はフリートークに。他の参加作家や出展者と語り合い、お互いを知ることで展覧会のイメージをより深め、意気込みを強める機会となりました。
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>>第2回 深澤直人と企画チームによる雑貨選定会
>>第3回 「松野屋行商」制作レポート
>>第4回 WE MAKE CARPETS 来日リサーチレポート
2016年2月26日より開催となる企画展「雑貨展」に関連して、『装苑』3月号に、展覧会ディレクター 深澤直人をはじめ、本展企画チームや出展作家のインタビューが掲載されました。また、深澤直人と企画チームが本展で展示する雑貨を選定している様子も紹介されています。
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『装苑』3月号