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日本のデザインミュージアム実現にむけて展 (53)

2015年3月28日(土)に放映されたNHK BSプレミアム「三宅一生 デザインのココチ」が、4月23日(木)10:00-11:00に再放送されます。

21_21 DESIGN SIGHTディレクターの一人である三宅一生が、Reality Lab.の若いスタッフとともに徹底的に試行錯誤を繰り返す創造の現場を番組が4ヶ月に渡り密着取材。目下最大のテーマである132 5. ISSEY MIYAKEの、あるシリーズの構想から完成までのプロセスをつぶさに記録しています。

2010年 企画展「REALITY LAB―再生・再創造」展、2012年 企画展「田中一光とデザインの前後左右」、2013年 企画展「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」でも展示された132 5. ISSEY MIYAKEの創造の過程と三宅一生の仕事の現場を、ぜひご覧ください。

>>NHK番組紹介サイト


写真提供:NHK

2015年3月28日(土)14:30-15:30、NHK BSプレミアムにて「三宅一生 デザインのココチ」が放映されます。

21_21 DESIGN SIGHTディレクターの一人である三宅一生が、Reality Lab.の若いスタッフとともに徹底的に試行錯誤を繰り返す創造の現場を番組が4ヶ月に渡り密着取材。目下最大のテーマである132 5. ISSEY MIYAKEの、あるシリーズの構想から完成までのプロセスをつぶさに記録しています。

2010年 企画展「REALITY LAB―再生・再創造」展、2012年 企画展「田中一光とデザインの前後左右」、2013年 企画展「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」でも展示された132 5. ISSEY MIYAKEの創造の過程と三宅一生の仕事の現場を、ぜひご覧ください。

>>NHK番組紹介サイト


写真提供:NHK

文化服装学院インダストリアルマーチャンダイジング科2年生のみなさんが、昨年12月に「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」を鑑賞し、今年3月の授業最終日に、デザインミュージアムについて各自のプレゼンテーションを行いました。

プレゼンテーションのテーマは「展覧会をヒントに、未来のデザインミュージアムについて思うこと、形や仕組みのアイディアなどを自由に考えてください」。学生たちは、それぞれが感じた問題点やアイディアを、発表にむけてまとめました。

普段はあまり考える機会がないというミュージアムについて、服飾の学生ならではの新鮮な意見が飛び交ったこの時間は、未来のデザインミュージアムにむかう、ひとつの大切な一歩であることは間違いありません。
展覧会は2月に終了していますが、その後もこのような授業を継続してくださいました先生と学生のみなさま、ありがとうございました。

企画展「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」は、来場者の皆様をデザインミュージアムの"入口"へと誘う展覧会です。
ウェブサイト上の本連載では、会場を離れ、各界で活躍する方々が未来のデザインミュージアムにぜひアーカイブしたいと考える"個人的な"一品をコメントとともに紹介します。
展覧会と連載を通じて、デザインの広がりと奥行きを感じてください。

Photo: Hiroshi Iwasaki

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2014年2月2日、学生によるキックオフトーク「こんなデザインミュージアムをつくりたい!」を開催しました。聞き手をつとめたのは、ともに美術大学で教鞭をとる、デザインジャーナリストの森山明子とクリエーターの菱川勢一。高校生から大学院生まで、所属も専攻も異なる10名の学生たちが、未来のデザインミュージアムの姿について、熱い議論を交わしました。

最初のテーマ「『デザインミュージアム』いる?いらない?」では、「眠くならないミュージアム」「芸術もスポーツのように毎日ニュースになると良い」など、日常生活に根ざした意見のほか、「日本人が何をつくって、どう生きてきたのかを、日本だけでなく世界のためにも後世に残していく責任と義務がある」「ミュージアムのためのミュージアムではなく、日常生活の延長にあるミュージアムを」という意見が出ました。

次のテーマは「どんなコレクション?どんな展示?」。ここでは、「日本ならではのもの」「デザイナー自身が集めたものを通してデザイナーが考えたこと」を展示するという意見から、「伝統文化から近代デザインへのつながりを見せる」「常設展を持たず、デザインのプロセスや、手を動かす参加型の展示を」「見るだけでなく、触って、使えて、買えるデザインを」などのアイデアが出ました。

最後のテーマは、「どんな場?」。「障害者やこどもなど、誰もが楽しめる場所」「地域の伝統文化やデザインを共有できる場」「誰もが気軽に入れる、身近で、敷居の低い場所」という意見のほか、「国立近代美術館と工芸館の間につくる」「デザインミュージアム認定制度をつくり、既存の企業美術館などの私立美術館を国が補助する仕組みをつくる」など、具体的なアイデアも語られました。

参加者はそれぞれに、「6年後のオリンピックに向けて頑張りたい」「2020年にデザインミュージアムができるのが楽しみ」「できたら真っ先に行きたい」など、日本のデザインミュージアムの実現を、心から願っている様子。キックオフトークは「これからは若い人たちが中心につくっていく時代」「大学の枠を超えて語り合う意義を感じた」など、意欲的な意見交換の場となりました。最後に菱川が制作した秘蔵映像を上映し、これからは皆さんの時代であると、参加者に希望に満ちたエールを送りました。

企画展「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」は、来場者の皆様をデザインミュージアムの"入口"へと誘う展覧会です。
ウェブサイト上の本連載では、会場を離れ、各界で活躍する方々が未来のデザインミュージアムにぜひアーカイブしたいと考える"個人的な"一品をコメントとともに紹介します。
展覧会と連載を通じて、デザインの広がりと奥行きを感じてください。

神原神社古墳出土、三角縁神獣鏡
所蔵:文化庁
写真提供:島根県立古代出雲歴史博物館

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ヤマハのスピーカー/デザイン:吉泉聡(ヤマハデザイン研究所)

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写真:中西あゆみ/協力:三沢紫乃

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企画展「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」は、来場者の皆様をデザインミュージアムの"入口"へと誘う展覧会です。
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展覧会と連載を通じて、デザインの広がりと奥行きを感じてください。

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企画展「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」は、来場者の皆様をデザインミュージアムの"入口"へと誘う展覧会です。
ウェブサイト上の本連載では、会場を離れ、各界で活躍する方々が未来のデザインミュージアムにぜひアーカイブしたいと考える"個人的な"一品をコメントとともに紹介します。
展覧会と連載を通じて、デザインの広がりと奥行きを感じてください。

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「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」企画協力でジャーナリストの川上典李子によるデザインコラム。本展のために行ったリサーチから、各国のデザインミュージアムの現状や日本のデザインミュージアムの未来像を、連載でお伝えします。

今回のコラムでは国内の美術大学におけるデザインコレクションに焦点をあてたいと思います。美術、デザインを中心として資料の収集と体系化、情報の発信を行っている武蔵野美術大学 美術館・図書館(東京)。コレクションの様子など、館長の田中正之氏に話をうかがいました。

武蔵野美術大学 美術館・図書館

──貴校美術館でのデザイン資料や美術作品の収蔵は1967年からとのこと。現在、最も多くのコレクションを誇るのは「椅子」であるとうかがっています。収集にあたっての視点をお聞かせください。

田中氏:椅子の収蔵は現段階で約350点となります。コレクションにあたっては次の基準を設けて行っています。 1) 19世紀後半以降に製作された量産、量販既成品としての椅子、2) 工場で量産され、販売ルートを通じて買うことのできる椅子、3) 今日でも一般の生活者が比較的容易に買うことのできる椅子、4) 一人用で、また、家庭で使う椅子、5) 150年余りにおよぶ近代デザイン椅子の変遷において新しい素材や加工技術、その時代の美的感覚で生まれたフォルム等、デザインの歴史的な変遷と密接に関係している椅子、6) 椅子の主な構造になる素材や、人が触れる面の素材や仕上げ、形態や機構の特徴が多様な椅子、7) 一時的流行を超え、機能性に優れていて、物性的にも経年変化せず、歴史的評価にも耐えうる椅子。以上の7点です。

左:Red and Blue/Gerrit Thomas Rietveld/G.A.van der Groenekan/1918
右:スポークチェア/豊口克平/天童木工/1962

──ほかの収蔵作品についても簡単な内訳を教えていただけますか。

田中氏:グラフィックデザインに関わる主な所蔵品としては、19世紀後半から現代に至る国内外のポスター 約3万点となります。装丁本、ブックデザインについては杉浦康平氏による装丁本約5000点、横尾忠則氏によるブックデザイン約900点、平野甲賀氏による装丁本約300点を含みます。

プロダクトデザインの主な所蔵品では、家電が約160点となります。照明器具 80点、時計約40点などで、企業のまとまった製品としてはブラウン社の製品を約50点含んでいます。さらに事務用の製品が約100点となります。こちらはタイプライター 約20点があり、うち11点はオリベッティ社の製品となります。さらにはテーブルウェア約200点を含む生活用品約420点、ネフ社の「Naef-Spiel」、ダネーゼ社の「ANIMALI COMPONIBI」も含む知育玩具が約410点です。

また、音響映像機器が約90点、光学機器が約10点となります。音響映像機器ではブラウンのラジオ・レコードプレーヤー複合機「SK4」、ポケット・トランジスタラジオ「T3」など、光学機器約ではコダックのスライドプロジェクター「カルーセル-AV2000」、富士写真フィルムの35mmEEカメラ「HD-4FUJICA」などを含んでいます。

左:蜂印香鼠葡萄酒/町田隆要(信次郎)/近藤利兵衛商店/1912-16
右:嗚呼鼠小僧次郎吉/平野甲賀/演劇センター68/71/1971

──全体として実に幅広い収蔵品となっていることがうかがえます。知育玩具の収蔵数の多さもいまうかがえましたが、その収集はどのような背景から始まったのでしょうか。

田中氏:当館は開館以来、本学での教育研究に資することを目的としたデザイン資料の収集に努めてきました。とりわけ、プロダクトデザイン資料はグラフィックデザイン資料と並ぶ貴重な研究資料として、積極的に収集してきた分野となります。その一部として玩具を含んでいます。

左:Naef-Spiel/Kurt Naef/Naef/1957
右:Diamont/Peer Clahsen/Naef/1981

──個人のコレクションも収蔵されているなど、他の美術大学の美術館にはない特色を感じます。

田中氏:音楽評論家として活躍した中村とうよう氏のコレクションでは、民族楽器やSPレコード、LPレコードなどの貴重な音楽資料を含みます。他にポスターコレクションでは、戦前の商業ポスターや商品ポスターであり、印刷技術の面においても重要な資料である多田北烏氏や町田隆要氏らによるポスター、約130点を収蔵しています。戦後活躍したグラフィックデザイナーのうち、杉浦康平、横尾忠則、平野甲賀、木村恒久、小島良平の各氏については、それぞれ多くの作品を所蔵しています。

「運動や活動」として、グラフィックデザイナーの登竜門的存在であった日宣美のポスターや関連資料、1965年に行われたペルソナ展出品資料、1960年代後半からのアングラポスターも多数所蔵しています。海外ポスターも多く所蔵しており、なかでもポーランドの美術館とはコレクションの寄贈・交換などを行い、すでに約650点のポーランド・ポスターの収蔵となりました。

──それらの貴重な収蔵品は教育的視点に基づいた企画展覧会に活かされています。外部から高く評価されている貴校の活動の一つとなっていると思います。

田中氏:当館では定期的に、所蔵作品をもとにした様々な視点による展覧会を企画、開催しています。それらの展覧会はデザイン教育と研究の核となる活動として、企画には本学教員が関わり、実践的な学習の場として学生も積極的に参加できるよう心がけています。

こうした展覧会は一般にも公開しており、本学学生のためのものに終わらず、広く社会一般の方々がデザインについて深く知り、楽しんでもらうための場となることを目指しています。またデザイン資料の積極的な収集は、デザインの教育と研究のための環境整備であり、「武蔵野美術大学の美術館」の基本となっています。今後も引き続き、デザイン教育研究機能の充実を図るための資料の収集を行っていく計画です。

「ムサビのデザイン|コレクションと教育でたどるデザイン史」展会場風景、2011年
監修:柏木博(同学造形文化・美学美術史教授)、松葉一清(同学造形文化・美学美術史教授)

──貴校の美術館・図書館のさらなる特色は、美術館の付属施設に「民俗資料室」が含まれていることかと思います。昨年秋に開催されていた民俗資料室の展示のタイトルに「デザインの原像としての民具」とあったように、現代デザインを深く理解するうえでも重要な資料を多数収蔵されていらっしゃいます。

田中氏:民俗資料室では一般の人々が日々の暮らしの中で生み出し、使い続けてきた暮らしの造形資料、たとえば全国各地の陶磁器・竹細工・布・鉄器・木器・郷土玩具・信仰資料などを約9万点所蔵しています。これらのコレクションは美術やデザインを学ぶ研究資料として活用されており、その管理と展示・公開などの活動を行っています。今後もこれらの活動を行うための資料の収集を継続していく予定です。

左上:千把扱き 石川県珠洲市 鉄、木
左下:木挽鋸 広島県賀茂郡大和町 鉄、木
右上:米揚げ笊 新潟県佐渡郡畑野町 矢竹 洗った米を揚げる
右下:苗籠 岡山県井原市 竹 天秤棒で担いで苗を運ぶ

──教育機関として幅広い品々を収集、展示を続けるなかで、「日本のデザインミュージアムの実現」に関しては、今後どのような視点が大切であるとお考えでしょうか。

田中氏:ミュージアムの根本的な土台となるのはコレクションです。世界、あるいは日本のデザインの歴史において重要な意味を持つ諸作品、諸資料のコレクションをどれだけ充実させていけるかどうかが、最も肝要となります。同時に、関わる人材も重要です。それらの作品と資料を、適切に研究・調査、管理・保管し、有効に展示公開等に活用していくための研究者、学芸員の体制を整える必要があると考えています。本学では、全学共同の研究組織である「造形研究センター」が2008年度に創設され、本学が所蔵する図書資料および美術・デザイン資料の統合的研究・教育のための基盤整備および統合データベースの構築を行いました。

──造形研究センターの創設も他大学から注目されていますね。基礎をしっかり構築したうえで統合的な研究施設を目ざされている貴校図書館・美術館の活動に関するご説明を、ありがとうございました。

日本における総合的なデザインミュージアムのあり方を考えるために、海外のデザインミュージアムを始め、デザインの研究、収集、展示を行う国内美術館の活動例に目を向けてみました。日本のデザインミュージアムの実現においては、それぞれに特色豊かな既存施設のネットワークも大切になってくることでしょう。
デザインは世の中のあらゆる面に関係する活動です。様々な角度や学際的にデザインをとらえることの重要性を忘れてはなりません。また、具体的な物に留まらない研究や資料の収集、デザインの原動力や周辺活動も対象とすることの必要性は、今回取材でうかがった他の施設の皆さんも指摘くださった点でした。関係者からの課題や今後の可能性は、日本のデザインミュージアム実現に向けての貴重なヒントとなります。

文:川上典李子

>>川上典李子のデザインコラム Vol.1
>>川上典李子のデザインコラム Vol.2

館内のモニター展示ではデザインに関する国内の特色あるミュージアム例として、印刷博物館、サントリー美術館、資生堂企業資料館、竹中大工道具館、トヨタ博物館を紹介しています。
海外のミュージアムからは、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、ポンピドゥー・センター国立近代美術館、ヴィトラ・デザイン・ミュージアム、クーパー・ヒューイット国立デザインミュージアム、ニューヨーク近代美術館、東大門デザインプラザの考え方や活動をコンパクトに紹介しています。

企画展「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」は、来場者の皆様をデザインミュージアムの"入口"へと誘う展覧会です。
ウェブサイト上の本連載では、会場を離れ、各界で活躍する方々が未来のデザインミュージアムにぜひアーカイブしたいと考える"個人的な"一品をコメントとともに紹介します。
展覧会と連載を通じて、デザインの広がりと奥行きを感じてください。

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2014年1月19日、「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」関連プログラム、日本デザイン振興会プレゼンツ〈2日間連続トークシリーズ〉Vol.2「日本人の生活の豊かさとデザイン」を開催しました。日本の文化性・地域性を踏まえ、長年デザインエクセレントな活動をしている企業より、金井政明(株式会社良品計画 代表取締役社長)、福光松太郎(株式会社福光屋 代表取締役社長)の2名が登壇し、モデレーターを本展企画の森山明子が務めました。

冒頭では、双方の登壇者に縁のあるデザイナー、田中一光との関わりについて紹介。
田中の存在は両者にとって大きく、福光は「自分の身の回りのものをいかに豊かにするかに、(田中は)身を注いでいた」と回想し、金井は「世の中の高級品と生活の豊かさは違うと、一光さんは無印良品の仕事を通して教えてくれた」と続きました。

そして、本展Web連載「私の一品」にちなんで、3名の選ぶ一品が会場内で披露されました。まず、森山が高橋睦郎著『金沢百句・加賀百景』を紹介。表紙に金沢の和菓子「福梅」が描かれているこの書籍は、田中一光が装幀を手がけたもの。続いて、福光は自社の日本酒「黒帯 悠々」を紹介。「水のようなお酒」という題目のもと、当時はなかった「美味しくて軽いお酒」という概念を捻り出し、発表以来金沢の割烹や料亭にテストを行ない、改良をしているそう。また、金井は「誰々がデザインした○○」と唱うように、デザイナーの名前でものが誘導されるスタンスでのものづくりは行なっていない旨を述べたのち、シェーカー系譜の木製のドーナッツの抜き型を紹介しました。

また「日本」というテーマに関して、「無印良品は無名性にこだわり、個性を取り払い、ものの本質を表していることが、海外から日本的であると評価されているのではないか」と金井は語り、福光は「海外のために味や姿を変えるのではなく、自身が良いと思ったものを打ち出す」と語りました。豊かさとは、日々の生活の本質に即しており、そこをいかに気持ち良くさせるかに、自らの仕事を通して尽力されている2名の話に会場は盛り上がりをみせました。

2014年1月18日、「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」関連プログラム、日本デザイン振興会プレゼンツ〈2日間連続トークシリーズ〉Vol.1「特別でない、日常の道具をデザインする」を開催しました。

人々がふだんの暮らしで使う日常的なプロダクトのデザインをフリーランスとインハウスそれぞれの立場で手がける女性デザイナー、松本博子(株式会社東芝 デザインセンター 戦略デザイン推進部 主幹)、柴田文江(プロダクトデザイナー)が登壇し、「暮らしに欠かせないデザイン」という視点でデザインの価値や魅力を語り合いました。

企画展「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」は、来場者の皆様をデザインミュージアムの"入口"へと誘う展覧会です。
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2014年1月11日、「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」関連プログラム「現場からみる、デザインミュージアムの可能性」を開催しました。
日本のデザインミュージアムの可能性を考える対話の場となった今回。鄭 國鉉(ソウルデザイン財団 DDP 総監督)、木田拓也(東京国立近代美術館 工芸課主任研究員)、坂本忠規(公益財団法人 竹中大工道具館 主任研究員)の3名が登壇し、モデレーターをアソシエイトディレクターの川上典李子が務めました。

はじめに各々の施設紹介が行われました。木田は「『デザイン』の受け皿の必要性」、「『名品主義』を乗り越えて」、「雑多な資料的なものを貪欲に」をキーワードに、日本の国立美術館のうち、唯一デザインをコレクションに設けている東京国立近代美術館の変遷と課題を語りました。

続いて坂本は「用を極めて美に至るという言葉があるように、大工道具自体にデザインがあるのではないか」、また「その道具がつくり出すものにデザインがある」と大工とデザインの関連性を述べ、企画展では宮大工の仕事や数寄屋を実際の建築物で展示している旨を語りました。

そして鄭は、一般庶民に近しいミュージアムとして、様々な産業をクロスオーバーさせる場としてのDDP(2014年3月21日にグランドオープン)像を語りました。美術館、企画展スペースの他に、研究者や新人デザイナーの発表と交流のスペースや、施設公園内にデザインをテーマとした市民参加型の市場を設けるなど多角的な施設となるようです。

そして今後の日本のデザインミュージアム像について、学生ボランティアや市民がより施設の内部に関わりを持つことの重要性が語られる一方で、日中韓の相互交流のあり方にも話は展開。日本の精神的・文化的価値に基づくデザインを紹介するだけでなく、政治的なしがらみを超えて国同士を結びつける場として、デザインミュージアムが必要ではないかとトークは締めくくられました。

企画展「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」は、来場者の皆様をデザインミュージアムの"入口"へと誘う展覧会です。
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「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」企画協力でジャーナリストの川上典李子によるデザインコラム。本展のために行ったリサーチから、各国のデザインミュージアムの現状や日本のデザインミュージアムの未来像を、連載でお伝えします。

前回のコラムでは、海外のデザインミュージアムの例をとりあげました。今回は、日本におけるデザインに関するコレクションの様子を見ていきましょう。まずは、東京国立近代美術館をご紹介します。工芸課主任研究員の木田拓也氏にお話をうかがいました。

──まずは東京国立近代美術館工芸課の収蔵品の概要をお教えいただけますか。収集の視点についても、ぜひお教えください。

木田氏:工芸館の収蔵作品としては、「工芸」は2,365点、「デザイン」は923点になります。
工芸に関しては、当館では、基本的には近代の個人作家が制作した作品をコレクションの対象としています。陶磁、漆工、金工、染織、ガラスなどで、人間国宝の認定を受けた工芸家による作品が重要な柱になっています。工芸に関しては、日本の近代工芸の歴史的な流れをたどることができる、名品ぞろいの充実したコレクションになっていると自負していますが、デザインに関しては、いまだ体系化を意識するような段階には至っていません。デザインに関しても、基本的には、誰がデザインしたかという視点で、デザイナーが特定できるものがほとんどです。

北大路魯山人『金彩雲錦鉢』1951年、東京国立近代美術館蔵

──デザイン分野の収蔵品は、大きく二つに分類したうえで行われていますね。

木田氏:はい、「デザイン」としての収蔵品は、分類上は「工業デザイン」と「グラフィックデザイン」としています。「グラフィックデザイン」はポスターがほとんどです。「工業デザイン」というと領域としてはかなり幅広くなりますが、内容的には、クリストファー・ドレッサーのテーブルウエアや、アール・デコの家具、戦後の森 正洋先生のテーブルウエアなどのように、「工芸」と隣接しているものがほとんどとなっています。

ピエール・シャロー『書斎机、椅子』1928年頃、東京国立近代美術館蔵

──所蔵作品決定はどのようになされるのでしょう。また、近年新たに追加された所蔵作品がありましたら、お教えください。

木田氏:作品の収蔵にあたっては、他の作品も同じですが、購入するにしろ、寄贈を受けるにしろ、毎年1回開催される外部の有識者で構成される委員会を経て、正式にコレクションに加えられます。近年コレクションに加わった重要作品としては、バウハウスのマルセル・ブロイヤーの『肘掛け椅子』(1922-25年頃)、マリアンネ・ブラントの『ティーセット』(1925年頃)があります。

直近では、原 弘(1903-1986)先生のポスターがコレクションに加わりました。原 弘先生には、1952年の東京国立近代美術館開館以来、20年以上にわたって当館の展覧会のポスターをデザインしていただいていました。「コレクション」とすることもないまま、内部資料として、館内にただ保管してあったのですが、2012年、当館の開館60周年を機に、「原弘と東京国立近代美術館」展を開催してこれまで当館のために手掛けていただいたポスターなどを展示しました。その後、ポスターや印刷原稿など約200点を正式に「コレクション」として加えました。

──グラフィック関係の収蔵作品では特定の制作者を軸として多数の作品が集められている様子がうかがえます。工業製品に関しては今後、どのような計画をたてていらっしゃいますか。

木田氏:確かにグラフィックデザインに関して、1990年代中ごろから2000年頃までは、作品収集を前提に回顧展を開催していました。日本のグラフィックデザインに関して、杉浦非水、亀倉雄策、福田繁雄、田中一光、永井一正各先生のポスターがまとまって収蔵されているのはそうした経緯があったからです。その一方で、プロダクトデザインに関して意識的に収集を開始したのは2000年ごろからと記憶しますが、やはり展覧会を開催した後、その出品作の一部をコレクションに加えるというかたちをとっており、森 正洋、小松 誠先生らの作品が加わりました。

アルフォンス・ミュシャ『サラ・ベルナール アメリカン・ツアー』1895年、東京国立近代美術館蔵

──貴館では1920年代〜1930年代の作者不明のプロダクトも収蔵されていますが、同様に作者不明の品々、またアノニマスデザインを収蔵される可能性はありますか。海外のデザインミュージアム関係者と話をしていると、デザインの起源としてのアノニマスデザインに興味を抱く方がおり、私もそうした方々から日本のものづくりに関する質問を受ける機会が増えました。

木田氏:そこがやはり当館では悩むところです。確かに、アール・デコ時代のコンパクトやライターなど、「作者不詳」のままコレクションになっていますが、ひじょうにイレギュラーなケースです。工芸作品の場合、原則として個人作家のものにこだわって収集してきているので、デザイン分野においても、アノニマスデザインなど作者不明のものは、基本的にはコレクションにはしにくいと思います。

──展覧会と収蔵作品の関係はどのようになっているのでしょうか。

木田氏:東京国立近代美術館では1995年から、小規模ながらデザインの企画展を毎年開催しています。当初は京橋のフィルムセンターの展示室で、2002年からは本館(竹橋)の2階のギャラリー4で行っています。デザイン作品をベースにした所蔵作品展としては、例えば、「アール・デコ展」などのようにある時代に焦点を当てたもの、あるいは花や動物などといったようなモチーフをテーマに取り上げる場合などは、工芸とデザインの区別なく展示する場合があります。

東京国立近代美術館の展覧会から。「あかり:イサム・ノグチがつくった光の彫刻」展(2003年)
東京国立近代美術館の展覧会から。「柳宗理:生活のなかのデザイン」展(2007年)

──今後、新たに収集を行う予定の分野、あるいは特に収集に力を入れていく分野がありましたら、お聞かせください。

木田氏:やはりこれまでと同じように、デザインに関する展覧会を開催し、その展覧会から収蔵品に加えるというかたちで、少しづつコレクションを膨らませていくというのが、基本的な路線になると思います。当館の美術作品や工芸作品のこれまでの収集方針からいって、数をむやみに増やすことよりも、デザイン史というものを描き出そうとするときに欠かせないデザイン作品、しいて言えば、それがデザインの「名作」ということになるかと思いますが、それをコレクションに加え、それを軸に内容を膨らませていくというのが基本姿勢になると思います。

──最後に、日本のデザインミュージアムについておうかがいいたします。
日本の美術、工芸、デザインの研究や収集・展示に関わる立場で、「日本のデザインミュージアムの実現」に向けて今後、どのような点や考え方が重要になると感じていらっしゃいますか。

木田氏:近年、「デザインミュージアム」構想がさかんに議論されていますが、個人的には、「デザインミュージアム」はぜひ実現してほしいと思います。というのも、デザイン作品や資料を貪欲に受け入れる受け皿がこの日本には必要だと思うからです。「美術館」という組織のなかで働く一人として痛感するのは、美術館というのは、どうしても「名品主義」のようなところがあり、デザイン作品のように複数あるものはどうしても軽視してしまうということです。いつでもその気になればコレクションに加えられるという気がするので、後回しになってしまうのです。それと「作品」にこだわるあまり、その周辺資料などを軽視しがちだということがあります。

デザインに関しては、完成した「作品」そのものももちろん大切ですが、デザイナー自身の思考の痕跡、悩みやひらめき、霊感の源泉を実証的に示すものというのは、じつは「作品」となる前の下図やマケット類など周辺資料に含まれているのであり、そうしたものにこそ、資料的に高い価値があるといえます。デザインミュージアムというのは、そういうものをとりこぼすことなく、貪欲に収集し、整理し、公開する施設であってほしいと思います。

──従来の美術館とはまた異なる役割も必要となってくるのではないでしょうか。

木田氏:「デザインミュージアム」が実現できるとすれば、うやうやしく作品を鑑賞する「美術館」とはやや性格の違うミュージアムであってほしいと思います。デザイナーを「天才」として権威づけるような場所ではなく、デザイナーを取り巻くさまざまな方々──スタッフはもちろん、アイデアを実現する生産現場の方々、広告宣伝に関わる方々などさまざまな職業の方々──が創意工夫しながらデザイナーのアイデアを実現するために知恵を絞っている、そうした現場の臨場感やその記憶をとどめる周辺資料も含めて収集展示するような、そんなミュージアムであって欲しいと思います。おそらくそれは生き生きとしたアーカイブに近いような性格のものではないか思います。

また、「デザインミュージアム」は、たんなる産業博物館のような「モノの墓場」になってもらいたくないと思います。そのミュージアムを訪れる誰もがそうした先達の経験や叡智に触れ、それを糧に、新しい日本のものづくりの未来を切り拓いていこうとする前向きな気持ちになれるような、そんなエネルギーの源泉として機能するようなミュージアムであってほしいと思います。さらに欲を言えば、これからの人とモノとの関係というものを考える場でもあってほしいと思います。

──東京国立近代美術館の収蔵作品の考え方から、日本におけるデザインミュージアムの可能性まで、貴重なお話をありがとうございました。

文:川上典李子

>>川上典李子のデザインコラム Vol.1

*木田拓也氏も登壇するトークを開催します

2014年1月11日(土)14:00 - 16:00
他の登壇者は、鄭 國鉉氏(ソウルデザイン財団 東大門デザインプラザ 総監督)、坂本忠規氏(公益財団法人 竹中大工道具館 主任研究員)です。
>>トーク「現場からみる、デザインミュージアムの可能性」

企画展「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」は、来場者の皆様をデザインミュージアムの"入口"へと誘う展覧会です。
ウェブサイト上の本連載では、会場を離れ、各界で活躍する方々が未来のデザインミュージアムにぜひアーカイブしたいと考える"個人的な"一品をコメントとともに紹介します。
展覧会と連載を通じて、デザインの広がりと奥行きを感じてください。

>>「私の一品」一覧リストを見る

企画展「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」は、来場者の皆様をデザインミュージアムの"入口"へと誘う展覧会です。
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クリスマスを含めた3日間、17:00以降にご入場のお客様は特別にどなたでも入場料無料になります。華やかな東京ミッドタウン・ガーデンのイルミネーションとあわせて、21_21 DESIGN SIGHTに凝縮されたデザインの世界を存分にお楽しみください。

期間:2013年12月23日(月・祝)- 12月25日(水)<3 日間>
開館時間 11:00 - 20:00のうち、17:00以降の入場が無料(入場は19:30まで)

*通常は火曜休館のところ、12月24日(火)は特別開館いたします
*12月20日(金)- 25日(水)、東京ミッドタウン館内ではイルミネーション混雑期間の一方通行規制が行われ、16:00以降ガレリア(商業施設)からミッドタウン・ガーデンへの通り抜けはできませんのでご注意ください。21_21 DESIGN SIGHTへは、外苑東通りに面している側のミッドタウン・ガーデンからご入場ください
詳細は東京ミッドタウンのウェブサイトをご覧ください
>>東京ミッドタウン ウェブサイト

「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」企画協力でジャーナリストの川上典李子によるデザインコラム。本展のために行ったリサーチから、各国のデザインミュージアムの現状や日本のデザインミュージアムの未来像を、連載でお伝えします。

>>各国デザインミュージアムのいま 前編へ

社会の変化をふまえたミュージアムであること

各館関係者のコメントから、現代のデザインミュージアムに関する重要な点がいくつか見えてきました。社会の変化にどう向き合うのかということです。ひとつが、オンラインなどのデジタル発信。前編で紹介したV&Aのアルモンド氏はこう述べます。

「V&Aのコレクションをデジタル形式でも体験できるようになっています。『創造性を刺激する』というV&A の目的を、我々が関わる全ての活動において、館内とオンラインの双方を用いてはっきり示していくことが大切だと考えています」

パリ、ポンピドゥー・センター国立近代美術館のギヨーム氏の言葉も引用しておきます。「デジタルツールの登場によって今日の学習スタイルも変化しています。そのなかでミュージアムは、知識と経験をいかに構築するのかという課題に直面しています。デザインミュージアムは創造性の拠点。国内外の文化の動向や、デジタルがもたらす変化との相乗効果を視野に入れるべきだと考えます」

「現実そして仮想の環境も絶えず変容します。 状況を考慮し、増えつつある非物質的な作品にも向きあうことが、博物館学・美術館学、ミュージアムの視覚化において、求められています。もうひとつの課題は、デザイナーの役割を改めて考察することです」

© Centre Pompidou, MNAM-CCI /Dist. RMN-GP Photo: Georges Meguerditchian
© Centre Pompidou, MNAM-CCI, Service des collections Photo: Adam Rzepka

2014年の新たな動きーニューヨーク、ソウル

デザインミュージアムに関する2014年の注目すべき動きにも触れておきましょう。

© Cooper-Hewitt Press Images, Photo: Dennis Cowley.

1897年に開館し、1967年以来はスミソニアン財団の一部となっているニューヨークのクーパー・ヒューイット国立デザインミュージアム。現在は改装中で、2014年秋に展示空間を従来の6割ほど拡大して再オープンします。

教育プログラムに力を入れている同館の活動は改装中も積極的に継続されており、教育プログラムなどの催しは、ニューヨークではハーレムのクーパー・ヒューイット・デザインセンターで行われています。さらに「デザイン・イン・ザ・クラスルーム・プログラム」をニューヨークの他、ニューオリンズ、サン・アントニオ、ワシントンDC などの各地で行われています。海外でも開催されています。

© Cooper-Hewitt, National Design Museum, Smithsonian Institution

さて、来春の話題は、来年3月にソウルに誕生するデザインミュージアムです。その名は東大門(トンデムン)デザイン・プラザ(DDP)。ソウルデザイン財団によって運営されます。ザハ・ハディッドが設計した建築施設もすでに世界の話題を集めています。同館の広報担当者はこう述べます。

「地下3階、地上4階の建物内では5つの空間に15の機能を備えています。デザインミュージアムのほか、アートホール、ビジネスセンター、公園などです。 DDPには際立った特徴がいくつもありますが、なかでも特徴的なのは建物を覆う約45,000枚のカーブしたアルミパネルでしょう。きわめて高い技術力が集結されていることを物語っています」

「DDPの目的はソウルのクリエイティブ産業を活性化し、グローバルなネットワークを構築することです。また、現在の文化的な資産に未来的な要素をもり込んでいきたいと考えています。それらを通じて文化や創造性の中心地として機能し、来館者に韓国のダイナミズムやアジアの創造性を見てもらうことができるものと考えています」

© The Dongdaemun Design Plaza

館長に就任する鄭 國鉉(チョン・クッキョン)氏はサムスン電子デザイン経営センター副社長に所属していた人物。「BeSeT(ベセット)と呼ばれる北京、ソウル、東京の施設の連携など、アジアのデザインミュージアムの連携を図っていきたい」と抱負を語ってくれました。鄭氏は2014年1月11日(土)に21_21 DESIGN SIGHT館内で開催予定の関連プログラム「トーク『現場からみる、デザインミュージアムの可能性』」に出演します。より具体的な話を聞ける機会となります。

© The Dongdaemun Design Plaza

アーカイブの方針や運営の仕方、そして何をどう伝えていくのか。できるだけ幅広く歴史を網羅するコレクションを誇る施設があれば、対象を明快にコレクションと研究を進める施設もあるなど、各館それぞれに特色があります。収集・保存、調査・研究、展示・紹介、教育などミュージアムに求められる複数の役割は共通していますが、各々に独自の試みを続けていることがうかがえます。

では、日本における総合的なデザインミュージアムを考える際、それも21世紀に誕生するデザインミュージアムとして、どのような可能性があるのでしょうか。「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」は、日本のデザインの背景に目を向けるところから、そのことを考える場となっています。(Vol.2へ続く)

文:川上典李子

「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」企画協力でジャーナリストの川上典李子によるデザインコラム。本展のために行ったリサーチから、各国のデザインミュージアムの現状や日本のデザインミュージアムの未来像を、連載でお伝えします。

デザインを感じることができると同時に、生活との関係についても考える機会をつくる施設。未来に伝えるべきものを収集、アーカイブし、それら一つひとつの意味に触れる場となると同時に、今後の生活、創造活動に結びつける活動がなされる場......世界には様々なデザインミュージアムがあります。

デザインミュージアムとして計画された施設はもちろん、工芸館として長く活動してきた施設がデザインミュージアムと名を新たにしたものもあります。ニューヨーク近代美術館やポンピドゥー・センター国立近代美術館のように、デザイン部門の収蔵、研究、展示が充実した近代美術館も忘れてはなりません。

日本における総合的なデザインミュージアムの実現にむけて考える本展にあたり、まずは各国のデザインミュージアムの現状に目を向けてみたいと思います。今日までの活動、それらの活動をふまえて感じている課題については本展会場でも紹介していますが、今回のコラムでは、その取材時にうかがったことばを抜粋しながら、お伝えしましょう。

ヴィクトリア・アンド・アルバートミュージアム

日常の品々を収集し紹介するデザインミュージアムとして、世界でも最も歴史のある施設は、ヴィクトリア・アンド・アルバートミュージアム(V&A)。1851年にロンドンで開催された第一回万国博覧会のために収集された品々と国立デザイン学校のコレクションを軸として翌1852年、デザインを学ぶ学生を対象とする産業博物館として開館、さらに1957年、広く市民を対象とする装飾美術館として現在の場所に開館しました。

The John Madejski Garden © Victoria and Albert Museum

現在はイギリスにおける文化・メディア・スポーツ省(DCMS)から財政支援を受けた政府外公共機関(NDPB)として、「2011年慈善法」に基づく登録除外チャリティの位置づけとなっています。すなわち政府と対等な関係で、英国首相より任命された評議会によって管理されています。

収蔵品の多さを誇るV&A。2013年3月31日時点での総数は200万点を超える2,241,718点。内訳はオブジェや芸術作品1,182,876点のほか、書籍および定期刊行物は1,058,031点、手稿・写本、書簡などの文書が811点です。これらのなかで常設展示にふさわしい「展示品コレクション(Display Collections)」は226,747点。「参考資料コレクション(Reference Collections)」と呼ばれる書物、絵画、印刷物、写真および文書は2,014,971点。後者は劣化を防ぐため閲覧は館内究室内に限り許可され、展示も短期間に限ってなされています。

The 20th Century gallery © Victoria and Albert Museum

膨大なコレクションを背景とする活動で目ざしているのは、「来館する全ての人々の創造性を刺激すること」とV&Aのサラ・アルモンド氏。「これこそが私たちが行うあらゆる活動を統合する最も重要なテーマです。また、他のミュージアムでも最大の課題となっているのは、幅広い来館者の関心をひきつけ、人々が展示内容を理解できるためにどう手助けをするか、ではないでしょうか。ミュージアムを後にする際、来館者は自身が力づけられたと感じるとともに、暮らしのなかでデザインが果たす役割を理解できていなければなりません」

「ミュージアムは自分自身や世界に対して異なる見方を与えるきっかけとなります。優れたミュージアムであれば、人々に『問う力』を、授けることでしょう」とアルモンド氏。

ヴィトラ・デザイン・ミュージアム

企業が母体となってアーカイブを行い、意欲的な企画も実現している好例として、ドイツのヴィトラ・デザイン・ミュージアムを挙げておきます。1989年、フランク・ゲーリーの建築設計で誕生。2014年には開館25周年を記念するコレクションの大規模展覧会も予定されています。現在のコレクション数は家具、プロダクト、照明器具などの約7,000点。デザインミュージアムの役割をどうとらえているのかについて、同館のマテオ・クライス氏にうかがいました。

© Vitra Design Museum, photo: Julien Lanoo

「私たちのミュージアムでは、デザインを今日のありのままの姿として認識しています。すなわち、アートと自然科学とテクノロジーの間を橋渡しするインターフェイスという立場でさまざまな問いかけを発する学際的な領域であると考えています。デザインの定義は根本的に変化してきており、工業デザインに限らず、芸術的な営みや職人の仕事などの広い分野も含むようになってきています。我々の役割は、デザインの多彩な様相を探求して幅広い人々に伝えるリサーチャーで橋渡し役、まとめ役、研究者、提唱者であると考えています」

私立で運営されている施設ならではの課題もあります。重要なのは財政の安定を維持すること。「公平性を損なうことなく、あらゆる活動において最高の基準を確実に満たしながら、パートナーや共同プロデューサーなどを通して望ましい資金調達も探っています」

「デザインミュージアムにはデザイン活動を文化領域のひとつとして確立するという役割があります。私たちの最大の関心事は、デザインミュージアムという仕事を実践しながら、その新しい領域の足跡を残す最前線に立つことなのです。つまりリスクを負ってでも新たな道を開拓し、 世界の優れた美術館に巡回すべき展覧会を、今後も長年に渡って生み出し続ける成功例となることです」

© Vitra Design Museum, Juergen Hans

「デザインとはグローバルな現象であり、デザインミュージアムにもグローバルな視点が必要」とクライス氏。「グローバル・ネットワークをふまえた世界規模の計画を掲げることが大切です。共同リサーチを行える体制を構築し、国際的な巡回展とノウハウを共有すれば、新たなデザインミュージアムの計画も成功することでしょう」

「と同時に、デザインミュージアムが日本に誕生すれば、柳宗理氏や倉俣史朗氏などから今日に至るデザイナーの業績や全仕事、デザインに注力する日本企業の活動をとり上げる、またとない機会が生まれます。日本のデザインミュージアムのアジェンダには、日本のデザインを保護して守る任務とともに、日本のデザインの歩みを日本はもちろん国際的な文脈の中で整理されることが大切になってくると思います」(後編へ続く)

文:川上典李子

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企画展「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」は、来場者の皆様をデザインミュージアムの"入口"へと誘う展覧会です。
ウェブサイト上の本連載では、会場を離れ、各界で活躍する方々が未来のデザインミュージアムにぜひアーカイブしたいと考える"個人的な"一品をコメントとともに紹介します。
展覧会と連載を通じて、デザインの広がりと奥行きを感じてください。

制作:YAMAGIWA

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イギリス人として、私はいつだって「Kit Kat」を楽しんでいます!「Kit Kat」は1918年にイングランド北部のヨークのロウントゥリーズで生まれました。イギリスで私が子どもだった頃からいつでも棚に置いてある絶対に不変のものなんです。私がそれを日本で発見した時の喜びを想像してください!!そしてその喜びは数ヶ月ごとに発表される新しいフレーバーとともに続いています。
私は「Kit Kat」の箱を収集していて、今ではワサビからアップルビネガーまで、約200種類が集まりました。そのうちのほとんどは日本でしか手に入らないもので、そのデザイン、パッケージ、グラフィックにはそれぞれのフレーバーの特徴が反映されています。
この新しさをめぐる冒険―めくるめく「新発売」、細部へのこだわり、そして随一の陽気な発明は、東洋と西洋の完璧な融合と言えるでしょう。

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1980年代の後半のこと、私たちは日本に初めてやってきて、住民票を手に入れるために何度も区役所に足を運んでいました。そこで私は初めてこのオフィスチェアを目にしました。区役所では働く人全員がこの「CR-1オフィスチェア(以下CR-1)」(1976年のデザイン)に座っていたのです。それ以来、この椅子の簡素な形や機能性、そして凡庸なグレーは私にとって日本の"お役所"を象徴しています。
クライン ダイサム アーキテクツを設立した時、CR-1は私たちの最初のオフィスチェアとなり、以降今日に至るまで私はこの椅子に座って仕事をしています。
小さく、軽く、簡易。私は"人間工学に基づいた座り心地の完璧なオフィスチェア"でゆったり寛いでいるボスよりも、忙しいハードワーカーであることを示したかったのです。

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2013年11月16日、「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」関連プログラム「D-8が語るデザインとミュージアム」Vol.1 「デザイン・ミュージアムの魅力と力」を開催しました。
1966年に発足以来、デザイン8団体がデザインを通じた社会貢献を目指し活動を続ける日本デザイン団体協議会(略称D-8)。今回のプログラムでは、第一回トークイベントとして、浅葉克己(アートディレクター、日本グラフィックデザイナー協会 会長)、稲垣 博(日本空間デザイン協会 副会長)、木村一男(名古屋学芸大学メディア造形学部教授・学部長)が洪 恒夫(東京大学総合研究博物館特任教授、日本空間デザイン協会 理事)をモデレーターにショートプレゼンテーションとクロスオーバートークを行いました。

まず冒頭に洪よりD-8の紹介がされました。2006年、D-8はJDM設立研究委員会を設立し、ジャパンデザインミュージアム(JDM)構想を打ち出しました。そして、D-8の活動を踏まえ、日本のデザインを示唆し、JDM像を浮かび上がらせる展覧会「DESIGN ふたつの時代 [60s vs 00s] ジャパンデザインミュージアム構想」(2010年)を開催しました。
このイントロダクションの後、三者によるショートプレゼンテーションを開始。まず浅葉は「富士山が世界遺産になり、2020年には東京オリンピックが開催される。かつては世界の影響が日本に集約されていたが、いまは日本から世界発信すべき」と述べ、日本の伝統にアイディア次第で新鮮味を与えることができると語りました。
次に稲垣が「ミュージアムができることとその魅力」について紹介。ミュージアムをつくるにあたって重要な要素を挙げました。資料を後世に残す「収集保存」、相互にリンクした「調査研究」、十分な設備による「展示公開」、研究や教育の拠点「学習交流」が重なることによって活気が生まれると述べました。
そして木村は公益財団法人 日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA)の歩みを紹介。捨てられる運命にある産業デザインのアーカイヴを保存する施設として1997年に設立されたJIDA デザインミュージアム1号館in信州新町の例を語りました。

その後のクロスオーバートークでは、「学術や研究の成果を発表するインターフェースとしてデザイン・ミュージアムがあると良い」などの考えが挙げられるとともに、五感を通じて本物に触れることのできる場として、先人の素晴らしい想いを伝え、若者がそれを継承できる場としてデザイン・ミュージアムが必要であるとトークを結びました。

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2013年11月3日、「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」オープニングトーク「Why not? デザインミュージアム」を開催しました。本展企画の森山明子、佐藤 卓、深澤直人が、川上典李子をモデレーターに自由形の対談を行いました。

そもそも「デザインミュージアム」とは何だろうという話から始まり、佐藤は「デザインは日常のあらゆるものごとに隠れているのにも関わらず、誤解をされている。デザインを意識させる仕組みとして、場が必要ではないか。デザインミュージアムはその場として機能する」と発言。深澤は「デザインはあらゆるものごとがフィールドになるので、それを投げ込める器としてデザインミュージアムが有るといい。それには今現在との関わりのある柔軟性が必要」と続きました。

また、これからのデザインミュージアム像について、森山は「核になる場所を設けて、各々のネットワークによるユニゾンをつくる」と案を挙げ、「近代デザインだけが日本のデザインだと考えると、歴史は浅くなる。デザインの文脈でこの国の歴史を振り返ると、日本には豊かな歴史が限りなくある」とデザインミュージアムが担う大きな役割を述べました。

本展にまつわる活動は一回で終わる訳でなく今後も継続して行ない、アクションを起こさない限り動きは生まれないと、まさにオープニングに相応しいエポックとなりました。

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Photo: Yusuke Nishibe

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10月25日(金)より、いよいよ「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」が開幕します。

生活のすべてに関わるデザインは、暮らしに喜びをもたらすだけでなく、産業の発展にもつながり、豊かさを生みだします。デザインミュージアムは、優れたデザイン文化を次世代に継承するためのアーカイブとなると同時に、私たちの今後の生活を考えるうえで必要とされる場所になるでしょう。

本展では21世紀のデザインミュージアムに求められる役割について、〈過去/現在/未来〉という時間への眼差しに基づく新たな視点から、当館で開催した展覧会を例に考えていきます。生活、文化、社会と深く関わってきたデザインの今後の可能性について、多くの方々と考える機会となる企画展です。

撮影:吉村昌也

2013年10月25日より開催の企画展「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」は、来場者の皆様をデザインミュージアムの"入口"へと誘う展覧会です。
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© Fujiko-Pro/photograph by Yuri Gomi, MR_DESIGN

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撮影:吉村昌也

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  1. 「私の一品」Vol.1 森山明子(デザインジャーナリスト、武蔵野美術大学教授)
  2. 「私の一品」Vol.2 石川直樹(写真家)
  3. 「私の一品」Vol.3 工藤和美(建築家)
  4. 「私の一品」Vol.4 佐野研二郎(アートディレクター)
  5. 「私の一品」Vol.5 毛利 衛(日本科学未来館 館長、宇宙飛行士)
  6. 「私の一品」Vol.6 佐藤 卓(グラフィックデザイナー)
  7. 「私の一品」Vol.7 福岡伸一(生物学者、青山学院大学教授)
  8. 「私の一品」Vol.8 青柳正規(文化庁 長官)
  9. 「私の一品」Vol.9 ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
  10. 「私の一品」Vol.10 柏木 博(デザイン評論家)
  11. 「私の一品」Vol.11 伊勢谷友介(俳優、映画監督、リバースプロジェクト代表)
  12. 「私の一品」Vol.12 山形季央(多摩美術大学 グラフィックデザイン学科教授)
  13. 「私の一品」Vol.13 葛西 薫(アートディレクター)
  14. 「私の一品」Vol.14 山崎 亮(コミュニティーデザイナー)
  15. 「私の一品」Vol.15 Astrid Klein(デザイナー)
  16. 「私の一品」Vol.16 Mark Dytham(デザイナー)
  17. 「私の一品」Vol.17 小池一子(クリエイティブディレクター)
  18. 「私の一品」Vol.18 本城直季(写真家)
  19. 「私の一品」Vol.19 岡崎智弘(アートディレクター)
  20. 「私の一品」Vol.20 伊東豊雄(建築家)
  21. 「私の一品」Vol.21 皆川 明(ミナ ペルホネン デザイナー)
  22. 「私の一品」Vol.22 平野太呂(フォトグラファー)
  23. 「私の一品」Vol.23 宮島達男(現代美術家)
  24. 「私の一品」Vol.24 佐藤陽一(株式会社 虎屋 営業企画部 企画課主任)
  25. 「私の一品」Vol.25 織田憲嗣(東海大学特任教授)
  26. 「私の一品」Vol.26 安藤忠雄(建築家)
  27. 「私の一品」Vol.27 鈴木理策(写真家)
  28. 「私の一品」Vol.28 幅 允孝(ブックディレクター)
  29. 「私の一品」Vol.29 深澤直人(プロダクトデザイナー)
  30. 「私の一品」Vol.30 関口光太郎(造形作家)
  31. 「私の一品」Vol.31 田根 剛(建築家)
  32. 「私の一品」Vol.32 森山開次(ダンサー・振付家)
  33. 「私の一品」Vol.33 渡邉良重(アートディレクター)
  34. 「私の一品」Vol.34 鈴木康広(アーティスト)
  35. 「私の一品」Vol.35 関 康子(エディター/トライプラス代表)
  36. 「私の一品」Vol.36 川上典李子(ジャーナリスト)
  37. 「私の一品」Vol.37 藤原 大(デザイン・ディレクター)
  38. 「私の一品」Vol.38 三宅一生(デザイナー)